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師匠!何してんですか!?  作者: 宇井琉尊
第二章 学園編(二人の少女)
19/86

今日から学園生

 冒険者として二年間旅をしていると、夜間の警戒や朝早く起きて移動するという事に慣れていく。

ヴォルやミンクが加わってからは出来るだけ宿に泊まる事を心掛けていたが、どうしても野営をする必要も出てくる。

だから、懐かしい自分の部屋でゆっくりと寝ていたとしてもその癖が抜けずに自然と朝早く起きてしまうのだ。

なのに


「お、お早う御座います。ご主人様」

「お早う御座います、ご主人様。今日も天気は良く、過ごしやすい日になると思われます」


人の気配がして目を開けると、ジルとノアが揃って挨拶をしてくる。


「・・・・おはよう・・・いつも言っているけど・・」

「で、では、食事の準備をしてまいりますので・・・」

「準備が終わられましたらお迎えにまいりますので」


 布団から起き上がり二人に少し小言を言おうとすると、二人は揃ってお辞儀をして部屋を出て行く。


「・・・はぁ~」


決して嫌ではないが、溜息をついてしまう。

二人には、自分で起きれるからとそういう事はしなくて良いと昔から言ってはいるのだけど、それが私達の仕事ですと止めてくれないのだ。

 初めは着替えまで手伝おうとしていた二人だったけど、何とか説得してそれだけは勘弁して貰っている。


・・・二人共、まだ諦めてなくて隙があれば手伝おうとしてくれるけど・・


 さっきも言ったが、決して嫌なことではない。

起こして貰えるのも、何だかんだ気を使って貰えるのも凄く懐かしくて、とても嬉しい事なのだが


「・・・・もう少し考えて欲しい」


と思う。

ジルとノアの二人は昔からの習慣としてしているのかもしれないが、僕にとっては二年ぶりで、しかも、昔より綺麗に可愛くなった二人なのだ、

昔より男と女の関係に詳しくなった今となっていは嬉しい反面、ドキドキして朝から落ち着かなくなってしまうのだ。


「・・・取り敢えず、着替えよう」


ベッドからやっと落ち着いた身体を起こして、さっき二人が準備したであろう近くに置いてあった制服を手に取り着替える事にする。


「本当にもう少し色々考えて欲しい」


朝の男の身体は色々危険なのだ・・・・

その事をもう少し二人には配慮して貰いたいと思う。



 僕が旅に出た二年前までは、当たり前であった朝食事風景が今となっては少し変わってしまった。

昔は、師匠とアマルさん、リースと僕の四人で食べていたのだが(ジルとノアは昔は近所に住んでいて朝食後~夕食までの間お世話をしてくれていた)

 今は、リースと僕。ノゾムおじさんの三人娘であるサヤとミヤとアヤ。エルフのルックさんの娘のマリル。そして、今まで一緒に旅をしてきたナナシさん、ヴォル、ミンク。

あとジルとノアを含めた9人が揃っていた。


 僕がここに帰ってくるまでは、各自の家で食べていたみたいだけど、何故かこうなってしまっていたのだ。

 リースとマリルはお互いに喋りながら、ミヤとアヤは少し眠そうにしているサヤの面倒を見ながら、元気よく食べるヴォルと少しずつ食べるミンクをナナシさんが見守りながら、ジルとノアは僕達の世話をしながら、一緒に朝食を食べている。少し騒がしいけど、これはこれでいいもんだと最近では思うようになってきた。


「どうかされましたか?」

「いや、何だか楽しいなっと思ってね」

「・・そうですね」


 僕に声を掛けて来たノアは、少しだけ周りを見渡して少しだけ笑顔で頷いてくれた。


「ご主人様が帰って来られるまでは、もう少し皆様落ち着かれていたのですが・・・」

「コラ!もう少し落ち着いて食べるっす!人の物まで欲しがらない!」

「ナ、ナナシ様。大丈夫ですおかわりは沢山ありますから」

「私の分もあるよ?朝はあまり食欲がなくて・・・」

「ダメっす。朝はしっかり食べるっす。大きくなれないっすよ?」

「・・・何でナナシさんは私の胸を指差すのですか」

「アヤは胸は大きいからね・・・あぁ!サヤお姉さま!眠いのは分かりますが、もう少ししっかりとして下さい!」

「・・・・・眠い」

「・・・お姉ちゃん頑張って食べるよ」

「指差してあれっすけど・・・あの歳であれとは・・私でも無理っすね・・でも!健康には朝ご飯はとっても重要っすよ」

「ジルお姉ちゃんおかわり!」

「は、早いですねヴォル様」

「だって、美味しいもん」


 皆が騒がしくなったていうよりも、ナナシさんやヴォル達が掻き回しているだけのような気がするけど・・

まぁ暗い雰囲気よりは全然マシだろうと思うことにした


「それで、今日から学園に通う事になるんだけど・・・」

「アルト君一人で大丈夫?」


 ニコニコとそんな風景を見ていたリースとマリルが少し心配そうな表情で声をかけてくる。

一応揃って学園に通うことになるが、リース達とは教室が違う。

皆から話を聞くと、ある程度の実力によってどこの教室に所属するのか決まるらしい。

リース達は上位クラス、一方僕は中位クラスとなっている。


「大丈夫だよ」

「・・・それなら良いけど」


 何をそこまで心配するのか疑問ではあるが、いつまでも皆に守って貰うつもりはない。

昔から、実力は低いのに師匠の無茶な修行に巻き込まれている僕をいつも見ていた皆は助けてくれたけど

流石に成人を迎えて数年経つと、そんな自分が恥ずかしく感じてしまう。

僕より実力はあるけど皆女性なのだ。

しかも、気になる子がいる手前、いつまでも守って貰う立場でいられない。

師匠の修行も再開しているし、学園に通う事で今より成長できると思う。

そんな期待と覚悟を決めて朝食を掻き込む事にした。



朝食を食べ終え、ナナシさん達に見送られ学園に向かう道を皆で歩いている


「・・・取り敢えず、お昼になったら中庭に集まりましょう」


リース達は普通に歩き、普通に会話をしているけど僕にはそんな事できないでいた。


「どうかしましたか?」

「・・・どうかしたっていうか・・・・リース達はいつもこんな風に学園に通っているの?」

「いつもよりは少し早い時間ですが、概ねこんな感じですね」

「・・・・なる程」


リースから目を離してぐるりと周りを見てみる。

すると

人、人、人、人・・・・リースや僕と同じ制服を着ているから学園生だという事は分かるが、その人達が僕達をぐるりと囲っている。

目の前に歩いている学園生すら、後ろのリース達に気付くと慌てて道を開けて、その人の壁に加わって行く。


「うわぁ~!いつもより時間早くない?」

「だね。でもそのお陰で朝から見ることができたよ!」

「いつ見ても綺麗だね・・・同じ歳だとは思えないよ・・・特にあの胸」


そんな会話があちらこちらから聞こえてくる。

会話の内容としては、リース達を褒め称える言葉が大半だったが


「それで、真ん中にいる男は誰だ?」

「俺も見た事がないな・・」


 学園生達が注目しているリース達の傍・・っていうか、真ん中を歩かされている僕の事を怪しむ人達がいる。


「アルトもそれで良いですか?」

「うん・・・昼になったら中庭だね」


 僕がそう言うと、ならば良しっという感じで笑顔を見せるリースに周りの学園生達は目を奪われてしまった様子であった。

 その様子をみて、僕はリース達がただ英雄の子供として見られている訳ではなく、ちゃんと一人の人として見られている事を感じた。

 徐々に増えて行く人混みだけど、リース達にとってはいつもの光景なのか気にせずに歩いていく。

人から見られる好奇の視線に耐えられなく下を向いてしまう。

僕はこの光景が毎朝続くのかと思うと誰にも気付かれないようにそっと溜息をついた。

それ以上の出来事はなかったけど、学園に通う前に疲れるとは思っていなかった。

学園に着いたら周りの学園生達はバラバラと離れて行く。


「少し落ち着きましたか?」

「そうですね・・・もう少しは様子を見ましょうか」

「・・ちょっと疲れる」

「サヤお姉様あとちょっと頑張って下さい」

「・・・・また胸を指さされた」

「ア、アヤ様!落ち込まないで下さい」

「私達からすれば羨ましい限りではありますが・・・特に男性の方は・・」


ノアがそう呟いた瞬間全員の視線がこちらを向いた。

特に、落ち込んでいたアヤは期待するかのような目をしていた


「と、ところで、やっぱり皆もあれには慣れないの・・かな・・」


 周りは女性しかいないのに男の僕に聞かれても答えられるはずがない。

特に女性特有な場所に手を当てている皆に対して答えられる訳がなかった。


因みに

アヤ>リース、マリル>ジル、ノア、ナナシ>ミヤ>サヤ>ミンク

らしい・・・何がとは言わないが、ナナシさんがこそっと教えてくれた


「逃げたね・・・まぁ良いですけど」

「ハハハハ・・・勘弁して下さい」


ジト目で見てくる皆から目を逸らしてしまう。


「話を戻しますが、流石に毎朝あれでは私達も気が滅入ってしまいますよ」

「一応、私達は英雄の子供として見られていますからね・・・嫌な顔なんてできないですよ」


己の立場と役割をしっかりと理解して、ああいう行動を取る。

取ってしまう、あるいは取らなければならない

ではなく

自分からそういう行動を取る。

それが、リース達が英雄の子供としての立場の取り方。


 小さい頃は、不安や重みに潰れそうになって笑顔が曇っていたけど

いつの間にかそう言う考えになっており、気が楽になったのか自然の笑顔に戻る事ができていた。

そう思うと、前日に会ったシェルムとファミルの姿を思い出してしまう。

何処か二人共リース達と似た境遇のような気がするのだ。


「じゃぁ、僕も行くから」

「分かりました。なにか分からない事があれば私達に相談して下さい」

「うん、頼りにしてるよ」


学んでいる科が違う、ジルとノア

実力の関係で教室が違う、リース達から離れて自分の教室に向かうことにする。


「あっ、ちょっと待ってください」


そんな僕に慌ててリースが折りたたまれた小さな紙を渡してきた。


「昼までに一人の時に見てください。」


リース達はそう言って僕から離れて行く。

周りの人達の視線がリース達に向けられた瞬間に素早く渡された紙の内容を見る。


『お昼は屋上に集合』


・・・人気者は大変らしい


 そんな事を思いながら歩き始めると、ちらほらと僕に視線を向けて来る人が多くなってきた。

こんな視線にも慣れないといけないのかと苦笑して、ふと大切な事を思い出してしまった。


「屋上はどうやって行けば・・・」


まぁなんとかなるかな?

と思い、教室に向かうことにした。



教室に入ると既に席についていた人から注目されるのが分かった。


「今日から編入生だ」

「アルトと言います。よろしくお願いします」


元冒険者だという教師に促されて自己紹介をする。

反応はいまいちであったが、数人の人はこそこそと話し合っていた。

多分、朝の登校風景を見ていた人達だろう


「君の席はあそこだ」

「はい、分かりました」


 教室の中には机が並んでいたが、席についている人は女性が多いような気がした。

師匠達曰く


「男は感覚性を、女は確実性を大事にするんだ」


と、よく分からない事を言っていた。

要するに、男の冒険者は実践主義で女の冒険者は安全性を取る、と言うことみたいだ。

この学園は成人した人が必ず通う必要はない。

学園で学んでから頑張るのも、実戦を通して学んでいくのも本人の自由だ。

ただ、学園を卒業した人達の評価が高い為、一種のステータスになっているのも事実みたいである。


「よろしくお願いします・・・・妖精さんと呼べばいいですか?」

「出来れば勘弁して貰えるかな」


そう言って、苦笑いしながら手を出して来た女子生徒は


「クーナって言うの。よろしくね」


ファミルさんと一緒に入った喫茶店の店員さんだった。


「改めて、アルトです。よろしくお願いします」


軽くクーナと握手してから席に座る。


「では・・」


僕が座るのを確認してから、教師が授業を始める。

こうして僕の初めての授業が始まったのだ。



おまけ


「あ、アルトに屋上の場所教えていない」

「そう言えば忘れてましたね」

「・・・心配ない」

「人に聞いて来る事は確実なのですが・・・」

「この学園は女子生徒が多いですから」

「・・・ちょっと心配」

「ははは、まぁ大丈夫でしょう。それで、二人も大丈夫?」

「えぇ、大丈夫ですよ。案内を途中で放り出してしまって、会いづらいですが」

「私も大丈夫だ。ただ、シェルムと同様に少し会いづらいが」

「二人共大丈夫ですよ。アルト君はそんな事あまり気にしませんから」

「そうかもしれませんね」

「所で、シェルムに言われたように屋上に集まる事になったんだけど、昼食を食べるにはちょっと」

「確かに、風は強いし、椅子とかもないから」

「ふふ、それは後からのお楽しみです。多分、いつもの場所よりもゆっくりでき・・・るかは自信がないですが、良い所ですよ」

「その含みがある言い方が怪しんだけど?」

「秘密です」

更新が遅いけど、最後まで書き続けます。

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