学園対抗戦と新たな出会い
「対抗戦?」
「はい。大体学年やクラスに慣れた頃に一度、学園の終わりに一度、自分達の実力を試す機会があります」
久しぶりに学園に通うと、学園の人達が落ち着きがない感じがして、近くにいたノアに聞いたらそう返事が返ってきた。
ケント達と一緒にCランクの冒険者達を捕まえた事が、リース達にばれて必ず一人は僕の傍にいる事になってしまったのだ。
基本的には、僕の事をご主人様と呼んでいるジルとノアの二人が傍にいる事になっているみたいだ。
クラスや授業に問題がないのかと聞いたら、丁度対抗戦があるから問題ないと言われて先ほどの質問になったのだ。
「対抗戦は別にソロでも構わないのですが、基本的にはチームを組みます。同じ冒険者同士で組んでも構いませんし、他の科の人達と組んでも構いません。私達奉仕科の生徒は、今まで集めてきた情報を元に主人を決めてバックアップをすることになります」
「あぁ~だから、クーナの事も調べていたんだね」
「特に二年生のこの時期には、本命となる人を決める人が多く、自分達の有能性を他の生徒達に示さないと卒業してから職に就けない危険性がありますからね。情報収集にも力が入るのです。私達の場合は、仕える主は決まってしまいましたので、違う意味で情報を集めていましたが・・・」
この学園には、シャルやファル、ケントみたいに貴族の人達もいる。そういう人たちの目に留まるようにアピールすることが出来るのが、この対抗戦なのだという。
奉仕科の生徒の中には、ノアやジルみたいに初めから将来仕える人が決まっている生徒もいるみたいだが、そういう人達も経験を積むという事で、必ず対抗戦の期間中は主を決めないといけないらしい。
「去年は、お嬢様達についたので良かったのですが、今年はご主人様が帰ってこなければ別の方を選ばないといけなかったので・・・」
聞いた話だと、去年はリース達のチームが圧倒的に強くて問題になり、今年はランダムに選ばれた生徒を加えるか、人数を減らすかのどちらかを選択させられて、リース達は後者を選んだ。僕のチームも僕が休んでいるうちに決められたらしく。
リースチーム:リース、マリル
サヤチーム:サヤ、アヤ、ミヤ
シェルチーム:シェル、ファル
そして、僕チーム:僕、クーナ、ミリア、ジル、ノア
となっている。
「ご主人様がいないならまだしも、ご主人様がいるのに他の人に仕えるなんて嫌です」
と、リース達や学園側にも強気で言い切ったらしく、僕のチームだけ多くなっている。
まぁ、僕とクーナの実力はそれほど高くないし、ミリアは学園側から見ると急遽転入してきた人で実力が不明、ジルとノアはあくまでサポート役に徹すると学園側に約束して何とかこの形に収まったみたいなのだ。
「ありがとう。それで誰とチームを組むか、若しくは、相手のチームの情報を探ろうと皆ソワソワしているんだね」
「その通りです。いつもなら、お嬢様達と同じチームに入ろうと騒動があるのですが、今回は早めにチームを決めましたから、その分は去年よりは落ち着いているみたいです」
「ははは、それは必死にもなるよね」
何たって、英雄の子供たちで実力も折り紙付きなのだ。
それに引き換え
「クッソ!なんでノアさん達があんな奴に!」
「いくら幼馴染と言っても、俺達の方が実力があるのに」
「それに、新しく編入してきたミリアって娘もあいつのチームに入るっていうじゃないか」
「凄く綺麗な子だったよな?・・・・なんかおかしいんじゃないか?」
「だよな!」
僕に対する評価と言えばこんなものだ。
初めの頃こそは、リース達の知り合い、若しくは、幼馴染として珍しがられていたけど、段々と僕の実力が分かるにつれて、熾烈な言葉が聞こえるようになってきていた。
師匠曰く
「気にするな、持っていない奴らのただの嫉妬だ。それに、美少女を侍らせて嫉妬されるなんて、持っている奴の特権だぞ?男のロマンだぞ?」
と言っていた。
だからと言う訳じゃないけど、あまりそういう言葉を気にしないようにはしていたのだけど、対抗戦のチームが決まるとその声が大きくなったような気がする。
「・・・・・・」
「・・・ま、気にしない方が良いよ。って僕が言って良いのか分からないけど」
「ですが」
「こう言うのは、こっちが何かをしても、向こうが納得しない限り解決しないよ。だから、無視するのが一番いい・・・はず」
段々と不機嫌になって、飛び出しそうになっているノアの手を握り抑えつける。
ノアは僕の手を振り払おうとせずに大人しくなるも、まだ機嫌は直っていないらしい
「ご、ご主人様、ただいま戻りました!」
ノアの手を握った事で、周りの視線が増えたような気がして、ノアの機嫌をどう抑えようか悩んでいたら、らしくもない大きな声を出してジルが走ってくる。
なんか、ジルが言った”ご主人様”という言葉に、周りの僕に対する視線が強くなったような気がする。
まぁ、大半は男子生徒なんだけどね・・・
「ッ!」
「っと、危ないよ?」
「すみません、ご主人様」
走ってきたジルは何故か止まろうとせずに、そのまま僕の腕に抱き着くように飛び込んできた。
慌ててジルを受け止めると、腕の中でジルが顔を赤くしていた。
「ご主人様に対してなんてことを」
「す、少し躓いてしまっただけです」
「・・・・・よろしい。少し話をする必要があるようですね」
「の、望むところです!」
ジルとノアの二人は「少しだけ傍を離れます」と許可を貰ってから、どこかに行ってしまった。
「仲の良い二人でも喧嘩をすることがあるんだなぁ」
と、何となく呟いてみるも、ノアの手の柔らかさやジルが抱き着いてきた感覚を思い出してしまい、顔を赤くしてしまうのだった。
ジルとノアの二人がいなくなった事で、周りからの視線が逸れ始めたような気がする。
まだ、チラチラと見てくる人達もいるけど・・・
「ん?」
取り敢えず、二人が帰ってくるまでどこかで時間を潰そうと学園の中を歩いていると、ドスドスと音が聞こえるような歩き方をしている女子生徒がこちらに向かって歩いていた。
前にケント達と解決した件で、怒っている女性に少しだけ苦手意識が出来てしまったため、身構えてしまう。
「・・・っとに、可愛い女の子がいればすぐに声を掛けて・・・・ブツブツ」
薄い茶色い髪を二つに結んで、かなり可愛い女の人なのだけど、怒っている雰囲気とブツブツと独り言を言っている様子でかなり台無しになってしまっている。
そんな、女子生徒が身構えた僕の横を通りすぎて、ホッと息を吐きだそうとした時
「ふぎゃぁ!」
と、変な声と何かが倒れる音が後ろからした。
・・・・・まぁ、原因は分かってはいるのだが
「・・・・大丈夫ですか?」
流石に無視できないと、振り向きながら声を掛けると、案の定女子生徒が盛大にこけていた。
しかも、かなり痛かったのか体を震わせて蹲っていた。
・・・・捲りあがったスカートに気付かないまま
「・・・・・・」
さて、どうしたものか・・・
正直に指摘して、また叩かれるのも嫌だし
だからと言って、気付かない振りをしてもばれるだろうし
「・・・ヒール、とスモーク」
傷を治す回復魔法と相手の視界を覆うスモークの魔法を掛けることにした。
「あれ?回復魔法?しかも何で煙が・・・・ってきゃぁ!」
白い煙の向こうで、女子生徒から恥ずかしそうな悲鳴が聞こえて来た。
どうやら、自分の状況に気付いたみたいだ。
「うぅぅ!恥ずかし過ぎる~!」
どうやら、痛み以外で蹲っているみたいだ。
もう、スモークの魔法を消しってもいいかなと思い、解除しようとしたら
「恥ずかしがってもしょうがない!取り敢えず、助けてくれた人にお礼を言わないと・・・・デリート!」
一瞬にして女子生徒を覆っていた白い煙が消えた。
風の魔法で吹き飛ばす訳でもなく、僕が解除した訳でもなく、突然消えてしまった。
通常なら、感じられる魔法の力が一切感じられないまま、消えてしまったのだ。
「あら?貴方が回復魔法を掛けてくれたのかしら?・・・それに、煙まで・・・」
「あ、はい。すぐ近くで倒れてしまったので・・・それに、まぁあのままだと恥ずかしそうだったので・・・」
女子生徒は先程まで怒っていたのが噓のように、笑顔で話しかけてきて、煙が急に消えた事とその笑顔のギャップに驚いて返事が遅くなってしまう。
「・・・ってことは、貴方は・・・見た?」
「い、一瞬だけ」
少し顔を赤くして、恥ずかしそうにスカートを抑えている女子生徒に少し申し訳ないと思いながら、正直に話す。
「別に責めている訳じゃないのよ?ここは人通りも多いし・・ね?」
責めている訳じゃないと慌てて手を振る女子生徒が周りを見渡すと、気まずそうに視線を逸らす生徒(特に男子生徒)がいた。
「だから、ありがとう。貴方が気を使ってくれなければ、もっと晒し者になっていたところだったわ」
顔を赤くしながらも気丈に振舞おうとしている女子生徒。
「あ、でも、やっぱり恥ずかしい!」
だけど、やっぱり恥ずかしいらしく、両手を顔に当ててしゃがみこんでしまった。
「取り敢えず、場所を変えましょう」
「うぅぅ~、もう人前を歩けない・・・・」
しゃがみ込んでしまった、女子生徒を放り出すこともできず、取り敢えず、人が少ない所に移動することにした。
おまけ
「ジルが対抗心を抱くから」
「だ、だって羨ましかったんだもん」
「羨ましいって、ただ手を握っただけじゃない」
「じゃ、じゃぁ私がご主人様と手を繋いでいても羨ましくないとでも?」
「羨ましいに決まっているでしょ」
「ほら」
「・・・・コホン。それで、他のチームの情報は手に入れたのですか?」
「即答した癖に・・・それは勿論、今年はご主人様と一緒ですからね。手を抜くことなんて出来ません」
「・・・先ほど、ご主人様を馬鹿にした人達も加えましょう」
「それなら、こっちの紙に・・・って、本来ならノアの方がこういう事得意じゃない」
「ジルもできるからいいでしょ?」
「出来るけど・・・なんか納得いかない」
「じゃんけんに負けるのが悪い」
「・・・今度は勝ちます!ですけど、今は」
「えぇ、旦那様の話ではあと数日は向こうにいる筈なのですが・・・」
「あの人だったから良かったのか、悪かったのか・・・」
「ご主人様的には良かったのかもしれません。もう片方の人は危険すぎる」
「確かに、でも私達的にはちょっと複雑かも・・・」
「旦那様の依頼のプラス一人の存在・・・・取り敢えずは様子見しかありません」
おまけ2
「いい加減にして下さい!」
「そんなに怒る事無いだろ?な?それだけの実力があるんだから俺のチームに入れば・・・」
「入るつもりはないって言っているじゃないですか!」
「・・・後悔することになるぞ?何たって俺は」
「知っていますし、何度も同じことを聞きました。それでも、貴方のチームには入りません!」
「・・・・勇者様」
「チッ!分かった」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・また、明日も来るぞ?」
「勘弁して欲しい。チッタさんも少しは何か言ってくださいよ」
「嫌だ。早く主の所に帰りたい」
「私も帰りたい・・・バイトの途中だったのに・・・」
「創造主達はすぐに帰ってしまったかな・・・私達を置いて」
「皆から話は聞いてはいたけど、自由過ぎる人だよね」
「主もいつも振り回されていた」
「あ!なんだか想像ができる」
「・・・やっと笑ったな。男の事で不機嫌になり、主の事で笑顔になるとは・・・」
「ッ!仕方ないじゃないの。チッタさんと共通の知り合いで異性はアルトしかいないし・・・」
「・・・成程、創造主はこれを狙って・・・」
「何か言いました?」
「いや、何も・・・それはそうと早く寝る準備をしよう。明日も早いぞ」
「そうなんですよね・・・何であの人は夜に人の部屋にくるのでしょうね」
「異世界ではそれが常識なのではないか?」
「それは違うぞ!あいつが変態のだけだ!」
「取り敢えず、私達の話を盗み聞きしている創造主も変態だという事は理解した」
「やっべしまった!他の異世界人のフォローの為にと思っただけなのに!」
「・・・・本当に不思議な人だよね。私達を置いて行きながら、いつでもフォローできるように見守っている」
「関心することはない。創造主はただの馬鹿だ。この一言で十分」
「酷いっ!」
「・・・・取り敢えず、盗み聞きを止めて下さい。リース達に言いますよ?」
「それは勘弁してください!」
「即答だったね」
「ジャンピング土下座と言うものをイメージで流し込められたが・・・」
「あれが英雄なんですね・・・」




