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師匠!何してんですか!?  作者: 宇井琉尊
学園対抗戦(異世界勇者二人)
43/86

魅了?

段々と対抗戦の日が近づいてきて、学園も慌ただしくなってきていた。

通常授業は少なめになり、自由な時間が増えてきてもいる。

対抗戦は学年やクラス、選択科目が違っていてもチームを作る事ができる。

そういう人達の為に自由に使える時間を作り、チームワークや作戦など考える時間にあてることができるのだ。

そこで、僕達のチームも色々考えなくてはいけない時期には来ているのだけど・・・


「クーナはまだ帰ってきていないし、ジル達は何か忙しそうにしていたし・・・・」


リリアさんと初めて出会ってから、何故かジル達は忙しそうに走り回っていて、そこに何故かナナシさんが加わっているみたいなのだ。


「・・・何もなければいいけど・・」


師匠と違い信じてはいるけど、二人と話していたナナシさんの顔は何故か楽しそうで、何かを企んでいるみたいな顔をしていたような気がするのだ。

まぁ、ジルとノアの二人は対抗戦前の情報収集や当日の僕達の世話をするだけ、直接何かをすることはないから、別に構わないのだけどクーナがまだ師匠に連れて行かれてから帰ってきていない事と


「・・・・・なにか?」


ジル達が用意してくれた教室からぼーと外を見ていたミリアが僕の視線に気付いて、こちらを振り向いた。


「いや、何をしようかなって思って」

「別に特別する事なんてないでしょう?私は負けるつもりはありませんし・・・・貴方が負けるのも認めませんけどね」

「う~ん、僕の実力だと簡単に負けてしまう可能性が高いのだけど・・・」

「なら、話は簡単ですわ。私、戦う。貴方はじっと待っている。それだけですわ」

「・・・・・・」


そう言って、つまらなそうに視線を外に向けるミリア。

外では、他の生徒達がワイワイ言いながら、訓練をしたり話し合っている姿が見える。

僕はその姿に少し溜息をついて、これからどうしようか悩んでしまう。


対抗戦の基本的なルールは、各一チームごとに配られる旗を多く取ったチームが勝ちというシンプルなものだ。

旗を取られたチームは退場となり、それ以降は何もできない。

だから、教師や対抗戦を見に来るお偉いさん達にアピールする為には、少しでも自分たちの旗を死守しないといけない。

じゃないと、見せ場がなくなるからだ。

それで、旗はチームの代表者が必ず持っていないといけず、僕のチームでは僕が持つことになってしまった。

ミリアは別に評価とか気にしない様子であるが、負ける事は嫌いのようで、

弱い旗(僕)→じっとしている。

という考えを一切変えてくれないのだ。


「それが嫌なら、実力をつける事ですわ。そうですわね・・・貴方が私に一撃でも当てられたら考えますわ」


と言われて、家での訓練中に挑んでいるけど今だに一撃というか、剣すら抜かせてもらえていない状況なのだ。

師匠から補弾や因果応報などの禁止されている魔法が無ければ、僕の実力はかなり低い。まぁ、その魔法もリースやケント達と比べるとかなり劣るものではあるけど・・・

それでも最近やっと、補弾の力で無理やり解呪していたミリアの瞳力に補弾なしで対抗できるようになってきた所なのだ。

本当の死合なら、ミリアが言っている作戦でいいと思うのだけど・・・・・・かなり情けないが

それが学園の評価に繋がると言われると、そう言う訳にもいかなくて


「本当にどうしよう・・・・」


僕の呟きは聞こえている筈なのに、無視をしているミリアの姿をみてもう一度溜息をつくのだった。


結局、何の発展もなく授業が終わりそのまま帰宅することになった。

ミリアは終業の合図と共に一人で帰ってしまうし、ジル達を残して帰ると家に帰ってからリース達から怒られる。

だから、最近はジル達が帰ってくるまで学園の中を散歩することが日課となっていた。

授業が終わってもまだ訓練をしているチームがいて、仲の良い友人同士で話をしているグループがあって、ギルドに行くのか慌てて走って帰る学生もいる。

そんな光景を何となく眺めるのも何だか楽しいのだ。

近くにあったベンチに腰掛けて色々な生徒の様子を見ていたら、なんだか後ろの方が騒がしくなってきた。


「ん?」


気になってベンチから振り向くと


「んがっ!」


急に顔に何かが飛び込んできて、そのまま後ろに倒れてしまった。


「主!ただいま戻りました!」


何かに抱き着かれて、頭の上を何かがスリスリしているのは分かる。

だけど、目の前が真っ暗である事と顔に何やら柔らかい物が触れている事でそれどころじゃなかった。


「チ、チッタ!取りえずどいてくれるとありがたいのだけど!」


僕の事を主と呼んで、なにより声でチッタと分かり声を掛けるが、チッタの耳には聞こえていないようでさらに抱き着かれる力が増えたような気がする。

女性特有の柔らかさが先程よりもかなり強く感じられて、息が苦しいのと恥ずかしいのとでどうにかなりそうになった時に


「はいはい、嬉しいのは分かるけど場所を考えなさない」


という、呆れた感じのクーナの声が聞こえて来た。


「ク、クーナ!ちょっと助けて!僕の力じゃ無理!」


何とか振りほどこうとしているけど、上級精霊並みの力をもつチッタの力に僕が敵う筈がない。


「お?いつの間にか”さん”が取れている。それだけ必死ってことかな?取り敢えず・・・・はい、いい加減もとに戻る!」


ドォンッ!


「え?」


直ぐ上から聞こえて来た、凄く鈍い音に僕は驚いて動きを止めしかなかった。。


「あちゃぁ~やっちゃった」


クーナの少し後悔しているような声が聞こえて、今まで頭に感じていた地面の感覚がなくなってしまった。

そのまま、ズルズルと地面を滑って行き身体が半分ぐらい地面に落ちるぐらいで止まった。

要するに


「・・・・地面を陥没させた?」


誰かの生徒が言った言葉に、周りの生徒達が騒がしくなった。

僕も確かに驚いたけど、今はそれどころじゃなくて


「チッタ!大丈夫!」


プルプルと震えているチッタが心配で声を掛ける


「・・・・少し痛いぞ」


そんな声が頭の上から聞こえて、チッタが起き上がったのかやっと周りを見ることができた。

と、言っても土しか見えないのだけど・・・


「私もまだ力加減が出来ていないくて悪かったけど、それを「少し痛い」だけで済む貴女も大概ね」

「・・・・・・我に少しでも「痛い」と思わせることが出来る存在がどれだけ少ないか理解していないのだろうなこの娘は・・・」


チッタとすぐ近くにいたから聞こえたその呟きを僕は聞き逃さなかった。

チッタは師匠曰く上級精霊以上の力を持った守護精霊であり、クーナはDランクの魔物を倒すのも一苦労するぐらい実力はなかった。

そんなクーナがチッタに痛いと言わせて、地面を陥没するぐらいの力を手に入れた事に驚いた。


「ん?何か言った?それより早くアルトを起さないと」

「いや、何も・・・主、立てますか?」


そう言って、手を伸ばしてくるチッタの姿に違和感があったけど何か分からなくて、そのまま二人に起こして貰ったら


「あれ?チッタ少し成長した?」


改めて二人の姿を見ると、クーナはまだ店の制服のままだったし、チッタは少し成長している感じがした。

身長が伸びていて僕の肩ぐらいまであり、抱き着かれた感じを思い出して色々な部分も成長していたんだなと思ってしまった。

・・・・服は相変わらず、可愛らしいフリフリが付いている洋服であったけど


「詳しい話は後程に今は・・・」

「・・・誰だその男は?」


チッタが僕を守ろうとするかのように身構えたら、知らない男が忌々しそうに僕を睨んできていた。

その男は、黒髪、黒目で顔の作りとかが何となく師匠やノゾムおじさんに似ている感じがした。

人の事は言えないが、体格はそれ程良くなく、あまり鍛えているようには見えない。

だけど、睨んでいる男からは何やら不思議な感じがしてくるのだ。

何だか僕が知らない何かを見ているようで、かなり不気味な感じがする。


「あ、僕はアルトと」


取り敢えず、自己紹介をしようとしたら、その男の目が急に見開いて


「こいつ魅了を持っていやがる!」


と叫んだ。


その言葉に周りの生徒達は驚いて、逃げ出す生徒もいたけど、大半は僕を睨みつけてきた。


「え?ええ?」


その変化に僕の頭はついてくることが出来ずにいた。


「あの男・・・」


そんな僕をチッタは皆から守るようにして、男を睨みつけていた。


「ご、ご主人様!大丈夫ですか!」

「取り敢えず、今は逃げます。クーナ様も一緒に」


そんな中、生徒の人垣を縫ってジルとノアが走ってきてそのまま僕の腕を掴んで走り出す。


「えぇ、分かっているわ」

「・・・・・”黒霧”」


クーナがすぐ後ろを走り、チッタが口から黒い霧を吐いて皆の視界を妨げていた。


「逃げたぞ!」

「追え!逃がすな!」


後ろの方で騒がしい声が聞こえるけど、僕はそれどころじゃなかった。


「・・・・魅了?」


ミリアにも同じ瞳力がある。

異性を虜にする瞳力

強制的に相手を自分に魅入らせてしまう、そんな能力。

ミリアは異性から情報を得る為に軽い力で使う事はあると言っていたけど、すぐに解除していると言っていた。


「自分が好きでもない人を虜にしてどうするのですか?・・・・気持ち悪い」


と、かなり嫌悪感丸出して言っていた。

それを僕が持っている?


僕よりも実力があるリースやナナシさん達、最近ではシェルやファルも僕の傍にいてくれる。

ケントみたいに容姿が整っている訳でもなく、実力もない僕に皆が傍にいてくれるのはその”魅了”のお陰?

そんなことをグルグルと考えていたからか


「ジルとノアの二人は”魅了されし者”だ。彼女らを救え!」

「おぉぉぉぉぉぉ!」


そんな言葉はすぐ近くで囁かされたようにはっきりと聞こえてしまった。



おまけ


「・・・・成程ね。放課後学園が騒がしかったのはその所為なのね」

「はい、ジルさんとノアさんの二人と話していたら急に二人が走り出したのでそのまま付いて行くとそのような事に・・」

「・・・魅了・・か」

「リリア様?」

「前回、アルト君に会った時にそういう能力あったかな~って」

「・・・思い出せますか?」

「う~ん・・・無理。あの時は自分の事で一杯一杯だったしね」

「そうですか・・・」

「取り敢えず、今自分を確認したけどそういった系の魔法は受けていないみたいだけど・・・・って、何で貴女が悲しそうな顔をしているのよ」

「悲しそうですか?」

「悲しそうっていうか・・・裏切られた子供みたいな・・・上手く言えないけどそんな感じ」

「確かにあの方を調べていて悪い人ではないと・・いえ、それ以上にリリア様が言っていたようにリリア様のチームに入れても良いと思えるぐらいは評価をしていたのですが・・・」

「それが裏切れられて悲しいっと」

「・・そういうリリア様はなんとも思わないのですか?」

「う~ん・・・正直”それが本当なら”ショックなのだけどね?」

「なら」

「ヒント1、今の私はそういう精神系の効果を受けていない」

「何を」

「ヒント2、今でもアルト君をチームに入れる事を諦めていない」

「・・・・・・・成程です」

「流石、ナイン。分かってくれると思っていたわよ」

「では、引き続き情報を・・・・」

「どうしたの?」

「いえ、魅了の話は別として、あの方の情報の事なのですが・・・」

「?一杯調べて来たわよね?流石に出自は分からなったけど、海向こうの大陸から来た事は知っているし、あの英雄一家の人達と仲が良いってことも知っている。好みの料理や活動範囲も・・・・・なんだか私がストーカーになっているみたいね」

「ストーカーっていうのは分かりませんが、そこまで詳しく調べられるのにあの方がどこに住んでいるのかは分からないのです。まるで、それ以外の事は知っても別に構わないと言われているような・・・・知れる情報を選別されているような気が・・・・」

「・・・ナインより実力がある人がいるってこと?」

「そう考えていた方が宜しいかと思います。そう考えると、ジルさんとノアさんの二人も何だか怪しい感じが・・・・」

「どうして?邪魔してくるの?」

「いえ、逆に色々教えてくれるのです。それこそ、好きな食べ物は何かなど・・・」

「それは、ただご主人様を知ってもらおうとしているだけじゃない?」

「私にですか?」

「ナインは私のメイドって学園の人達は知っているから遠回しに私・・・に・・・・成程ね」

「・・・・私も分かりました」

「こっちの人にも腹黒い人がいるんだね」

「・・・・・私は、私よりも実力があって、そういう事が得意っていうか好きな人知っていますよ」


おまけ2


「やばいっす!完全にばれたっす!あの異世界の嬢ちゃん頭の回転早すぎっす!これはおもし・・いやいや!楽しそうになったすね!」

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