50.秘密の提案②
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《お前たちが自分の意思で選んだことならば、ラーグ様は全霊で尊重し、手を貸す。使役界ではなくお前たちに対してじゃ》
《そも、ラーグ様は使役界が嫌いになったわけではなく、興味がなくなっただけじゃからのう。再び関わることになろうと、嬉しくもないが苦しくもない、何も感じぬであろう》
《むしろお前たちの力になれるという点で、意欲も積極性も増すのではないかな》
《お前たちの意を尊重することはラーグ様の本意でもある。今言った内容なら脅迫や無理強いにはならん。もし限度を超え、そこから先は遠回しな強制だという域に行きそうになったら、儂らが事前に止めてやる》
《本当ですか、助かります。加減というか線引きが分からないので心配だったのです》
頼もしい言葉に、ウォーロックが声を弾ませた。ずっとずっとラーグと共に在った先達たちは、どこまでであれば大丈夫なのかのラインが分かっている。
《では試してみます。これから最高神様方に念話しますね。……アルシオ兄さんはどうする? 嫌なら無理しないで。僕だけでやっても良いから》
《――やる》
驚きから戻って来たアルシオは答えた。胸の奥で未知の試みへの冒険心と高揚感が疼いている。几帳面できっちりしていると見られがちのアルシオだが、意外とアクティブでチャレンジ精神旺盛がところもあるのだ。
《その提案、私も乗った。共にやってみよう》
《……ありがとう。最高神様方に打診して承諾が取れたら、アーディエンスとイルーナはルゥやロンたちを宥めてくれる? 僕たちがわざわざそこまですることないって、不満に思うかもしれないから》
《――分かりました。父さんがそこまで決心しているなら、俺も受け入れます》
《私もです。ですがお父様、叔父様。仮に今のご提案を実行するとしても、プライベートの場では私たちに敬語など使わないで下さいね。今まで通り、親子や親族として接して下さい。それが条件です》
《あなた、アルシオ様、お気を付けて……》
《自身の御意志のまま進まれて下さい》
アーディエンスとシルファールに続き、イルーナとミスティーナも背を押してくれた。
《おそらく承諾自体は取れるじゃろうなぁ》
《ああ、怯まず一心に押せ。そうすればいける》
《後は、肝心の期限をどれだけ多くもぎ取れるかじゃのぅ》
《それほど長い猶予は与えられぬと思うておけ》
《分かりました、先達様。では念話します》
ウォーロックがさっそく思念を飛ばす。アルシオはそれを見守った。その間、フィーラスは発狂状態で泣き喚き、ラーグは恬然とした目で佇んでいる。
ややあって、弾んだ声でもたらされた結果を聞き、弟と目を見交わして頷き合う。そしてそろって前に出ると、口を開いた。
『聞け、大精霊フィーラス。神として宣言を下す』
『――ひっ!?』
当代大精霊がふわふわの金髪をピクンと揺らした。混乱状態でも声は届いているようで何よりだ。だがアルシオは彼女ではなく、同時にこちらを見た兄に目を向けた。
『これより、恐慌状態にある使役界の秩序を当面だけでも維持するため、私たちなりに考えた方法を採りたく思います。突飛な内容にはなりますが――兄上、私とウォーロックを支えて下さいますか?』
『ああ、必ず』
即答が返った。兄はきっと、本当はずっとこのような対応をしたかったのだろう。ラグドールであった時は、使役の長老という立場にいたから思うままに振る舞えなかっただけで。
『ラーグ兄さん、感謝します』
ウォーロックがぽややんとした笑顔で言った。このほんわかした顔であの提案を思い付くのだから、鈍いのか奇天烈なのか分からない弟だ。そんなことを考えつつ、アルシオはフィーラスに向き直った。
『神の名において臨時の役職変更及び就任を命じる。大精霊フィーラスを第一大精霊に、元大精霊ボルネッタを一時的に復帰させた上で第二大精霊に任ずる』
ありがとうございました。




