38.上級使役たちは不調中
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ぶんぶん首を振って全力拒否するフィーラスに、ウォーロックは静かに言い聞かせるような口調で説得した。
『大精霊の神威を使えば可能だよ。神威で霊具が創れないはずがない。落ち着いてやってみればできるから』
『でも私、不器用ですし焦りやすいですし、失敗ばかりですし! 大精霊として至らない所ばかりで……』
『聞いて、フィーラス。足りない部分は伸び代なんだよ。これから伸ばしていくか、周囲の力を借りて埋めれば良い。大精霊だから全部できなきゃいけないわけじゃないんだから。君には支えてくれる同輩がちゃんといるだろう? 副大精霊にも協力してもらってごらん』
床に崩れ落ちているフィーラスと目線が合うように膝を付いたウォーロックを、アーディエンスがどこか懐かしげに見ている。かつて自暴自棄になりかけていた幼い彼にも、こうして諭していたのだろうか。
見れば、シルファールもアーディエンスと同じような目をしていた。厳しい教育姿勢を貫くアルシオと、それに食らい付く甥を案じていたウォーロックは、度々幼いシルファールと会って優しく励ましていたという。あれは先達たちの操作は関与していない彼自身の優しさだったと、想念状態だった頃のラーグも明言していた。
……ただ、『私たちの計画にあの感情を持ち込まれては邪魔だったので、ウォーロックの善性を剥ぎ取る中で一時除去させてもらったがな』とケロリと付け足された際は、姿なき腐れ爺に向かって神威球をぶち込んでやりたくなった。
ともかく、シルファールにとって大好きな叔父なのだ。
『ぐすん……でもイバリアは最近、原因不明の胃痛と食欲不振に悩んでると言ってました。他の上級使役たちもなんです。よく眠れなかったり気持ちが重いって言う者もいますし、前より怒りっぽくなったりダラダラする者もいて……きっと私のせいでストレスかけちゃってるんですぅぅ、やっぱりイバリアが大精霊になるべきだったんですー!』
愛らしい目にぶわぁと涙を溜めたフィーラスが、また泣き出した。ウォーロックが微かに眉を曇らせ、思案げな面差しを浮かべる。アーディエンスが目を点にした。
『ちょい待て、何で箔付けとはいえ神格持ちが胃痛や不眠でガチ悩みするんだよ。広義の神族だぞ、おかしいだろ。つかお前なぁ、パニクりやすいつっても、前はここまで酷くなかったじゃねーか。副大精霊の頃だって何のかんのでやれてたはずだ。なのにどうしたんだよ一体』
『だって、アーディエンス様がいた頃は私たちをグイグイ引っ張って下さったじゃないですか。フォローは私じゃなくて補佐役のウォーロック様がして下さってましたし。その前はアルシオ様ががっちり統率なさってて、脇にはウォーロック様が並走してサポートしておられて……だから私も安心して動けたんですよぉ』
補佐役は大事だと全員が思った。ウォーロックはその点では天賦の才がある。組んだ者の実力を最大限以上に引き出すことができる上、自身の能力値もずば抜けて高い。アルシオに付いて行けるほどに。
『今までに非常事態が起こった時は、アルシオ様かアーディエンス様がトップでバンバン指示出して下さって、ウォーロック様がばっちりサポートされてたんです。御三方が神成で使役界から退場されて、私が大精霊になってからは平和だったから何とかなってたんですよぅ』
『で、今回の神器ブッ壊れ騒動でメッキが剥がれたって? 落っことし祭りまでやらかしてんじゃねーよ』
『だ、だってぇ、私がトップに立って下を引っ張ってくとか、非常事態で冷静に統率するとか無理ですって! 何で副大精霊のままでいられなかったの!?』
『お前が自爆してセルフ投票しちまったからだろ!? どうにもならねー部分は周りを頼れ。ウォーロック様だって言ってたろ、お前は一緒に働く同僚がいるんだって。単騎で仕事してんじゃねーんだから』
『はい……』
消沈しながら頷いたフィーラスの言葉で、会話に区切りが付く。そのタイミングを見計らい、ウォーロックが話しかけた。
『……ところでフィーラス。いきなり話が変わって悪いけど、お茶の下処理はきちんとしている?』
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