第12話「震える背中とわたしが守りたかった場所」
体がゆっくりと元のぬくもりに取り囲まれてよみがえるような微小の安堵の底でただ時間がすいこまれている。
指先から失われてしまったはずの体温がまた少しずつ血流の中に編み直されて内臓をやわらげるあの暖炉のかすかな香木の香りが鼻腔をくする感覚がまたあった。
まつ毛のすきまをあけられれば、真っ暗ではないいつものリリアの天蓋のやわらかい布が目に入ることは明白のようにわかっているがため彼女はゆっくりした呼吸のあとに重たいまぶたを開くしかなかったというわけだ。
あたたかい熱波のあとの視線をみごとに戻すと、自分のベッドのふちにありえないはずの姿勢というものの乱暴なのめり込みで固まっている三人の男たちのすがたが嫌が上にも飛び込んでくる。
「リリア。お前……」
あの屈強で魔獣相手に一度たりとも身のすそを振るわせたことのない父親の分厚すぎる大きな指の先がもろに口をおさえこんだまま、無秩序の中ではせあがる息遣いに顔をしめらせている。
そばにへばりついてシーツをにぎり込んで指を白く変色させていたのはルカとレオであり、彼らの少年としての明るい瞳も冷静での無頓着のすましの皮もまるで通用させていないまま鼻からの赤みを落とさせなかった。
自分が見えない場所にいることを恐れていただけだったリリアが手の中にのこしたあたたかすぎる波というものの効果はすでに、体の不調すら完全にはねのけるただの一つの結果のためにすべてを受け持っていたことにあることを思い出すだけとなってきている。
それは彼女への怒りなどではない。
大切な娘が死にかけていたという事実に対する恐怖と、失わずに済んだという深い安堵。
大きな男の胸を押し潰していた感情が、むせび泣きとなってあふれ出ているのだと、リリアにもはっきりとわかった。
リリアはベッドの中からようやくぬけだした手のごく先だけで、おお男の前腕のところから少しだけ指でのつつきの行動を小さく含ませてやってみた。
『なくならないでくれて、あたたかいままのお父様で、よかった。なくならないのが、家族だから』
孤児として生きてきた過去との決別と、自分の持つ力を使い切って大切な人を守り抜いた誇りが、彼女から乾いた引きつりを完全に消し去っていた。
彼女は本当の家族を自分の手で見出し、抱きしめる勇気とともに、声なき涙を流しながらその温もりに包まれ続けていた。




