↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
17/32

第17話 管理局の弾圧

 ステーション全体に、冷たい電子音が響き渡った。


 ――ピン、ポン、パン、ポン。


「こちら管理局。

 昨夜、居住リング外縁部にて、違法な光の発生が確認されました。

 市民の皆様は、色彩に関する噂に惑わされないようご注意ください。

 色彩は精神を乱し、社会秩序を損なう危険があります」


 アリアは資料室の端で、その放送を聞きながら息を呑んだ。


(……来た)


 ミラが顔をしかめる。


「最悪……本気で弾圧に動き始めた」


 アリアは胸元の赤い布を握りしめた。


 ◆


 その日の午後。

 資料室の前の廊下で、子どもたちの泣き声が響いた。


「返してよ! ぼくの絵!」

「色を描いただけなのに!」

「なんでダメなの!」


 教師が震える声で言う。


「言うことを聞きなさい! 管理局に連れていかれますよ」


 アリアは胸が締めつけられた。


(色を描いただけで泣かされるなんて)


 ミラが小さく呟く。


「アリア。あなたの光が、子どもたちの心を動かした。だから管理局は恐れてる」


 アリアは唇を噛んだ。


(私のせいで……)


 胸の奥で、何かが強く脈打つ。


 ◆


 レオンの部署にも、冷たい影が落ちていた。


「レオン・ヴァルク技術員。光反射繊維の使用履歴に不審な点があります。説明を求めます」


 監査官が無機質な声で言う。


 レオンは平静を装いながら答えた。


「通常の素材テストです」

「ならば、テストログを提出してください」


 レオンの背中に冷たい汗が流れる。


「い、今すぐには無理です」


 監査官は目を細めた。

 しかし、強制する権限はないようだった。


「近日中に再調査を行います。協力を拒めば、処分の対象となります」


 監査官が部屋を出ていくと、レオンは深く息を吐いた。


「……まずい」


 ◆


 ミラの資料室にも、監視の目が入った。


「ミラ・ハート補佐。地球文化データへのアクセスが制限されます。以後、許可なく閲覧した場合は処罰の対象です」


 ミラは怒りを抑えながら言った。


「どうして……? 地球文化は危険じゃない!」


 監査官は冷たく答える。


「色彩に関する情報は、精神汚染の可能性があります」


 ミラは拳を握りしめた。


(精神汚染……? 色が……? そんなわけない)


 アリアがそっとミラの肩に手を置いた。


「ミラ……大丈夫?」


 ミラは震える声で言った。


「アリア。あなたの光を守るために、私は絶対に折れない」


 ◆


 その日の夕方。

 ステーションのあちこちで、市民たちが小声で話していた。


「色を見たって本当?」

「管理局は何か隠してるんじゃないか?」

「でも、危険なんでしょ?」

「いや、見た人は皆"綺麗だった"って言ってる」


 恐れと希望が入り混じった声。

 そのどれもが、アリアの胸に刺さった。


(色は危険じゃない。でも、管理局はレッテルを貼ろうとしてる)


 ◆


 夜。

 アリアは自宅の小さな部屋で、膝を抱えて座っていた。


(私のせいで、子どもたちが泣いて……レオンさんが疑われて……ミラが監視されて……)


 胸が痛い。


 だが――

 その痛みの奥に、別の感情があった。


(でも、色を見た人たちは、皆笑ってた)


 アリアはゆっくりと立ち上がった。

 胸元の赤い布が、静かに揺れる。


「私は、止まらない。色は誰かを傷つけるためのものじゃない。心を自由にするためのものだから」


 その言葉は、震えていたが――

 確かな強さを持っていた。


 管理局の弾圧が始まった。

 だが、アリアの光は消えない。

 むしろ、影が濃くなるほど――光は強くなる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。