第20話 準備完了
隠れ家の薄暗い部屋に、静かな緊張が満ちていた。
アリアは机の上に広げた新しい衣装を見つめていた。
光反射繊維の新型。
二重構造の半透明レイヤー。
そして、胸元には――
いつもの赤い布。
(これが、次の光)
アリアはそっと布に触れた。
その指先は震えていたが、迷いはなかった。
◆
隣の部屋では、レオンが端末を前にして額に汗を浮かべていた。
「……よし。光導管の電力制御、侵入成功」
ミラが覗き込む。
「本当に大丈夫なの? 中央エネルギーリングなんて、監視が一番厳しい場所だよ」
レオンは苦笑した。
「大丈夫じゃないです。でも、やるしかない」
彼の声は震えていたが、その目は強かった。
「アリアさんの光を、ステーション全体に届けるために」
◆
ミラは資料室から持ち出したデータを並べていた。
「地球の空、海、街の光……全部、ショーに使うよ」
アリアがそっとつぶやく。
「ミラ。あなたを巻き込んでしまって、ごめんね」
ミラは少しだけ笑った。
「何言ってるの、アリア。あなたの光を見たとき、“ああ、私はこれを守るために生まれてきたんだ”って思ったんだからね」
◆
隠れ家の入口には、色を求める若者たちが集まっていた。
「アリアさん。俺たち、手伝います」
「監視の目をそらす役、任せてください」
「色をもっと見たいんです」
アリアは彼らを見つめた。
「ありがとう。みんなの力が必要だよ」
若者たちの瞳が輝いた。
◆
その頃、管理局の監視室。
イーサンは端末を見つめていた。
アリアの捜索ログ。
光導管の監視強化命令。
拘束の準備。
(アリアに伝えないと)
イーサンは立ち上がった。
「どこへ行く、イーサン・グレイ」
上司の声が背後から響く。
イーサンは振り返らずに言った。
「……持ち場の確認です」
「そうか。アリア・セルフィスは必ず捕らえろ。逃がすな」
イーサンは拳を握りしめた。
(俺は、もう戻れない)
彼は静かに監視室を出た。
◆
夜。
隠れ家の中央に、アリアが立っていた。
ミラ、レオン、若者たち。
全員の視線が、アリアに向けられる。
アリアは深く息を吸い、胸元の赤い布を握りしめた。
「……行こう」
その声は震えていたが、確かな強さを持っていた。
「次の光で……世界を変える」
ミラが頷く。
レオンが拳を握る。
若者たちが息を呑む。
アリアは新しい衣装を纏い、ゆっくりと歩き出した。
向かう先は――中央エネルギーリング。
第二回ショーの舞台。
革命の第二の光が、今、始まろうとしていた。




