綺麗な人は好きですか?
恥ずかしがって、下を向いている女子生徒を連れてゆっくり出来そうな所を探しているけど、中々見つからず、しかも段々と周りの視線が増えてきているような気がするのだ。
「うぅ~これからどうすれば・・・」
顔を赤くして恥ずかしがっている女子生徒はそんな周りの雰囲気に気付かないまま歩いている。
その姿を見ていると、なんだか守ってあげたい気持ちになってきてしまう。
結局、外ではゆっくり出来そうな所が見つからず、校舎の中にある食堂に行くことにした。
この学園には、食堂があり美味しい料理がいつでも食べられる事で人気な場所だ。
流石に、学園の授業が終わって少し経っている今は生徒の数は少なかった。
・・・まぁ何故か、その数少ない学生たちが僕達の姿をみて驚いた表情になったのには驚いたけど
「まぁ取り敢えずは座って下さい。何か飲み物を持ってきますよ」
「あ、いえ。流石にそこまでされると悪いと言うか・・・・」
「そうですか・・・・あ、すみません。流れでここまで連れてきてしまいましたが予定とかなかったですか?」
女子生徒を椅子に座らせて何か飲み物を頼みに行こうとすると、女子生徒に止められてしまった。
まぁ出会ったばかりの異性にそこまでされると警戒されるかな?と納得した所で、そういえば女子生徒の意思も確認せずにここまで連れてきてしまっていた事に気付いた。
「ははは、今それを聞くんだ。別に大丈夫よ。なんかモヤモヤして気分転換に散歩をしていただけだから」
「なら良かった?のかな?」
「ふふ、何が良かったのかな?そんなに私と話がしたかったの?」
女子生徒は身体をテーブルに乗せるように前に倒して、すこし意地悪そうな顔で僕を見てくる。
「あ、いえ、そういうつもりではって言えば失礼ですかね?」
コロコロと表情が変わるのが可愛らしく、少し顔が紅くなるのが分かるのを誤魔化すように慌てて答える。
「ふふ、そうね。確かに少しショックだけど・・・まぁふざけるのはここまでにしておきましょう・・・今はね?」
「ははは・・・助かります・・」
何だかとても疲れたような気がする。
「あら、ごめんなさい。助けてくれたことにお礼を言う立場なのに私ったら・・・・君の反応が可愛らしいから少しからかってしまったわ」
「・・・貴女も顔を赤くして恥ずかしがっている姿はとても可愛らしかったですよ」
「なぁっ!」
まだ、僕をからかう女子生徒に少しは反撃しないと思い、ここまで歩いてきた時に思っていたことを正直に話すと、女子生徒はさっきまでの余裕をなくして、また顔を赤くしてしまった。
・・・まぁまたそれが可愛らしいのだけど
「・・・・もう止めましょう。恥ずかしくてどうにかなりそうよ」
「・・・そうですね。止めましょう」
結構言った方も恥ずかしいもので、顔が紅くなっているのが分かる。
「あ、そういえば自己紹介がまだだったわね。私の名前は・・・・そうねリリアって言うの」
「・・・僕はアルトと言います」
女子生徒は少し考える素振りをしながら名乗り、手を出してくる。
偽名ではないとは思うけど、何かを隠しているような気はするけど、同じ学園に通っているならいつか分かるだろうと気にせず、自分も名乗りその手を握った。
「では改めて、アルト君さっきは助けてくれてありがとう。さっきも言ったけど、君が助けてくれなかったらもっと多くの人の目に晒されている所だったわ」
「直ぐ近くで倒れましたからね。流石に無視はできなかったですよ・・・・それにリリアさんはも何だか落ち着きがなかった感じですしね」
「うん、まぁ・・・それは・・・・」
さっきまで笑っていた表情が曇り、少し考える素振りをしているリリアさん。
確かに、気にはなっていたけどそれを直接聞くのは拙かったかと思い、何か話題を変えようと口を開こうとしたら
「ま、ここで会ったのは何かの縁という事で・・・・ねぇ?少し聞いてもいいかな?」
と、考えが纏まったのかリリアさんが先に聞いてきた。
「まぁ、僕に答えられる内容でしたら」
師匠の弟子の事や師匠の家族のこと以外は特別隠す必要がないので問題はない。だから、気楽に返事をしたのだが
「じゃ、じゃぁ、男の人って綺麗な人や可愛い人を見つけると誰でも声を掛けるの?」
「・・・・・・・・」
何て答えれば良いのだろうか
僕も男だから、綺麗な人や可愛い人に目が惹かれる事はある。
つい先日は、ケントとダルスが道を歩く女性に点数を付けていたぐらいだ。
だから、答えはハイ。なんだけど、それがそのまま声を掛けるのか?と言うとそうでもないような・・・でも、ナンパという言葉があるぐらいだし・・・
「・・・ひ、人それぞれじゃないかな?とは思うけど・・・女性でも容姿が整っている男性に目が惹かれる事があると思うけど・・・」
「それは、そうだけど・・・・」
リリアさんは何となく複雑そうな顔になってしまい、口を閉ざしてしまった。
これは、あれだ。
前回、シェルの答えに満足いく答えを出せなかった空気に似ている。
どうも成長できていないなっと思い、少し笑ってしまう。
でも、少しだけ足掻いてみたくなって
「・・・・僕も男ですから、綺麗な人や可愛い人に目が惹かれる事はあります。声を掛けて仲良くなりたいと言う気持ちもあります。」
少し恥ずかしいけど、自分の気持ちを正直に話す事にした。
「ただ、これは僕の意見ですが、誰でもいいから声を掛けるという事はしません」
「・・・・例えば、どういう人に声を掛けるの?」
それも正直何て答えれば良いのか分からない。
僕の場合は、目の前のリリアさんみたいに無視できない状況やシェル達みたいに向こうから話し掛けてくることが多い。
でも、それは困っている人が目の前にいるからであって、決して綺麗な人や可愛い人だからっていう理由じゃない。
まぁ、綺麗な人や可愛い人の方が嬉しい事は嬉しいのが本音であるが・・・
「・・・自分が無視できないと思った時ですかね」
「・・・・・私みたいに?」
「大体は」
「彼女欲しくないの?」
「・・・・欲しいですけど、今はやりたい事がありますから」
リリアさんは結構鋭い質問をしてくるから、答えにくい事がある。
そりゃぁ、彼女が欲しいかと言えば欲しいに決まっている。
一瞬、複数の顔が思い浮かんでしまい必死に考えないようにする。
だけど、まだ僕には色々な事が足りなくて、だからまずはそこに辿り着いてからじゃないと・・・と思ってしまうのだ。
「そうか・・・・ごめんなさい。恥ずかしい事を聞いてしまって」
「いえ、何かの参考になれば良いですけど・・・なります?」
「どうかな?少なくともあいつと君は違う人間だという事が理解できたけどね」
「あいつ?」
まぁ、話の流れからリリアさんが気にしている異性の事だとは思うけど、気が付いたら尋ねていた。
「・・・私の事を守るとか言ってる癖に、綺麗な人や可愛い人を見つけると仲間に入れようとする人なのよ。しかも、実力があっても男は入れないの。まるで私達を自分の所有物だと思っているみたいにね・・・・ははは、何を言っているんだろうね私」
その顔がとても無理をしているように見えてしまう。
だから、咄嗟に声を掛けてしまった。
「・・・愚痴を聞くだけでもできますから」
「え?」
「男の僕に相談しづらいのであれば、女性の知り合いに頼むこともできます。だから、無理をしないで下さい」
「・・・・・」
リリアさんは驚いた顔でこちらを見ている。
でも、すぐに意地悪そうな顔になって
「それは、私が綺麗な人だから?」
「・・・・・可愛い人だとも思っていますよ」
そう言ってから、二人してまた顔を赤くしてしまい、リリアさんはそんな雰囲気から逃げ出すように顔を赤くしながら走り去ってしまった。
「お待たせしました」
恥ずかしい事を言ってしまったと思い、頭を抱えていたらジル達の声が聞こえて来た。
「・・・・・聞いていた?」
あまりのタイミングの良さに聞いてみると
「段々とそういう所も旦那様に似てくるのですね」
「・・・・・」
二人にも聞かれていた事に気付いて、また顔を赤くするのであった。
おまけ
「勇者様どうなされたのですか?街まで一人で帰ってしまいますし」
「勇者は止めてって言っているでしょ」
「申し訳ありません。それでどうされたのですかリリア様」
「どうもこうも、あいつの事がね・・・また、可愛い子を見つけていたし」
「あぁ、確かクーナと言っていましたか。リリア様も可愛いですね、嫉妬するなんて」
「嫉妬・・・か。ねぇ貴女はあいつの事どう思っているの?」
「どうとは?」
「好きか嫌いかよ」
「そうですね・・・私はお二人のお世話をさせて頂いておりますが、好きか嫌いかで言えば好きなのですが、それ以上に感謝の気持ちの方が強いです」
「じゃぁあいつが、他の人を連れてきても許せる?」
「初めの頃は思う事もありましたけど、今はああいう方なんだと理解することにしています」
「成程ね」
「リリア様?」
「・・・ちょっと私もあいつの真似をしてみようかなって」
「それは・・・」
「ただちょっと女慣れしていそうだったから少し調べてみてくれない?」
「分かりました。すぐに調べてみます」




