世界救済のハジマリ
「前から思っていたんですが」
「ん?」
「何かしら?」
もはや恒例行事となった、我が家における昼食風景。
家主である俺、その弟子であるミア。そこに加えて社畜剣士のリッカに、その弟子であるネコミミ少女のカレン。この四人が集まってこの家で食事をするのがいつの間にか常態化している。
リッカの腕が確かなので大抵どんなメニューでもうまく仕上がってしまうのだが、最近は手伝いのミアのほうも実力を向上させており、二人が厨房から運んでくる料理は初期と比べてかなりレベルが上がっている。今日の献立であるラタトゥイユ、オニオンスープ、トマトベースのロールキャベツはどれも上等な味で、もうお前ら店でも開けよと言いたくなったのも妥当な感想だと思う。
で、そんなハイカラな食事を終えたあとはいつものようにカレンが子猫の姿に戻って昼寝を始め、ぐーすか寝こけるその子猫を膝に載せて撫でながらミアが唐突に発したのは、こんな問いだった。
「お二人はとても仲がいいですよね?」
ミアがこっちを見ながら言ってくる。
「……は?」
「ミアちゃん、それはもしかして私たちのことを言っているのかしら?」
「はい」
俺とリッカは思わず顔を見合わせたのち、ほぼ同時に唇の端だけを釣り上げた。
「ミア、お前も目が曇ったな。メガネ買ってやろうか? 誰がこんな脳内辞書に『正面突破』しか載ってない脳筋バカと仲良しだってんだよ」
「遺憾ながらシグレに同意せざるを得ないわね。こんな日がな一日ねぐらにこもって悪趣味な研究に没頭してる引きこもりと仲がいいなんて心外だわ」
隣に座るリッカと笑い合う。はっはっは。まったくーー
「誰が悪趣味だぶっ飛ばすぞ」
「こっちの台詞よ」
真顔に戻って睨み合う。この女、人が大人しくしていれば調子に乗りやがって……!
「やっぱり大の仲良しじゃないですかー」
「「誰がこんなやつと……!」」
なぜかミアは楽しそうに笑っている。きっとこいつの頭の中には年じゅう春が来ているんだろう。
延々と火花を散らしている俺とリッカを見かねたのか、ミアが話を進める。
「それでですね、前から気になっていたんです。お二人がどうやって出会って、一緒に旅をするようになったのか。よければ教えていただけませんか?」
「……」
「……」
「あ、あれ? どうして急にお二人とも黙り込むんですか?」
俺は引きつった顔で隣のリッカを指さした。
「……ははは、ミア。やめとけよ。リッカがかわいそうだからさ」
「何を言っているのかしら、それを言うならあんたでしょ、シグレ」
「いやいや、絶対お前だって。この話は絶対お前の方が恥ずかしいって」
「私には聞かれて恥ずかしいことなんてないわよ。あんたに比べれば」
ちなみにリッカは平然としているように見えて微妙にティーカップを持つ手が振動している。
「……いいよ、そこまで言うなら話してやるよ! 後悔しても知らねーぞリッカ!」
「その言葉、そのまま返すわよ。いいからさっさと話しなさい。あ、私はちょっと隣の街まで買い出しに行ってくるから」
「逃がすわけねーだろ、てめーも道連れだ!」
「あの……本当に一体何が……?」
俺たちのやり取りを見て、ミアが呆気に取られたように言っている。
「……まあ気にすんな。すぐわかる」
「は、はい」
俺はミアのほうに向きなおり、視線を遠く……はるか四年前の光景に照準した。
薄れかけていた記憶を掘り起こしながら、ゆっくりと話し出す。
「最初に俺がリッカに会ったのは、王国東にあるそこそこ大きな街の中でーー」
短くてすみません。プロローグみたいなあれです。
次回更新は未定!




