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第19話 Aグループ予選


「なんだ、悪霊の段階を聞いてないの?」


 悪霊の段階? 初めて聞く言葉だ。悪霊は悪霊じゃないのかな。

 菖蒲が聞いた事がないと答え、乙矢も頷いた。


「はぁ〜、紅蓮のやつ、ちゃんと教えときなさいよね」


 沙月は呆れて溜め息を吐いて、真樹奈は信じられないという顔をしている。


「悪霊って進化するの、と言うより成長かな。まず第一段階って言うのが精神干渉と呼ばれていて、夢にでたり、悪寒を感じさせて心を弱らせて取り憑いたりするやつ」


 ああ、一般的な悪霊のイメージ通りのやつか。


「第二段階ってのはポルターガイストを起こしたりするやつで、間接干渉って呼ばれてる」


 ポルターガイストか、そういえば悪霊の一種だって聞いたな。


「次に第三段階。あなた達が相手したやつね。これは悪霊が肉体や物体に物理的にダメージを与えたりしてくるの」


 確かにあの悪霊は釘バットで殴ってきたし吹っ飛ばされたっけな。


「そして第三段階、直接干渉型はある程度熟練した術者が相手しないと危険なレベルなのよ」


 えっ? 確かに苦戦したし危なかったけど倒せたんだけどな。

 乙矢は驚いた顔をした。


「驚いた顔してるけど事実よ。次に第四段階、能力干渉型ってやつなんだけど、ここまでくると桁違いね『力』を使うし、特に強力なのは術を自在に操るわよ」


 むぅ、話に聞くと恐ろしげだが、頑張れば倒せそうなんだけどな。


「戦いたそうな顔しない! 本当に危険なレベルなんだからね。はぁ、まぁいいわ。次が最終段階、通称肉体顕現型。まぁ、滅多にこんなのは出てこないんだけどね。このレベルはそうね、道真公とか将門公の事。天災クラスの化け物、国家転覆とか普通にする連中だからまさに桁違いよ」


 将門公レベルて……まぁいいや、出会う事もないだろうしね。

 乙矢は、真樹奈や天音に呆れられつつもとりあえず今日はこれで解放された。

 その後、特に疲れてはいなかったがお風呂からあがるとすぐに真樹奈が眠ってしまったので乙矢達も寝ることにした。



 悪霊退治と言う名のお遊びから明けて翌日、朝食を終えた受講生達は広場に集まっていた。

 乙矢が周りを見渡すと明らかに見物人らしき人達がいた。


「おはよ〜、今日は皆さんの実力を計るためにトーナメント形式で試合をしてもらいます」


 乙矢がこの見物人は何だろうと考えていると、唐突に沙月が現れてワケのわからない事を言い出した。試合? 沙月は滅茶苦茶楽しそうに笑っている。


「例年は講習の最後の方にするんだけど、自分の現在の実力を皆に知ってもらうために今日、試合をしてもらいます。」


 何か知んないけど試合か、やる気が出てくるなぁ。

 乙矢と菖蒲はやる気がありそうだが、天音はとても嫌そうにしている。


「とりあえず、八人ごとに四グループに別れてもらいます。トーナメント表は作ってるから前に見にきてね。A〜DまででAが右端、BCDとそれに続いて集まってね」


 とりあえず乙矢達もトーナメント表を見に行った。うまい具合に乙矢がAグループ、菖蒲がBグループ、天音がCグループ、真樹奈がDグループと全員ばらけた。

 乙矢がなにか怪しいなと沙月を見るとウィンクされた。

 絶対仕組んでるな。


「え〜、各グループの予選もAから順に行うからしっかり見るようにね。見るのも実力向上の手段の一つよ」


 見とり稽古なら乙矢も何度かしたことがある。そんな事を考えながら乙矢達はそれぞれのグループに向かった


 −−Aグループ−−


 私の試合が最初か。まぁ、一丁やりますか!

 乙矢が気合いを入れて指定された場所に行くと対戦相手は既に待っていた。ひょろ長いもやしみたいな体型のやつだ。

 楽勝じゃね? と乙矢が観客に目をやると菖蒲と目があった。

 おぉ、気合いたっぷりって目をしている。


「それじゃ、始めるよ。構えて……、始め!」


 沙月の合図と共に相手は杖を構えた。乙矢は最初の試合だからと、様子見に素手で構え、相手がくるのを待った。

 ……少し見合っているとしびれを切らしたもやしが杖を振りかぶって乙矢に向かって行ったが…… 

 遅い! 向かってくる速さも、武器を振り下ろす速さも乙矢にとっては遅すぎる。

 拍子抜けする程の攻撃だが、乙矢は一歩左にかわして相手が武器を振り下ろしきった所で顎に『力』を纏ったパンチを一発! 反応する事も出来なかった相手はそれだけで昏倒した。

 えっ? 弱すぎない?

 その後、乙矢は皆の所に戻った。


「瞬殺でしたね」


「当たり前じゃん、びっくりするほど弱かったもん」


 試合そっちのけで菖蒲達とワイワイ話をしていると再び乙矢の試合が始まった。

 第一試合と同じように広場の真ん中に行くと、今度の相手は自分の顔面だけを大事にしてそうな、ナルシストっぽい優男だった。

 優男は既に刀を構えているが、今回も楽勝かな。


「それじゃ第二試合……、始め!」


 号令と共に乙矢はギアを構えた。

 優男はだらんと刀を下げて術を放った。ただ『力』を固めただけの弾をギアで弾いて一気に距離を詰めた乙矢はギアを一振り……、バックステップでそれをかわした優男は前進して上段から刀を振り下ろした。乙矢はギアを持ち上げて刀を防ぎ、蹴りを叩き込んで距離を離した。

 苦痛に顔をしかめながら優男は乙矢の胴を狙って斬り掛かってきたが、その斬撃を彼女は障壁で防ぎ、ギアを肩に叩き込んだ。


「があぁぁぁぁっ」


 優男は左肩を押さえて痛みに悶えている。あれは完全に砕けている。


「終了! 治癒班、その子任せたわよ」


 広場の周りに待機していた人達が優男の肩に『力』を流すと落ち着き始めた。

 へぇ、あんな事も出来るんだ。


「思いっきり叩き込んだわね。腕切り落とすつもり?」


 殺すのは駄目だと沙月が乙矢に言っている。


「大丈夫ですよ。ギア……、この剣なんですけど、切れ味とかないですから。『力』を使わなきゃ何にも切れないですもん」


 乙矢の言葉を聞いて沙月は呆れたように、もういいから戻れと言ったので彼女は皆の所に戻った。

 優男を運び出して次の試合が始まったが、乙矢は全く違う事を考えていた。

 あの程度で喚くなんて優男には術者は向いてないんじゃないかな? そもそも、遠山さんだってこれくらい予期してて当然の筈なのにな。

 そんな事を乙矢が考えていると試合が終わっていて、最終試合が始まるから来いと言われた。

 今度の乙矢の相手は薙刀を持った凛々しい感じの女の子だ。

 薙刀か、菖蒲との練習でしょっちゅう戦ってるから大丈夫だな。

 乙矢はこの試合にもギアを使う事にした。


「それじゃAグループ最終試合を始めます。両者構えて……始め!」


 号令と同時に彼女達は互いにに武器を構えて見合った。

 この子、菖蒲と同じくらい強そうだな。

 先に相手が動いた。薙刀に炎を纏わせて乙矢に向かってきた。

 乙矢もそれに呼応するようにギアに炎を纏わせて薙刀を受け止めて鍔迫り合った。

 この子凄い力だ……、ヤバい! 押し切られる。

 そう思った時には遅く、乙矢は吹き飛ばされていた。

 なんとか体勢を立て直した乙矢に再び相手が向かってきた。刀身と石突を交互に使って猛攻をかけてくる、それを辛うじてギアで捌ききった乙矢は大きく後ろに飛んで距離を離した。

 うぅ、強いな。

 乙矢はギアに込める『力』を更に大きくして攻撃力をあげて、相手に向かって駆け出した。

 乙矢が振り上げたギアを力ずくで叩きおろした。それを受けた相手の薙刀の柄が中ほどから折れた。

 相手は一瞬驚いた顔をしたがすぐに折れた薙刀を捨てて後ろに下がった。


「まさか折られるなんて思ってなかった。やるわね、あなた」


「そう……、どうでもいいよ。さっさと終わらせるから!」


 言い終わると同時に駆け出してギアを振りかぶった乙矢の鳩尾に衝撃が走った。

 まだ距離はあるのに……、何があった。

 よく見ると相手は両端に錘の付いた鎖、万力鎖を持っていた。あれが乙矢に当たったのだ。

 あまりの痛さにうずくまっていた乙矢は、再び向かってきた錘を転がってかわし、ギアを杖にして立ち上がった。

 まだ痛みはあるけど、やらなきゃ!

 辛うじて立ち上がった乙矢は繰り返し向かってくる錘を捌きながら相手との距離を詰める為に前進するが、相手も彼女に合わせて下がっていく。結局距離を詰められない、完全にジリ貧だ。

 時々乙矢はミスをして錘が体に接触するがなんとか捌き続けていると、不意に身体が軽くなり、錘がスローに見えるようになった。

 この感じ、前にも感じたことがある。

 これならイケる!

 乙矢は錘をかわしながら一気に駆け出した。いきなり動きが良くなった乙矢についてこられずにあたふたしている相手の懐に入り込み−−


−−「フレイムッッナックルッ!」−−


 −−お腹に全力で攻撃を叩き込んだ。

 そのまま相手は地面に倒れ込んだ。


「終了!」


 沙月の合図と共に地面に座り込んだ乙矢のもとへ菖蒲達が駆け寄りった。


「大丈夫ですか?」


「なんとかね」


 息も絶え絶えに答えた乙矢に菖蒲達が賞賛をした。

 それよりも、あの感覚をいつでも引き出せるようにしたいな、なんて乙矢が考えていると、次はBグループの試合だから下がって治療してこいと沙月に言われ、乙矢達は下がっていった。


「良くやったのぅ。まぁ妾達の指導を受けて万が一にも負けは許されんがな」


 戻った乙矢の所に玉藻が来て治療しながらそんな事を言った。

 顔がにやけてるよ。

 すっかり痛みの引いた乙矢は菖蒲の試合を見るために広場に目をやった。





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