↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
38/88

そして黒幕は

 べちゃり、とヘドロじみた水音を立てて魔王が地面に落ちた。


 しばらく蠢いていたが、魔力のない環境では再生することはではない。理性のない獅子頭の怪物は、一秒と経たずに溶けて地面の染みになった。


「……う」


 ふらり、とよろめいたリッカを慌てて支える。俺もそのまま倒れかけたが、何とか踏ん張る。


 俺は魔王の死骸があった場所を横目に、リッカに話しかける。


「お疲れ」


「……ええ、疲れたわ」


「……武器の身体強化抜きでも剣振れるようになったんだな、お前」


「あんた、とは……鍛え方が違うのよ……」


 ここで憎まれ口が利けるのはたいしたもんだと思う。


 最後、魔力がなくなったこの場所ではリッカの剣の身体強化能力は発動しなかったはずだ。


 つまり魔王に止めをさしたのは正真正銘リッカの体でふるったリッカの剣。完全勝利と言っても差支えないだろう。


 さて、これで一番大きな障害であった魔王は死んだ。今度こそ確実に死んだ。


 次の問題にとりかかろう。


「なんだい、シグレ。そんなにじっとぼくのことを見て」


 こんな間の抜けたことを言い出す紫髪のバカの処遇だ。


「アホ言ってんな。覚悟しろよ、俺はお前を一発ぶん殴るって決めてんだ」


 意識があるかも怪しいリッカをそのへんの瓦礫に立てかけながら俺は言った。


「魔力がないからカーバンクルの転移も使えない。逃げられると思うなよ」


「うーん……確かに、これはちょっと困ったねえ。走って逃げるのはしんどいし、効果範囲から出るのも半径二十メートルじゃあ難しい」


 ヒガンは言いつつ、まったく動こうとしない。表情にも焦りはない。


 ……嫌な予感がしてきた。


「ところで、シグレ。ぼくがいるのって風上だよね」


「そうだな、それがどうした?」


 まずい、嫌な予感は増す一方だ。


 こいつがこういう顔をしてるときって、大概――


「ここで問題。これ、なーんだ?」


 そう言ってヒガンが懐から取り出したのは、ピンポン玉のような形状をしている何か。


 おい、あれ見たことあるそ。あの毒々しい色合いには見覚えがある。


 あれは確か――アリシアが使ってた毒煙玉! あいつも持ってんのかよ!


「楽しかったよ、シグレ。じゃあね」


 ヒガンは振りかぶり、その煙玉を地面に叩きつける。


「カレン! ミアとアリシアとふーさん連れてこっち来い! 早く!」


「へっ? わ、わかった!」


 煙が噴き出す直前に俺は叫んでいた。

 俺はある程度離れているから大丈夫。リッカも問題ない。


 マズいのはヒガンのそばにいたミア、カレン、アリシア、ふーさんだ。特にカレンはあの劇毒を吸い込んだら刺激臭だけでショック死しかねないような気すらした。


 カレンの反応は迅速で、俺が叫んで数秒でこっちに脱出してきた。直後にヒガンの足元から煙が爆発的に広がる。


「わわっ」


「っと……」


『キュー』


 全員無事に脱出してきたな。


 だが、ヒガンは迷わずカレンと逆方向、つまり俺たちに背を向けて逃走を開始していた。


「くっそ、あの女はあああ!」


 俺は半ばやけになりながら【世界置換】を解除、大気中から吸い込んだ魔力を注ぎこんで、俺にしては極めて低威力な【風】魔法を放つ。


 毒煙を晴らすためだが、ここで俺は自分のミスに気付いた。


「……やっべ。魔力戻したらあいつ転移で逃げちまうじゃねーか」


 何してんだろうな、俺。焦ってあのバカ女を捕まえ損ねてしまった。


 いや、心理戦に長けたあいつのことだ。俺が焦って【世界置換】を解除することも読んでたのかもしれない。つくづく敵に回すと厄介なやつだ。


 やはりというかなんというか、煙の晴れた先にヒガンはすでにいなかった。あーあ。


 俺はやりきれない思いでため息を吐き――


「お師様ぁああっ!」


「ぐぉ!?」


 突如として腹に訪れた衝撃に耐えきれず、仰向けにひっくり返った。


 見れば、俺の腹に飛びついてきたらしいミアがしがみついたまま倒れた俺に乗っかっている。

何してんだ、とは聞けなかった。


「お師様、生きてた、生きでだあぁあぁぁぁ……っ」


 どう見ても泣いている。それもぎゃん泣きだ。

 

 ……しかし、見た目小学生の子供にこうも号泣されると何も悪くないはずなのに罪悪感が刺激されるもんだな。


 俺はぽんとミアの頭に手を置き、わしゃわしゃと撫でて。


「お師様ぁぁあああ……!」


「重てーよ、バカ弟子」


 いつも通りの悪態を吐いたのだった。


渾身の伏線回収。


最後の最後まで足を主人公たちの足を引っ張るアリシアさん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。