第15話 彰彦を探せ
今さらながら、「モスピグレット」が創り出したゲーム世界はスゴイ!
冷静なつもりでも、心に何か抱えて現実逃避しかかっていると、
現実とごっちゃになって混乱してしまう。
渋谷界隈にたむろしているプレイヤーたちは、
それぞれ思い思いの人間離れしたキャラクターになりきっているだけで、
生態に関して言えば‥‥
現実世界の渋谷界隈でよく見る人たちと大差ないように思える。
ハチ公前に集まったのは、棚橋ひとりだけではなかった。
なぜか、連絡していないのに、他の3人の姿もあった。
「蓮さん、鹿さん。ジンさんまで、どうしたんですか? 」
私は、驚きとうれしさを隠しきれずに思わずジャンプしてしまった。
現実社会でそれをしたら、ひかれてしまうことも、
ゲームの中では、平気でしてしまうから
バーチャルの影響力はスゴイ!
「彰彦君のことを知る人がいるとは限らない。
どうやって、手がかりを探すつもりなんだい? 」
鹿さんが責めるように言った。
「渋谷にいる音楽好きのグループにあたれば、
何かわかるかなと簡単に思いついたのですが、
そう言われると自信がなくなります」
私が正直に言った。
「それは無理があるかもしれない。
何せ、彰彦が、歌手を目指していたことを
家族ですら知らなかったくらいだ。
ここに、仲間がいるとは思えない」
ジンさんが言った。
「家族やともだちに話せない事でも、
顔も名前も知らない人になら、
平気でさらけ出せることもありますよ」
棚橋がやんわりと反論した。
「もし、ここに、彰彦が出入りしていたとしたら、
私と会っていてもふしぎではない。
私は、あいつはここにいないと思う」
ジンさんが断言した。
「ちょっと、待ってください。
わざわざ、会いたくない人に会おうとしますか?
顔を会わせないようするのでは? 」
蓮さんがすかさず反論した。
(蓮さんにも、何か心あたりがあるのだろうか? )
やけに、反応が早いと感じた。
「現実世界でさけている相手と、
たまたま、はち会うことって、
ゲーム内で時々あるんですよ。僕も昔、仲たがいした奴と
思われるプレイヤーに遭遇したことがあります」
鹿さんが冷静に言った。
鹿さんに、苦手な相手がいると知って意外だと思った。
「そんな時、勘違いではないかと探りを入れたりしますよね」
蓮さんが、鹿さんに同意した。
「別人だとわかった瞬間、その反動で、距離を縮めようとして、
相手を引かせたかもと思うこともある‥‥ 」
鹿さんが告げた。
(この2人、案外、気が合うのかもしれない)
「彰彦さんみたいな経験をした人が、
逃げ込む所と言えばどこでしょうか? 」
私が、みんなに向かって訊ねた。
「案外、自分のイメージとはかけ離れた場所に
いるのではないですかね」
棚橋が冷静に告げた。
(もしかしたら、自分と重ね合わせていたりして‥‥ )
「彰彦の性格を考えると、世間の評価が気になって
エゴリサーチする感覚で、
HIRAGIのことを話題にしている連中に
あえて接近することも考えられる」
ジンさんが、さっきはいないと言っていたのに
急に、いる前提で話し出した。
「モスピグレットのゲーム内は、
ひいらぎの聖地でもあり、
アンチHIRAGIがいかにも、いそうですからね」
棚橋がズバリ告げた。
相談した結果、ひいらぎのライブイベントが開催される
特設ステージ周辺やスクランブル交差点周辺を
手分けしてまわって、彰彦さん扮するプレイヤーを捜すことになった。
ただ、やみくもに捜すのではない。
ジンさんの情報から、彰彦さんは、イラストを描くことが好きで、
美意識が高いことから、キャラクターにもこだわりがある
というヒントを参考にすることにした。
つまり、既存のキャラクターから選択しておらず、
自分で作成したオリジナルキャラクターである
可能性が高いということになる。




