47.真実と向き合え
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と、フィーラスがポンと手を打った。
『あー! そういえば、私もその時一緒に濃いお茶を飲みましたっ!』
『だから今日のお前はこんなにパニックモードなのかよ! バリバリ症状出てるしよ! すぐにミーシャを確保しろ!』
言い募るアーディエンスに、愛らしい桃色の目が逡巡を見せた。
『でも……今のはアーディエンス様の想像です。私の発疹と上級精霊たちの症状、それに茶葉の存在とミーシャ様が怪しいという前提を掛け合わせて、辻褄が合うよう組み立てた推測ですよね。それが正しいとは言い切れないのではありませんか? もっと別の真相があるかもしれないです』
『そーだな。だからお前の力で過去視をしてみろ。お前自身が真相を確かめるんだ。いや、正規の神である悪神の茶が関わってるから、大精霊の力でも視えねーかもだな。俺が手を貸してやる。もちろん、自分の推測に合うように過去視を歪曲したりとかはしねーよ、神性に誓ってやる』
『べ、別にアーディエンス様を疑ったりなんかしてませんよ……』
答えるフィーラスの声が小さい。きっと怖いのだ。信じていた者の裏の顔を目の当たりにすることが。だが、当代の大精霊として、彼女は対応しなければならない。胸の奥で疼くやり切れなさを隠し、アルシオは声を上げた。
『アーディエンスの言う通りだ。きちんと真実を確かめ、向き合え。今の推測の正否はともかく、大精霊に発疹が現れ、上級精霊が軒並み不調という現状はただごとではない。何が起こっているか、真実を調査する必要がある』
ビクッと華奢な肩が震えた。自身の後釜を見るアーディエンスの瞳も痛みを孕んでいる。
『お前の力で足りねー分は、俺の神威で補強する。今ここで過去視をしろ』
『……はい……』
フィーラスの応えと体は、どちらも震えていた。透明な神威が立ち昇る。それを補完するように、天の河を宿す眩い御稜威も。
『――う、うぅぅ……ミーシャ様……』
結果が分かるのはすぐだった。一瞬で把握したのだろう。みるみる内にフィーラスの双眸を覆った透明な膜が揺れ、雫となって転がり落ちる。
『どうでしたか、アーディエンスさん』
その反応を見れば聞くに及ばずではあるが、念のためといった体でシルファールが聞いた。共に過去視していたアーディエンスが目を伏せ、静かに頷く。あぁ、と全員が項垂れた。イルーナが口元を覆って薄く涙を浮かべ、アーディエンスとウォーロックが心配そうに見ている。ミスティーナはイルーナの腕を取って支えていた。
『フィーラス、お前にも視えたろ。ほとんど俺の読み通りだったな。分かんなくてスキップした点も視えた。悪神が何で気付いてなかったただが……実は気付いてたけど何も言わなかったみたいだ』
下賜した時点で、茶葉の所有権は使役たちに移った。自分は正しい処理方法を教えたのだから、後はどうしようが使役たちの勝手だと思い、スルーしていたらしい。上級精霊たちはいつこの状態に気が付くのかと、半ば面白がりながら放置していた面もあったという。
箔付けの神格を持つ使役は広義では神々の身内として目をかけられるが、やはり完全な家族ではないので、重篤な状況になっていない状況では、このように利用されたり遊ばれることもあるのだ。
『悪神らしいな。これでミーシャは黒確定だ。ソッコーでひっ捕らえろ、そんで処分の検討だ』
『だけど、上級精霊たちの大半が不調なのに、上手く使役界を回せるかな。今まではミーシャがフォローしていたんだよね。正しい処理をしたお茶で中和するにしても、断続的にでも200年摂取して来た影響ならすぐに抜けるかどうか』
心配そうに述べたのはウォーロックだ。信を置いていた恩師の行為に泣き崩れていたフィーラスが、しゃくり上げながら言う。
『こ、こんなことになって……わ、わ、私、神逐されるんでしょうか?』
胃の腑を締め上げるような重苦しい空気が場に満ちる。神逐。それは、箔付けの神格を賜る使役たちが最も恐れ、絶望する事態だ。アルシオとてかつては同じ立場だった。
アルシオが横目で弟を見ると、トパーズの眼差しが苦渋を帯びていた。おそらく自分も同じ目をしているだろう。ミスティーナは硬い面持ちを崩さず、イルーナは辛そうな顔で黙っている。
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