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スピンオフ置き場  作者: 土広 真丘
第1章
42/73

33.修復完了

お読みいただきありがとうございます。

『うぅぅぅ』


 顔に縦線を入れて悲壮な顔付きになったフィーラスが、ハッと目を輝かせた。


『そ、そうだ! いっそ私の神格と力を解放して、この場所を爆破するとかどうでしょうか! そうしたらアクシデントによる中止扱いになって、後日仕切り直しで再選という形にできませんか? ね、良いアイデアでしょイバリア?』

『や、やめて下さい! 大精霊選中に爆破事件が起こったなんて大問題ですよ! 神々に何と報告するつもりなのですか!?』

『……もう腹を決めて下さい、副大精霊。いえ、大精霊』


 どこか観念した声で、他の上級使役たちが割って入った。フィーラスに票を入れた者たちは特に顔色が悪い。ここまでポンコツだって分かってたら入れなかったのに、と目が語っている。そして全員、胃が痛いと言わんばかりの表情でフィーラスの前に並んだ。


『こうなった以上は仕方がありません。不安は数多ありますが――率直に言えば不安しかありませんが、投票がなされた以上はあなたが新たな大精霊です』

『我らの新しき長。どうか矜持を持って務めに邁進され、使役界をお導き下さい』

『ひいいいぃぃぃ!』


 ドンヨリした顔のまま一斉に膝を付いた票決者たちの前で、フィーラスが絶望の断末魔を上げて床に蹲る。アルシオたちは目眩を感じたように額に手を当てて項垂れていた。

 フィーラスだけでなく使役界全体のためにも、どうにかして投票を無かったことにするか、再選に持ち込みたかった。神ですら真価を抑えている状態ではミスをする。いわんや使役をや。時に思わぬ失敗をしてしまうこともある。やり直す機会を与えてやりたかった。


 だが上級精霊ならば、特に現状での暫定トップである副大精霊ならば、己の行動に責任を持たなければならなかったことも事実だ。大精霊選の重要さはフィーラスとて百も承知のはずなのだから。その席で平常心を失い、気が急いて転倒してしまったのは彼女の自己管理不足と自己責任だ。ならばその結果としての生じたこの事態も、覚悟を決めて受け入れなければならない。


 当事者を含む誰にも祝福されない長が爆誕した瞬間であった。


『――ということで、大精霊フィーラスが生まれました』


 過去視の映像が一区切り付いたところで、アーディエンスが疲れた声でまとめた。


『アイツがあんなスカポンだって分かってたら、誰も票なんか入れなかったですよ。俺だって投票権を持つ上級精霊たちに、遠回しにでも警告してました。でもあの大精霊選までは、多少慌てっぽい気があっても一応個性の範囲で済むレベルだったから、気付かなかったんです』


 苦々しく述べられた言葉に、大精霊及び副大精霊としてフィーラスを見て来たアルシオとウォーロックも同調する。


『私も同じく。まさかあそこまでだとは察しておりませんでした』

『焦りやすい性格なんだなぁと思う程度で収まっていましたから……』

『ほぉ〜』

『ははぁ』


 先達たちがふぅぅんと言った顔で頷き、チラとラーグを見てから過去視を消した。


『ただ、そんな経緯でトップに立ちはしましたが、今まではまあまあ形になってたんです。イバリアを副大精霊に付けて、ベテランの上級精霊を補佐に置いたりとかもして、どうにか安定してました』


 この先達たちの最期の暗躍により、問題がある使役や性悪な使役が大量に処分されたことで、使役界の環境と状態が大きく改善していたことも後押ししてくれた。


『けど、今日の一件はキャパオーバーで、プッツンとなったっぽいです』


 ブツブツと愚痴るアーディエンスの台詞を、冴えやかな美声が断ち切った。ラーグだ。


『神器の修復が終わった。今、直前の操作とやらの取り消し(キャンセル)処理を行なっている。これで神々の領域と使役界の境も元通りだ』


 相変わらず表情の無い顔で告げた直後、崩落寸前の地面のように揺れていた使役界が安定を取り戻した。

ありがとうございました。

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