第24話 崩壊する秩序
虹色の閃光が消えたあと、光導管には静寂が訪れた。
だが、それは平和ではなかった。
天井から火花が散り、壁面の光が不規則に点滅し、床にはひびが走っている。
アリアは胸を押さえ、膝をついた。
(光を……出しすぎた……)
衣装のレイヤーが焦げ、背中の羽が破れかけている。
ミラが駆け寄る。
「アリア! 大丈夫!?」
アリアはかすかに頷いた。
「平気……まだ、歩ける……」
だが、その声は震えていた。
◆
光導管の両側では、観客たちが混乱していた。
「逃げろ!」
「管理局が来るぞ!」
「でも、アリアが……!」
子どもたちは泣き、若者たちが必死に誘導する。
「こっちだ! 非常通路に抜けられる!」
「アリアさんは……!?」
「大丈夫、仲間が守ってる!」
恐怖と希望が入り混じった叫びが、光導管に響き渡る。
その混乱の中、管理局の武装部隊が突入してきた。
「全員、その場に跪け!」
「違法集会だ!」
「抵抗する者は拘束する!」
職員たちは催涙ガスを投げ込み、逃げ惑う市民を次々と押さえつけた。
ミラが叫ぶ。
「やめて! 彼らは何もしてない!」
職員がミラに向かって手を伸ばす。
「黙れ、反逆者!」
その瞬間――
イーサンが割って入った。
「触るな!」
イーサンは銃を構えた。
「アリアも、ミラも、レオンも……誰も傷つけさせない」
その声は震えていたが、確かな覚悟があった。
◆
レオンは端末を抱え、光導管の電力制御を必死に維持していた。
「くそ……! 中央制御システムにコントロールを奪われた……!」
端末が赤く点滅する。
《電力供給:0%》
《光導管、機能停止》
レオンは膝をついた。
「光はもう……維持できない……」
ミラが駆け寄る。
「レオン! しっかりして!」
レオンは悔しそうに唇を噛んだ。
「アリアさんの光を……もっと見せたかった……」
◆
アリアは立ち上がろうとしたが、足が震え、崩れ落ちた。
「アリア!」
ミラが抱きとめる。
アリアの腕には火傷のような痕があり、衣装の光反射繊維が破れていた。
(体中が痛い……でも、後悔はない……)
アリアは微笑んだ。
「みんなが……色を……見てくれた……」
ミラは涙をこぼした。
「アリア……!」
◆
管理局の職員が叫ぶ。
「アリア・セルフィスを確保しろ!」
「反逆者を逃がすな!」
イーサンはアリアを抱き上げた。
「アリア、行くぞ!」
アリアは弱々しく言った。
「イーサンさん……みんなは……?」
イーサンは振り返り、レオンとミラを見た。
「レオン、ミラ! 先に行け! ここは俺が引き受ける!」
レオンが叫ぶ。
「イーサンさん……!」
ミラも涙声で言う。
「必ず、生き延びて……!」
イーサンは短く頷いた。
そのとき、光導管の天井が大きく揺れた。
――ゴォォォォォン!
停電が起き、光導管全体が暗闇に包まれる。
非常灯が赤く点滅し、警報が鳴り響く。
《警告:光導管システムに重大な損傷》
《居住リングの一部で停電発生》
《市民は安全区域へ避難してください》
ステーション全体が、崩壊の危機に陥っていた。
イーサンはアリアを抱え、非常通路へ走り出した。
アリアはイーサンの腕の中で、かすかに目を開けた。
「光は……消えないよ……イーサンさん……」
イーサンは強く頷いた。
「ああ、消させないさ。絶対に」
アリアは微笑んだ。
「ありがとう……」
その瞬間、アリアの胸元の赤い布が、暗闇の中でかすかに光った。
革命は、もう後戻りできない。
秩序は崩れ、世界は色を知ってしまったのだ。




