???の場合(3)
さて、アルトを助けようと色々と動き出したが、やはりここはアルトの方を見る事にしよう。
あっちはあっちで、エルフとの厄介事や盗賊、ドラゴンなんか出て来て厄介そうだが、誠がいるのだ。
なんだかんだで上手く薬草を取ってくるだろう。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「お母さん、本当にこれで良いの?まだ、アル君苦しそうだけど」
「それはそうよ。この魔法陣は病気を抑える物じゃないんだから。苦痛を誤魔化す為に寝かせる魔法と傷を治す為に継続的に回復魔法を掛ける為の魔法陣よ。確かに、思う所はあるけど、今はこれしかできないのよ」
マリルと母親のスミアがアルトのベッドの周りに魔法陣を描いて魔力を流している。
すると、アルトは眠り始めたが、息苦しそうにしているのは変わらなかった。
この魔法陣を描くまでは、スミアがアルトを眠らす魔法。リースとマリルが交互に回復魔法を掛けていたが、二人の回復魔法であっても傷を抑え続けることが出来なくなったのだ。
それに、傷が出来るのが体の中なのだ。傷のある場所が特定出来ないため、身体全体に回復魔法を掛け続ける必要があり、英雄の娘で魔力量が大量にあったとしても、魔力の回復が間に合わなかった。
魔法陣は、発動までの時間はかかるが、魔法を継続的に使用するには優れていているので、スミアはすぐにそちらに切り替えるようにしたのだ。
「魔法を使い続けるのがこんなに難しいなんて・・・」
「貴女達は魔力量が多いから、殆ど力技みたいな感じで使っていたからね。お父さんみたいに」
その二人の傍には、スミアとマリルが魔法陣を描く間、アルトに二つの魔法を同時に使っていたリースが倒れるように横になっていた。
いや、実際倒れたのだけど。
そのリースを苦笑しながら撫でている母親のアマルがいた。
今までも、魔法制御の訓練はしていたけど、ここまで繊細で継続的に魔法制御をしたことがなかった。
大抵は、アマルが言っていたように、恵まれた魔力で十分だったのだ。
英雄である父親と同じだと言われて、嬉しいような、今それが通用しない事で悔しいやら、複雑な顔でリースはアマルの手に身を委ねていた。
「私も、お母さんみたいに色々な魔法の知識を学ばないとね」
「魔法陣はもう良いの?」
「今は、微調整をしつつお母さんが受け持つから、少し休んでなさいって」
「そう・・・・やっぱり私達はまだまだなんだね」
「そうね・・お父さん達の活躍が目立って話にも出てこないけど、そのお父さん達を後ろで支えてきた人達なんだよね。私達のお母さん達は・・・」
マリルが疲れた様にリースの傍に腰掛けて溜息をつく。
母親と二人で魔法陣を描いて、描くことで自分の実力がその域まで達していない事に気付くことができたのだ。
確かに、リースやマリル達は同世代、いや、それ以上よりも実力がある。それでも、やはりまだ子供だったのだ。
父親が凄い人で、母親も凄い人だとは思ってはいたけど、母親たちがその力を使う事は殆どなかった。
だからこそ、その実力をみて自分達はまだまだだと実感したのだ。
「じゃぁ、その二人にとっておきを教えてあげる」
少し落ち込んでいる二人の子供にアマルが声を掛けながら、立ち上がりアルトのベッドに近づいて行く。
「ほら、貴女達も行くわよ」
そして、まだ座り込んでいる二人を手招きする。
「お母様?」
リースが首を傾げながら、立ち上がろうとするも手足が震えて上手く立てない。
それをマリルが助けて、肩を貸しながらアマルに近づく。
「いつかリースには言ったわよね、覚えてる?アルト君の強さじゃなくて、弱さにも気付いて欲しいって」
アマルは二人が近づいた事を確認してから、苦しそうな表情をしているアルトの頭を優しく撫でる。
ゆっくり、丁寧に、優しく
力は必要ない。
大切な宝物を撫でるように、愛でるように
ましてや、魔力なんかも必要ない。
ただ必要なのは、その優しさと温もりだけ。
「あ」
だけど、それだけでアルトの表情が少し和らいだ。
その事に、リース達は驚く。
自分達が必死に回復魔法を掛けている時も、
マリルが悔しがる程、自分達より実力があると認めたばかりのスミアが魔法を掛けている時ですら、表情が和らぐことはなかったのだ。
「アルト君は確かに強い子なのかもしれないわね。血を吐くまでの痛みを我慢しながら、あの人の修行にも付き合って、その事に私達に気付かせなかった。でも、ふふふ。寝ている時は素直よね」
アルトは撫でている手が気持ち良いのか、アマルの手をギュっと握ってしまう。
その姿に、アマルは頬を綻ばせる。
その姿は、聖女のように優しさに満ち溢れていたけど、それよりももっと身近な、安心して落ち着ける。そんな感じがした。
「人は我慢しても、我慢しても、でもやっぱり我慢するには限界があるの。その吐き場所がない、作れないのは多分、アルト君が弱いからよ。自分の弱みを見せられない。見せたらいけない所にずっといたのだから仕方がないのかもしれないけどね。でもやっぱり、まだ子供で、子供だから無意識に行動してしまう。こんなの風にね。だから私は、寝ている時のこの無防備な無意識なこの仕草を無視できなかった。今まで、誰も守ってくれる人がいないかったのなら、私が守ってあげるってね。私は、他の人よりも魔力も無くて戦う事も出来ないけど、それでもせめて、自分の手が届く範囲にいる人はね」
「・・・凄いでしょ?これがこの人の凄さよ。魔力も無くて戦う術もなくて、多くの人を救う事も出来ないけど、ただ一人の英雄を支え続けた、支え続ける事ができたのよ?この凄さが分かるかしら?彼だけじゃない、私達も救われたことだってあるのよ?」
「こほんっ、スミアさんに言われると少し照れるわね。だから・・えぇ~と、何が言いたいかと言うと、特別な力が無くても、良いってことよ。確かに、力があれば良いのだけど、その事に拘って今大切な事を見落とさないようにしないといけないのよ」
確かに、今アルトを落ち着かせることが出来たのは、リースやマリルの魔法ではなく、スミアの魔法でもなく、アマルが撫でただけ。人との触れ合い、温もりだったのだ。
「考える事、決意する事はとても大切よ?でも、今何が必要なのかちゃんと考えるのね。落ち込むより、後悔するより、今することがあるんじゃない?」
アマルはそう言って、アルトの手を優しく解き、リースの手に握らせた。
「あ」
手を離した瞬間、温もりが離れたからか、アルトが少し身動きをしたけど、リースの手を握ると落ち着いたのか、安心したように眠るアルトの姿にリースは思わず声をだしてしまう。
「お、お母様!」
「ふふふ、ほら、あまり大きく動かすと起きてしまうわよ?」
その手がすぐに壊れそうで、強く握る返す事も出来ずに、アタフタするリースの姿をみてアマルが笑う。
「リース・・・一緒に」
「マリル?」
そんな二人の様子とは違い、少し落ち込んだ様子のマリルがリースの手ごとアルトの手を両手でそっと握る。
マリルの様子がおかしいと、首を傾げる。
「今気付いても仕方がないのだけどね。アル君には精霊がいるって話は知ってるわよね?」
「えぇ、確か今はマリルの精霊と同化してしまったのでしょう?」
世界を作ったと言われる、光の精霊ラグラス。
マリルの契約精霊で、子供のように身勝手であったが、アルトの傍に憑いていた精霊が同化して今は落ち着いた状態になっている。
その時に、ラグラスとの精霊としての格差あり過ぎたため、自我を無くしてしまったのだ。
その自我の部分を、マリルがアルトとの間接契約で維持している状態が今なのだが
「その精霊って、侵食型って言ってあまり私達の中でもよく思っていない人が多いのだけど、ラグラスに侵食、同化してから自我が無いのにも関わらず、アル君に魔力を流し続けていたのよ。ラグラスは普通に過ごしている分の余剰分だって言って、気にしてなくて、私もラグラスの魔力がアル君に流れているのらアル君の役に立つかもと思って、放置していたのだけど、アル君は最初その精霊の事をこう言ってたの「この子は治癒魔法が得意でした」ってね」
「それって」
「うん、多分その子が、アル君に拘っていた理由は、アル君の身体を治癒し続ける必要があったから。それが、前の契約主の言葉なのか、自分の意思なのかは分からないけど、それでも、その子はアル君を治し続けていた。いいえ、今も自我が無くても無意識にラグラスの魔力を使って治し続けている。アル君と契約した後もマムの実を食べて魔力を回復させていたのは、アル君の魔力や自分の魔力で治せる範囲を超え始めたから。その事に早く気付いていれば・・・」
マリルは、後悔するように、アルトの手を握る。
「・・・そんな事を言ったら、私なんて一緒に住んでいて気付かなかったのよ?」
リースとマリルは早く気付けていればと思い、顔を下げてしまう。
「ふっひゃっひゃっひゃ!ゴホッ!ゴホッ!・・・暗いぞ!暗すぎる!そんなのでは治るものも治らんわ!」
「そうよ。今言ったでしょ?後悔よりも、今できる事をしないとね」
婆さんが扉を開けて、部屋に入ってきたことで、少し雰囲気が軽くなった・・・ような気がする。
あと、婆さんの咳が本格的にやばいと思うが、大丈夫だろうか?
「そ、そうよね。今は出来る事をしましょう」
「ええ。ところで、お婆さん。本当に体大丈夫ですか?」
「ふっひゃっひゃっひゃ!ゴホッ!ゴホッ!・・・まぁ大丈夫じゃ!」
「まぁって」
婆さんの身体を心配しながらも、今できる事をやり始めるリース達。
その後、魔力不足でふらふらになりながらも、いくつかの機械を持ってきた望。
後は、薬草を待つのみだった。
・・・・・まぁ、大丈夫そうだな。
なんか、ドラゴンをお座りさせている狐母娘や盗賊達を一網打尽にしている狼母娘、エルフとの揉め事を半ば強引に纏めている猫母娘がいる。
って、母娘だけか!?
男どもは・・・・って小さくなって苦笑していた。
「・・・・私もアルトが苦しそうに倒れている所を見てた。アルトが大丈夫って言ってたからあまり気にしなかったけど・・」
無事に薬草を取って帰って来て、その薬草を婆さん達が処置をしている間にリース達から話を聞いて、サヤが落ち込んでいた。
ミヤやアヤもいつも優しく接してくれていた、アルトに甘えてばかりだった事を後悔していた。
「お母様も私達に言っていたけど、今は出来る事をしましょう。落ち込んだり、後悔するのは後から出来るし、それよりも、これからどうしていくのかを考えた方が良いと思うの」
「これからですか?」
「そうよ、ミヤ。多分、アルトはこれからも無茶をし続けると思うの。アルトはアルトのお父様達の言葉を受け止めて、それを実行しようとしているからね。でも、アルトはそこまで強くない。だから、強くなるために無茶をする。そして、アルトはそれを私達に気づかせないように隠す。隠してしまう。自分の弱みを見せたくないから、見せられないから」
「じゃぁ、修行の量を減らしたりすれば・・・」
「マリルの言いたいことは分かるけど、多分アルトは、お父様が止めようと言っても聞かないし、お父様も止めようとはしないと思うの。それに、アルトは勝手に修行を増やしたりするから、逆に目を離さない方が良いと思う」
「じゃぁ、どうすれば・・」
「・・・・アヤ、それは簡単。修行の内容を簡単過ぎず、難し過ぎないぐらい、楽過ぎず、辛過ぎないぐらいに抑えれば良い。ただ・・」
「お父様がそれが出来るかと言われると・・・・」
「無理」(←全員一致)
「だと思うのよね・・・・最近はアルトも何だかんだで喜んで修行を受けているみたいだし」
子供達が揃って相談している内容を聞いて、母親達が苦笑している。
隣の部屋では、誠達男どもが婆さんに扱き使われながら薬草を処置していて、聞こえてない筈なんだが、誠が何かに気付いたように叫ぼうとして、婆さんに怒られていた。
「だから、私達にできる事は限られているの。一つは、修行の時にアルトの傍に誰かがいる事。お父様とアルトが暴走して無茶をしないようにするの。もう一つは、アルトを守る事」
「守るですか?兄さんを守ると言っても何からですか?」
皆はリースが言った一つ目は納得できるようであったが、その後に出て来た二つ目の事について首を傾げていた。
「皆も経験があると思うけど、アルトは私達の誰よりも弱いのに、私達を守ろうと無茶をすることがあるの。だから、アルトが無茶をしないようにするためには、まずは私達自身が強くならないといけないの。私達自信を守るために、アルトに危険が迫ったら助けられるように・・・・アルトが私達に劣等感を感じてしまってもね。その事で、私達がアルトに嫌われるかもしれない、アルトが私達から離れて行くかもしれない。だけど、私達はそれでも、強くなる必要があるの」
リースはアルトを守るために、アルトに嫌われても強くなる必要があると言う。
ミヤは、鳥に持っていかれたリボンを探す為に一人で森に入り飢狼の群れに襲われていたアルトの姿を思い出し
アヤは、自分を助けるためにボロボロになりながら何度も立ち上がろうとしていた姿を思い出し
サヤは、大勢の大人に囲まれて、一人で戦っていた時に助けに来てくれた姿を思い出し
マリルは、自分自身の記憶を犠牲にしながらも、戦う意思を捨てなかった姿を思い出し
リースは、魔竜相手に逃げ出さず、自分を助けようとしてボロボロになった姿を思い出し、
ジルとノアは、アルトが家族を守ろうとして、ゴブリンの群れに飛び込んで行った姿を思い出していた。
それと同時に、あの時自分達に戦う意思が、力が、決意が、行動があればとも思ってしまう。
だから、リースの言っている事は理解できる。
だけど
「・・・・でも、アルトから離れるのはイヤ」
サヤの小さな呟きに、皆頷く
アルトに対して、皆一定以上の感情を抱いているのは自覚している。
だからこそ、アルトの傍から離れたくないのだ。
「サヤの言いたい事は分かるわよ。だから、ただ私達が強くなるだけじゃダメなのよ。アルトを本当に守る為には・・・・」
リースが近くに集まっている皆を見渡す。
その表情が凄く真剣であったため、見られた皆も自然と表情が硬くなる。
「心を守らないといけない。アルトが私達に弱みを見せられるように、私達がアルトの弱みを気付ける様に」
「リース、言いたいことは分かるけど、具体的にはどうするの?ずっとアル君の傍にいれば良いの?」
マリルの問いかけに皆も頭を悩ませる。
具体的にどうすれば良いのか分からないのだ。
今回、アルトが発作で倒れた事はアルトが病気の事を隠し続けた事による。
すなわち、アルトは誠を含め全員に心を開いていなかった、若しくは、誠達の迷惑になると気遣いがあった。
別に、アルトは誠達の事を信頼していない訳ではない。
ただ、甘え方を知らないのだ。
まだ、誠達に対して壁があるのだ
ならする事は簡単だ。
向こうが戸惑い、踏み出せないのなら
「別に特別な事はしなくて良いと思うの。普通に傍にいて、普通に話して、普通に笑って、普通に泣いて、怒って、喧嘩して・・・それで良いと思うの。ただ、今はアルトが我慢し過ぎているから、私達の方から積極的に動く必要があると思うけど」
そう、相手が踏み出せないのなら自分達から踏み込めばいいのだ。
その考えが出る辺り、誠の娘なのだと思う。
誠も向こうの世界じゃどうだか知らないが、この世界に来てからはガンガンと相手の懐に飛び込み、掻き乱して、引っ張って、皆を纏めていた。
誠が動くと、最後には皆が笑顔だった。
父親が他の人を笑顔にできたのだ、その娘が好意を持っている男一人を救えなくてどうするというのだ。
「お母様がお父様達を支え続けた様に、戦う力は必要なくアルトが私達を頼ってくれるように、アルトを支えられるようにしないとけない。多分、これはお父様達の修行より大変だと思うの。だから」
リースが語っているのは理想でしかならない。
人を支えると言うのは、言葉では簡単であるが非常に難しいし、人によっても違う。
ただ、傍にいてくれるだけで良い人もいれば、一緒に身体を動かした方が良い人もいる。
相談や愚痴を言って吐き出す人もいれば、身体の温もりを分かち合わないと落ち着かない人もいるかもしれない。
目的は一緒でも、手段はいくつもあるのだ。
それを、決めつけて行動することも、ましてや、それを考える事さえリース達には難しい。
今まで、父親たちとの修行で戦う力しか磨いて来なかったのだ。
だったら、その問題に応えられる人を限られている。
「だから、お母様達。私達を鍛えて下さい。女性としてアルトを守れるように」
リースは傍で話を聞いていた母親達の方を向いて、頭を下げる。
リースの言いたい事を理解した他の娘達も一緒に頭を下げている。
母親達は、その子供達の姿に苦笑している。
「頭を上げなさいリース。他の人もよ。丁度、女性としての振る舞いを徹底的にたたき込むつもりだったのよ。だから、覚悟をしておきなさいね」
リース達はアマルの声に頭を上げて、その顔を、並んで立っている母親達の顔をみて、顔を少し強張らせた。
「私達の指導はお父さん達みたいに、きつくはないけど厳しいわよ?」
この世界で戦う力を身に着ける事は重要な事は理解していたし、英雄の子供として注目を浴びると分かっていたから父親達との修行については口出しをしてこなかった。流石に、女性としての最低限の身嗜み等は教えていたが、それでも後回しになっていたのは変わらない。
しかし、今回の事でリース達が自分達から教えてくれと言って来たのだ。
母親達の誰かが、言った訳でもなく強制させた訳でもない。
自分達で考えて、自分達で行動してきたのだ。
だから、母親達は嬉しく仕方がないのだ。
リース達が顔を少し強張らせる程喜んでしまう程のにな
「ふふふ、あらリースどうしたの?顔が引きつっているわよ?まず、一番重要なのは、笑顔よ?アルト君が目覚めた時、貴女達の笑顔を見て顔を赤くするアルト君を想像してみなさい」
そんな娘達に、まずはという風にアマルが話始め、その内容を想像したリース達が顔を少し赤くする。
「おう、薬が出来たぞ・・・・・ヘヤマチガイマシタ」
母親達があれやこれやと楽しそうにこれからの事を話し合い、リース達がその話を聞いて顔を赤くするという事を繰り返していると、隣の部屋から誠が嬉しそうに飛び込んできて、部屋の中を見渡して、見ていないふりをして部屋から出て行こうとする。
まぁ、気持ちは分からないでもないが、早くアルトを治してやれと言いたい。
「ふっひゃっひゃっひゃ!ゴホッ!ゴホッ!・・・これでもう大丈夫じゃろ」
「婆さんの方が大丈夫じゃない様な気がするけどな」
「ふっひゃっひゃっひゃ!まぁ、永くはないじゃろうて」
出来上がった薬をアルトに飲ませて、もう大丈夫だと言う婆さんに誠が冗談で声を掛けるが、婆さんはそれを否定しなかった。
「・・・そうか、ありがとう婆さん。婆さんがいなければ」
「ふっひゃっひゃっひゃ!それが儂の仕事じゃ、それに儂の知識や技術は倅達にしっかりと受け継いでいる。何も悔いはないさ」
婆さんはそう言って、薬の服用の注意点などを誠に教えている。
リース達は薬を飲めば、すぐに良くなると思っていたようで、薬を飲んでも良くなったと思えないアルトの姿をみて首を傾げている。
「ふっひゃっひゃっひゃ!病気は怪我や呪いなんとは違い、特効薬を呑んだからといってすぐに治る事はないんじゃ。じゃから、しっかりと看病するじゃぞ」
婆さんは、次は自分じゃなく息子夫婦に往診させるように誠に言い、そのまま誠を引っ張りながら部屋を出て行く。どうやらもう帰るようだ。
リース達はアルトのベッドの周りに集まり、アルトの手を握ったり、汗を拭いたりと母親達に教えられながらしている。
「まだ、アルトは起きないか」
そこに、婆さんを転移魔法で送った誠が部屋に入ってくる。
その声に反応したのか、アルトの目が徐々に開いて行く
「・・・師匠」
その小さい呟きは、皆の耳に聞こえ、一斉にアルトの方をみた
「おう、気付いたか」
「すみません、僕は・・・」
「何も言うな、今は身体を休ませろ」
「だけど、僕は皆さんに迷惑を・・・」
まだ、身体がきつい筈なのに起こそうとする姿に近くにいたリース達が抑える。
しかし、アルトはリース達に気づかないのか、視線は誠の方に向いていた。
「迷惑なんかじゃない、お前は俺の弟子なんだからな」
「・・・はい」
笑顔で何でもないように言う誠の姿をみて、アルトはまた眠ってしまう。
何気なく言ったこの言葉がアルトにどう影響を与えたのかそれを知らずに、アルトが眠った事にホッとする誠達。
事ある事に、照れ隠しなのか「お前は俺の弟子なんだから」と言い続けた誠に、アルトが弟子の存在に固執する事になるとは誰も思わなかった。
おまけ
アルトの病気が良くなり、話ができる程回復した頃、丁度皆の都合が合い、アルトの部屋で話をしていた時に、アルトの為に薬草を取りに行ったと言う話になった。誠が面白可笑しく話をして、笑っていたのだけど、その中でドラゴンが出た話になった。
「頑張りました」
と、珍しく自慢げに話すアヤの姿にアルトが心配そうな顔で
「無理はしないで」
と言うと
「お前が言うな!」
と、皆からお説教をされていた。
おまけ2
「あ~罠どうするか」
「いきなり望が物騒な事を言い始めたぞ」
「誠・・・お前が持ってきたんだろ?新しく作る学園に罠を創れって」
「あ~なんかそんな事頼んだな」
「忘れてたのか、酷くね?」
「まぁまぁ、それで何を悩んでいるんだよ。罠なんてすぐに創れるだろ?」
「創るのは簡単だけどよ。どんなタイプにするかとかな。学園生相手だろ?あまり簡単でも難しくてもいけないと思ってな」
「罠だけじゃなくて、なんかご褒美なんかあれば良いな。敢えて罠に引っかかる事で得られるとか」
「それ、罠じゃないだろ・・・・でも、そんなのがあっても良いかもな。あ、そうだ、確か・・・・」
「どうした、昔創った人形なんか出して。自立型のゴーレム軍団を創るんだ!って言ってたやつだろ?結局、生命を吹き込むことに躊躇して挫折した奴」
「それをしたら俺は神になってしまうからな。神殺しの技を持つ俺が出来るわけないだろ」
「ま、実際望がそれをするなら俺が止めていたけどな。生命を創るなんてやってはいけないだろ」
「お前はいつかしそうだけどな。無意識に」
「否定ができなさそうな気がするのは何故だろうな?それで、結局それを出してどうするんだよ」
「いや、命は吹き込むことはできないが、簡単な命令は出来るだろ?だから、お前と一緒に創った”幻想空間”にこいつを入れて、”幻想空間”を見つけた奴の世話をさせようかな~と」
「あ~あれな。結局唯の幻想でしかないやつな。それでも、学園生には過ぎた物じゃないか?」
「持っていても仕方ないしな、それに、特別なご褒美があっても良いだろ?まぁ場所は学園長に聞かないといけないけどな」
「ま、良いじゃないのか。別に害がある訳でもないしな」
「おう、じゃぁ次はこんなのはどうだろうか・・・」
・・・・良いことを聞いたぞ




