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師匠!何してんですか!?  作者: 宇井琉尊
第二章 学園編(二人の少女)
20/86

集合そして

学校なんて通ったことがなかったし、いきなり一年課程を飛ばしてしまって大丈夫かと思っていたけど


「・・・まぁ、なんとかなるかな」


 一般教養的な授業、特にこの大陸の歴史なんかは学ばないといけないが、

授業の流れや内容の基礎を作ったのは師匠達なのだ。

今となって気付いたが、昔修行の合間で師匠達から教えて貰っていた事が大半渡された教科書に書かれていた。

 忘れている事はあるが、授業を聞いていると思い出してくる事が沢山あった。

冒険科特有な授業に関しては、二年間それこそ死に物狂いで旅をしていた経験があるので、教師の言う事に共感を覚えたり、首を傾げる事もあったがなんとかなるだろうと思う。


「ってことで、屋上の行きた方を教えてもらえませんか?」

「確かに前の休憩時間に約束したから構わないけど・・・なんか急だね」


クーナがたはははと笑いながら手を差し出して来た。

まぁ確かに、授業の終わりと同時に勢いよく振り向かれればそういう反応をしてしまう事もあるかもしれない。

でも、クーナが差し出した手の意味が分からない。


「・・・・?」

「なんで悲しそうな顔で財布を取り出そうとしてるかな・・・ほら、行くよ捕まる前に!」

「うわぁ!」


クーナは僕の手を取って素早く教室を出ようとする。


「あ、クーナ卑怯よ!」

「抜けがけだ!」


その行動に教室にいた数人が声を上げながら迫ってくる。


「皆、人気があるねぇ・・本人に直接聞けばいいのに」

「それが出来れば苦労はしないって」

「・・・皆普通の女の子なのに」


 その言葉にクーナは何も答えなかったけど、少しだけ笑ったような気がした。

なぜ、このようにみんなから迫られているのかと言うと、朝の登校風景を見ていた、若しくは噂で聞いた、リース達の中にいた唯一の男性が僕だと気づかれたからだ。

 別に隠していく事ではないから、何もしていなかったが発見されるのが物凄く早かった。

休憩時間の間だけでも、かなりの質問攻めにあっていたのだ。


 まぁ僕のことじゃなくてリース達の事を聞かれた為、本人に聞いてください。って断ってはいるが

そんな様子を隣で見たていたクーナは、昼に屋上に行かないといけないけとを告げると、何やら分かったような顔をしていたのだ。


「あの場で答えても良いけど、すぐに行き先はバレるわよ。ある程度撒いてから目的地に向かうわよ」

「ははは、学園って面白い所だね」

「・・・貴方は大物になるわね」


 教室だけではなく、廊下からも僕を見つけた人が追いかけて来たりと、必死になって走っていると何故か可笑しくなって、二人でクスクス笑いながら逃げていた。



その重そうな扉が音を立てて開くと同時に素早く通って、そのまま背中で扉を閉めるように座り込む。


「はぁはぁはぁ」

「さ、流石に疲れたわね」

「と、取り敢えず、いい運動になったけど・・・毎日は無理かな・・」


 追いかけっこはすぐに終わるかと思ったけど、数人は最後まで粘って追いかけてきた。

多分、朝言っていた中庭にリース達が来ていない事に気付いた人達が、唯一居場所を知っているだろう僕に問い詰めようとしたのだろう

それでも、なんとか振り切って此処まで辿り着いたけど


「・・道覚えてないよ・・」

「あはは、いろんな所を通ったからね」


そんな風にクーナと息を整えながら話していると


「だ、大丈夫ですかご主人様」

「これで汗を拭いてくださいませ。クーナ様もどうぞ」


 ジルとノアが駆け寄ってきて、それぞれタオルを差し出してくれる。


「ありがとう。それにしても皆凄いね。どうやって来たの?」


 タオルで顔を拭いて顔を上げると、リース達が全員揃っていて、シェルムとファミルも一緒に苦笑しながらこちらを見ていた。


「慕ってくれているのか、興味本位か知りませんけど、こういう事も含めて一年間過ごしてきたのよ。多少なり隠れるのが上手くなっても不思議じゃないでしょ?」


なる程、途中から追いかけて来る人が増えたのは、リース達を見失った人達もいたからか


「ところで、アルお兄様の隣にいる方は?」

「えっと、この人は」

「そちらの方はクーナ様です」


僕がクーナの事を説明しようとしたら、ノアがクーナを立たせながら皆に説明しようとする


「王都より離れた所に産まれ、兄妹は四人。兄一人に妹二人。両親ともに健在であるも決して裕福に恵まれている環境ではありせん。両親と兄の負担を減らす為に冒険者となろうとしましたが、実力が伴わなく一度瀕死の状態へ。それでも、諦めず喫茶店でバイトをしながらお金を集め学園に通われています。学園の中で・・」

「ちょ、ちょっとストップ!」

「何か?」

「何か?っじゃないでしょ!なんでそんな事知っているのよ!」

「これはクーナ様だけではありません。この学園の全ての情報を私達は知っているのです。・・・私達の科の課題で必要な物なのですから」

「それは・・そうだけど・・」


ノアは家とは違うメイド服を指している。その制服が、ジルとノアが属している奉仕科の制服なのだろう


「だけど、それを人に話すのはダメだと思うの」

「僕もそう思うけど・・・仲間に入れたいの?」


 ジルとノアは奉仕科で学んでいるが、実際は小さい頃から親に教えられてきており、僕や師匠のお世話を実践できている。僕はまだしも、師匠のお世話をすると世間に出してはいけない情報とかも見る機会がある。だから、情報をノアが何も考えずに僕達に聞かせる筈がないのだ。


「ノア。それは私達の仕事ですよ」

「申し訳ありません」


 リースが皆を代表してか一歩前にでると、ノアは頭を下げてクーナの後ろに下がる。

クーナは少し不機嫌そうな顔をしてリースをみている。

確かに、個人の情報を勝手にバラされていい気持ちはしないだろうけど


「ごめんなさいね。私が謝っても仕方がないのかも知れないけど。ただ、誤解しないで下さいね。ノアは本当は良い子なのよ?ただ、主人の事になるとちょっと手段を選ばないことがあるけど・・・要するに、貴女の秘密をしってしまったから、私達の秘密も教えましょう。ってことにしたかったのよその子は」

「なんで私に」

「アルトを助けてくれたからじゃダメかしら?質問攻めにされそうになったアルトを庇って、混乱が起こらないように立ち回って、最終的には此処まで手を引っ張って来た。とある理由でアルトを見張りたいのだけど、残念ながら私達同じクラスじゃない。だから、アルトと同じクラスの人を何人か引き入れたい私達にとっては貴女はとても都合が良いって言ったら怒るかしら?」

「それはつまり貴女達の下につけと?」

「・・・」


 僕が流石に言い返そうとしたらリース達がこちらを見て、何もするなと訴えてくる。

その視線があまりにも真剣だったから開きかけた口を閉ざしてしまう。


「・・・いいえ、私達は英雄の子供として有名だけど地位は平民と変わらない。シェルム達は違うけど私と貴女の間に上も下も無い・・・・だから」


そう言って、リースはクーナに手を差し出す


「友達になりましょう。さっき言ったみたいに理由はあるけど、貴女と友達になりたいという気持ちも本当よ?」

「・・結構腹黒いね。この状況で私が断れるとも?」


 確かに、ここにはクーナの味方は誰もいない。僕はクーナを庇うつもりではいるけど、クーナからすれば敵って事になるのだろうか


「ふふ、この手を取ってくれたら喜んで、この手を払ったら何が何でも手に入れてあげる」


ゾクリと


リースの目が獲物を捕らえるような状態になったのをみて背筋が凍るような気がした。


「自惚れじゃなければ、私達の仲に入れて欲しい人、私達に入ってきて欲しい人は沢山いるの。でも、私達の方から入って欲しいと言う人はかなり少ないの。だから・・」

「だから・・・・」


ゴクリと誰かが喉を鳴らした音がした気がした。


「どちらにしても、覚悟してね?」

「・・・・・・・」


朝通学の時に見せた誰もが惚けるような笑顔ではなく、一人の少女としての笑顔でパチリとウインクしたリースの行動にクーナは目をぱちくりして動作を止めてしまった。


「・・・噂も宛にならないね・・・こんなお転婆な人だなんて」

「言ったでしょ?皆普通の女の子だって」

「確かに、勝手に貴女達の姿を想像していたのは認めるわ」


クーナはリースの手を握り締めて


「クーナよ。私に何ができるか分からないけどよろしくお願いするわね」

「リースです。こちらこそよろしくお願いします」


それを機に、それぞれ自己紹介と握手をしていく。

僕の所にも二人来て


「先日はちゃんと自己紹介もせずに申し訳ありません。英雄が一人聖女の娘でシェルムと申します」

「私も改めて、英雄の一人騎士の娘でファミルと言う」

「じゃぁ僕も改めて、アルトと言います。リース達共々よろしくお願いします」


普通に二人と握手をすると、二人は少し驚いたように握手した手をニギニギしている。


「??」

「ああ、いや、何でもない。少し驚いただけだ」


何の事か分からず首を傾げているとノアが近づいてきた。


「リース様達で麻痺しているのかも知れないですが、本来は英雄の子供と言うだけで一線を引かれるのです。そしてこのお二人様は英雄の子供だけではなく、貴族の地位も持っています。本来なら、私達平民にとっては気軽に声を掛けることができない人達なのです」

「あぁ~!なる程。でもリース達の友達なんでしょ?」

「私達を含めて光栄な事です」


この二人がここにいるという事は、リース達が認めた人達なのだ。リース達は同じ英雄の子供としての境遇だけで仲良くなる人達ではないのだ


「僕は・・・」

「もうだいぶ時間が過ぎています。このままだと昼食を食べる時間がありません。シェルム様その秘密の場所と言う所をはここから近いのですか?」


 僕の昔の事を話そうとしたらノアがそれを遮るようにシェルムに声を掛けた。

シェルムはその行動に少し驚いた様子であったが、制服の中から銀色の鍵を取り出した。


「そうですね、お話はあちらでもできますし、行きましょうか」


そういうとシェルムの目の前に銀色の扉が現れた。

リース達は急に扉が出てきたことに凄く驚いている感じだった。


「やっぱり、少し目立つね」


その声は、シェルムにしか聞こえなかった様で、シェルムは少し恥ずかしそうに顔を背けて扉の中に入って行った。



おまけ


「アルトとシェルム様達は扉の中に入って行ったけど、その前に聞いて良いかな?」

「どうかしましたかクーナさん」

「さんはいらない。友達になったんでしょう?」

「まぁ癖と言いますか。お父様はそういう事には厳しかったので・・・多分、すぐに慣れると思いま・・思うけど」

「それでどうかしたの?」

「いや、単純にアルトとどういった関係なのかと」

「「「「「嫁!」」」」」

「「主従関係です」」

「あぁ・・・うん。分かった。色々と・・」

「どうしたの?シェルムさんとファミルさんも待ってるよ」

「あ、丁度いい所に・・アルトとリース達ってどういう関係?」

「幼馴染」

「・・・・・・・・」

「どうかしましたか?」

「いえ、すぐに行くから待ってて」

「分かりました」

「あ、それと丁寧語禁止ね」

「・・・努力します」

「ほら、アルト行ったよ?そんな笑顔を貼り付けないで」

「うぅぅ・・」

「顔は笑っているのに、泣き声が聞こえる・・・」

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