幕間
私を見てよ。
「ねえ、お母さん。今度の授業参観のことなんだけど―—」
「ああ、ごめんなさいね。私、その日は仕事があるのよ」
私を見てよ。
「でも、他の人はみんな来てくれるって言ってるよ?」
「そう。じゃあ、次は必ず行くわね」
見てってば。
「お母さん、前もそうやって言ってたよ。どうして来てくれないの?」
「だから、仕事が……」
――見て。
「一回だけ。今回だけでいいの。音楽の授業で、私合唱の指揮者やるんだよ。だから、」
「うるっさいわね! その日は行けないって言ってるでしょ!」
ああ、また駄目だった。
また、見てもらえなかった。
--じゃあ、次だ。
「ねえ、お父さん。私の誕生日、一緒に家でケーキ食べよう?」
「ごめんな、今は会社が忙しい時期なんだ。また今度な」
私と話して。
「プレゼントはいらない。一緒にいてくれるだけでいいの」
「今回は無理なんだ。ああ、そろそろ会社に行かないと」
話してよ。
「会社なんて、いつも行ってるじゃん。私と会社のどっちが―—」
「じゃあな、行ってくる」
また、失敗。
どうしたらいいかな。
髪型を変えてみようか。そうしたら話しかけてくれるかな。
自分のことを「私」じゃなく、「ぼく」って言うようにしてみようか。そうしたら構ってもらえるかな。
駄目だ。それだけじゃ、今までと変わらない。
もっと、探さないと。
お母さんと、お父さんの、興味をもっと引けること。
探そう。書斎を。寝室を。財布の中を。靴の底を。携帯電話の中を。カバンのポケットの中を探そう。どんなところも、くまなく。全部。全部。全部。全部。全部。全部。全部。全部。全部。全部。全部。全部。全部。全部。全部。全部。全部。全部。全部。全部。全部。全部。全部。全部。全部。全部。全部。全部。全部。全部。全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部――
「ねえ、お母さん」
この前、お仕事に行くって言ってたよね?
そう言って出ていったよね?
ぼくは、にっこりと笑って。
「この写真に写ってる、男の人、だあれ?」
「――ッ!」
ああ、初めて。
ぼくのこと、見てくれた。
「このっ……ありえない! 尾けてたの!?」
怒鳴られた。蹴られた。殴られた。
「これ、旦那に言ったら、殺すから」
冷たい目で、そう言われた。
お小遣いで買ったインスタントカメラで撮った写真は持っていかれてしまった。
ぼくは、お母さんが出ていった部屋でくすくすと笑った。
怒鳴られたけど、蹴られたけど、殴られたけど、殺すって言われたけど。
「……あは。やっと、ぼくのことを見てくれたね」
ちゃ、ちゃんと書きますよ! ちょっと論文がアレなだけです。大丈夫、僕はまだやれるはず。
次回更新は近日中に!




