↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
19/88

最近、弟子の様子がちょっとおかしいんだが①

×××


 最近、弟子の様子が少しおかしい。



 どこがおかしいかと言われても説明しづらいが、とにかくどこかおかしい。



 そう、あれは数日前のことだ。



ミア「ただいま帰りました」


俺「おう。……なあ、なんでそんなに泥だらけなのお前」


ミア「はい。森の中を歩いていたら転んでしまったのです」



 ミアは日に一度は転倒しないと死ぬんじゃないかと思うくらい転ぶので、俺は違和感を覚えつつも特に追及はしなかった。



 次に、昨日俺とミアとの間にあった会話。



ミア「ただいま帰りました」


俺「おう。……なあ、なんでそんな血まみれなのお前」


ミア「はい。森の中を歩いていたら転んでしまったのです」



 確かにミアは『ドジ』の二文字を三次元に持って来たような性質の持ち主だ。森の中を歩いていて転んでしまう、というのは想像できる。

 


 しかし転んだだけで頭から血を噴出させるような転び方って何なんだろうか。



 この時も俺は、まあそんなこともあるかと特に何も言わなかった。



 そして今日。



「おいミア、どこに行くつもりだ?」



 俺が後ろから声をかけると、台所にいたミアがぎくっと硬直した。



 それからぎこちない動きで振り返ってくる。



「あ、お、お師様。今から街まで買い出しに行ってこようかと……」



 確かにうちは菜園こそ充実しているが、それだけで生きていけるかといえばそんなことはない。



 日用品を購入するためには森を出て、最寄りの街まで行く必要がある。買い出しに行くというミアの言葉はそれだけなら特におかしいところはない。



「そうかそうか買い出しか。それじゃあ、そのバカでかい荷物は何だ?」



 問題はミアが大事そうに抱えている背嚢(リュック)だ。



 何が入っているのかわからんが、かなり中身を詰め込んでいるらしい。



「こ、これはその、あのですね」



 ちなみにミアは嘘がかなり下手だ。隠し事があるときなんかは目が泳ぐ、右上を向く、言葉に詰まるといった反応をフルコンプで繰り出してくる。



 上記のやり取りはすべてこのクセが出ていたし、現在も目が水泳選手のようになっていた。



 俺は確信を込めて言う。



「……なあミア。お前やっぱり何か隠し――」



「そ、そういえば今日は時間限定で調味料の安売りをしているんでした! それではお師様、行ってきまあうっ!」



「まだ話の途中だぞバカ弟子」


 

 言うが早いかミアは俺の横をすり抜けて逃げ出そうとしたので首根っこを捕まえて固定。そのはずみに、ミアが背負っていた背嚢の中身がぶちまけられた。



・キャベツ

・ニンジン

・トマト



 ……え、何コレ。何で野菜?



 予想外のラインナップに疑問符を浮かべる俺の前で、ミアがあわあわと慌てている。



「で、結局何なんだこれ?」



 俺が聞くと、ミアは諦めたようにがくりと項垂れ、



「『ふーさん』のご飯です……」



 そう白状した。


×××


「お師様、連れてくるので『ふーさん』と会ってもらえませんか?」



「あん? まあ会うくらいはいいけどよ」



 そんなやり取りをしたのちミアが家を出て森に向かっていったので、俺は庭に一人で突っ立ったままぼんやりと考える。



 俺たちが住んでいるのは森の中だ。当然野生動物も多く生息している。



 そんな状況だから、この手のイベントが起こるのは予想の範囲内ではあった。



 ドラマなんかでよくあるやつだ。傷ついた野生動物と遭遇して、甲斐甲斐しく世話をしているうちに情がうつったから持って帰ってきて『この子、うちで飼っていい?』って娘が父親にお願いするシーン。あれだよあれ。



 『ふーちゃん』なる生物が何かは知らんが、おそらく今回ミアが持って来たのもそういう感じのことだろう。



 ま、エサと称して野菜を持ちだそうとしていたあたり何らかの草食動物と考えるのが妥当か。



 やや量が多めだったことから中型~大型くらいのものかな。



 この森の生態系から考えて、おそらくはイノシシとかシカあたりだと―



「お師様、お待たせしました」



 そこまで考えたところでミアが戻ってきたらしい。さて、一体こいつは何を連れてきたのかな。



 俺はそっちに目をやり、ミアの隣にいる生物を目視した。



 つぶらな瞳。



 シャープなシルエットの翼。



 全身を覆う鱗。



 ミアはその生物に気安く手を触れたまま、



「風竜の『ふーちゃん』です!」



「スケールでっけえな、おい!」



 俺は体高二メートルを悠に超える緑色の飛竜を見上げたまま突っ込んだ。



 さすがは異世界。ありふれた捨て犬系イベントもここでは規模が違うようだ。


一日十五回更新チャレンジ達成率 → (11/15)


次回更新は一時間後です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。