42.補佐役ミーシャ
お読みいただきありがとうございます。
アーディエンスが神成したことで空位になった大精霊の座。後釜に最も近い位置にいたのはフィーラスだ。もし他の候補者が選ばれたとしても、引き続き副大精霊となる公算が濃厚だった。
なお、仮にフィーラスが大精霊にも副大精霊にも選ばれなかった場合、最高神付きの神使か選ばれし高位神の上位神使、あるいはそれらに比肩するポジションに回される。箔付けの神性を保持したままでいられるように。
大精霊にも副大精霊にも選ばれず、ウォーロックのような特例の温情措置も与えられないまま通常の上級使役に降格させられれば、今まで副大精霊として賜っていた箔付けの神性は喪失する。つまり神逐と同じ状況になるのだ。
それは憐れだということで、当事者に明確な落ち度や咎がない状態で降格となった場合は、箔付けの神格をキープしたままでいられる役職へ変更されるのが慣例だった。
だが、件の大精霊選においては、フィーラスとイバリアが大精霊ないし副大精霊に就くことが半ば内定しており、後はどちらがどちらに就くかを決めるだけだった。ゆえに、フィーラスはあらかじめミーシャに連絡を入れ、補佐役への就任を要請していた。
そして、要請を受諾したミーシャは、正式に補佐になる前から度々フィーラスの元を訪れて悩みや不安を聞くようになった。茶葉の話題が出た際も、その一環で訪問していたという。
『で、ミーシャに言われるまま茶葉を預けて、干す時間も短縮したってか?』
『はい。二日干しは念には念を入れた日数なので、実際は一日でも大丈夫だと言われました。とても長く生きておられる博識な方ですから、ミーシャ様が仰せならと思って……』
『丸ごと信じたのかよ。茶葉を下さった悪神に確認せず、副大精霊とか他の上級精霊への相談もせずに?』
『う……はい……』
『ったく』
全身でしょぼくれるフィーラスに、アーディエンスが手のひらで瞼を覆った。
『ミーシャが裏で何かしら企んでおったとして、理由は何じゃろなぁ』
『目に余る愚者は儂らが消滅前に片したが、ミーシャは特に引っかかる点もなかったはずだがのう』
『どうする、神威でちゃちゃっと過去視してしまうか?』
『以前ならここで真相を予想して賭けをしておったがな、もうその必要もあるまいて』
首を傾げる先達たちに、シルファールが重い声音で言う。
『それに関しては私たちの方で予想が付いております。先達様方の想念が昇華された少し後――言い換えれば大精霊選の決選投票の少し前とも表現できます――に、ホーセルが神成しました』
『『あぁ〜』』
聞いた瞬間、先達全員が肩を落とした。納得と嘆きと共に。
『今ので読めたな』
『うん、何となく分かった』
『え? え? あの……?』
全然分からないと言いたげに皆を見回しているのはフィーラスだ。
『ホーセル様が――ミーシャ様の御妹君が神成なさったことが何なんですか?』
『まだ分かんねーのか。鈍いなお前。ミーシャとホーセルの情報を言ってみろ』
『えと、天界に咲く霊木の葉から生まれた姉妹です。先に生まれたミーシャ様は、大きくて立派な葉から誕生した上級精霊でしたけど、後年に生まれたホーセル様は小さな薄い葉から成った下級精霊でした』
『だな。持って生まれた霊威も天と地以上の差があったらしい。下働きから始まったホーセルは必死に頑張って少しずつ地位を上げていったが、それでも下の上止まりだった。一方のミーシャは高位神付きや使役のリーダーを歴任し、上位者として輝かしい経験を積んでったわけだ。――それから?』
『下働きから昇格したホーセル様は、中位神であらせられる鈴神様の神使として配属されました。その後は配置転換も望まず、長きに渡って誠心誠意主神に仕え続け、手柄を立てたことで下位の神格を賜って正規の神に上げられました。これが大精霊選が開催される少し前です』
ありがとうございました。




