魔法都市リターンズ①
※2017.2.1
すみません修正しました! 展開上の不都合はないと思われますのでどうぞご容赦を……!
「悪かったわね、うちの弟子が迷惑をかけて」
謎の弟子トレード状況が改善されて数日後。
元パーティーメンバーのリッカは我が家を訪れるなりそんなことを言ってきた。
今回はカレンは連れておらず一人だけだ。本人もあまり時間はないようで、うちに上がろうとはせず玄関先での立ち話。
俺はリッカの言葉を聞いてから、隣でリッカが来て嬉しいらしく表情を緩くしているバカ弟子の頭に手をぽんと置いた。
「それはお互い様だろ。うちのバカ弟子もそっち行ってたみたいだし」
「あのときはありがとうございました」
ミアが合わせてぺこりと頭を下げる。リッカは苦笑しつつ、
「あら、そんなこと気にしなくてもいいのに。私もミアちゃんと一緒に過ごせて楽しかったわよ? 一緒に料理したり、お話したり」
「ふーん」
「そういえば、お師様とカレンちゃんは二人で何をしていたんですか?」
ミアがそんなことを聞いてきた。
あの時何をしていたか。
何をしていたか、と言われると――
「――カレンのコスプレ撮影とか」
「あとで私にも見せなさい」
凄い食いつきだ。断ることなど許さないと目が告げている気がする。
「こすぷれ?」
ちなみにミアは言葉の意味がわからないらしく首を傾げていた。
「あとでな。で、リッカ。お前はわざわざそんなことを言いに来たのか?」
俺が聞くと、それまでカレンのコスプレという単語に目の色を変えていたリッカが何かを思い出したように、
「ああ、そうだったわ。じゃあ、本題に入るわね」
腕を組み、リッカはにこりと笑って――
「最近シャレアで私の精密な立体映像を作り出す魔法陣が有名になっているらしいんだけど、何か心当たりはあるかしら?」
「そうか。それは奇特なことをするもんだな。ゴリラの映像を作り出すなんて」
ゴガッ
「最近シャレアで私の精密な立体映像を作り出す魔法陣が有名になっているらしいんだけど、何か心当たりはあるかしら?」
「痛ってえな! わかったよ! あるよ畜生!」
殴られた脳天を抑えながら俺は喚いた。
思い出されるのは半月ほど前。
火熊を倒したその帰り、立ち寄ったシャレアでアリシアを初めて見かけたときのことだ。
露天商のオッサンに道を聞こうとしていたあの家出王女を連れ出す際、俺は迷子のミアの話を聞かせてくれた礼に『着せ替えリッカ人形』の魔法陣を露天商のオッサンにくれてやっている。
どうやらリッカはその存在を早くも察知しているようだ。
俺たちの間でミアがおろおろする中、リッカは笑みを引っ込めてじろりと俺を見る。
「回収してきなさい」
そしてそんな無体なことを言い出した。
俺は慌てて手を体の前で振る。
「ちょ、待て待て。一度あげてもんを今更回収するのはさすがに面倒くさ」
「断るなら今すぐ家中のマンドラゴラをぶった切るわ」
「行ってきます」
こんなやり取り、前にもあった気がする。
×××
というわけで俺とミアは今、魔法都市シャレアにいる。
すでに着せ替えリッカ人形の魔法陣は回収済みだ。
ついさっき例の露天商のところまで出向いたのだが、あの露天商のオッサンは着せ替えリッカ人形を店先に展示して客寄せをしていたらしい。それで有名になって、はるか西の王都に住むリッカの耳にも入ったと。
……まだ流通してなかったからよかったものの、これが何百枚も量産されて商品化してたら回収は困難だっただろう。危なかった。主に俺のマンドラゴラが。
とりあえず店先に置いてあった着せ替えリッカ人形は回収し、代わりにカードゲームの試作品を渡してきた。遊び方はきちんと説明したうえで紙に書いて渡したから大丈夫だろう。
「ところでお師様、さっき店主さんに渡していた魔法陣の束は何だったんですか?」
と、これはカードゲーム制作のくだりをほぼ知らないミアの台詞。
「俺の故郷の玩具みたいなもんだ」
「故郷……」
俺が適当に返すと、ミアが反芻するように呟く。それからふと思い出したように言ってきた。
「そういえば、お師様はこの世界の人じゃないんでしたっけ」
「まあな」
そういう設定。
この世界の適当な地名を挙げてもよかったのだが、魔王討伐の旅路で色々やっているうちに俺たちの名前が売れ、気が付けば俺たちはこの世界の人たちに『異世界からやってきた勇者』として認識されていた。
なんかそんな感じの予言が大昔にあったらしい。魔王討伐のために異世界から勇者がやってくる、みたいなの。俺たちも下手に身元を擬装する手間が省けたので開き直ってそういうことにしている。
「……その、お師様は元の世界に帰りたいと思ったことはないんですか?」
「その質問はそのまま返すぞ。お前家族とかのところに帰りたくねーの?」
「わっ、私にはその、一身上の理由があるので!」
おお、目が泳いでる泳いでる。
俺は歩きながら肩をすくめた。
「心配しなくてもいきなり帰ったりしねーよ。俺も、多分リッカもな」
「本当ですか? 嘘じゃないですか……?」
「ああ」
「それならよかったです。私も、お師様とずっと一緒にいたいですから」
「俺はそうでもねーけどな」
「ええっ!?」
適当に返事をすると、ミアが愕然としたように俺のほうを振り返った。真に受けんなっつーの。
そんなやり取りをしながらシャレアをぶらついていると、いつの間にか俺たちは中央広場やってきていた。
さすがに魔法市がやっていた頃と比べるとまだマシだが、それでも人は多い。
ーーそういや、あの家出王女は元気でやってんのかな。
俺はふとそんなことを思い、視線を何の気なしに横に投げて。
「……あ」
「む?」
見覚えのある緑髪の少女が、魔法薬の露店を覗き込んでいる姿を発見した。
すいません筆が止まってました。
頑張ります。っていうか毎日書ける人すごい。すごい。




