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スピンオフ置き場  作者: 土広 真丘
第1章
35/41

26.かつて賜ったものは

お読みいただきありがとうございます。

『分かりました、兄上』

『ラーグ兄さん、ありがとうございます』


 短く返したアルシオにウォーロックも追随した。そして、ラーグの気を散らさないようにか、こっそり念話を送って寄越す。


《すごいね、ラーグ兄さんと先達様方。もう完全に星雲の神威を使いこなしてるよ》

《神格を抑えているわけではないのだから当然だろう。神に修練や修行は不要だ》


 ふんと鼻を鳴らすアルシオだが、兄を含む先達たちを見てアメジストの目を眇める。


《だが、特別ではあるようだ。……年齢が高い》


 神は全き神格を得た時を基準に年齢を数え始める。正式な神になった時が、本当の意味で自分たちの同族となった時期だからだ。ゆえにアルシオたちは、精霊時代や限定的な神格しか持たなかった頃の年数は年齢に加算されていない。

 それを踏まえれば、たった今正式な神格を授かったばかりのラーグたちは、0歳であるはずだった。神としての(よわい)はアルシオたちより年下であるはずなのだ。だが実際には、神眼で視える彼らの年齢は遥か上。古き神に次ぐほどだ。


《神々は兄上方をいつでも神成させるつもりでいたようだからな。……正規の神格を得ておらずとも、ずっと前から正真正銘の同胞に準ずる位置まで格上げしていたのだろう》

《そうなんだろうね。そもそもの話、箔付けの神格というものを一番最初に賜ったのだってラーグ兄さんたちだっていうし。その時点で神々にとって別格の位置にいたんだ。最高神様から個別に神器を賜っていたとも聞くしね》


 何しろ、どれほどの乱痴気騒ぎを繰り広げても神々から見捨てられず、妖神が悪神の面を抑えてまで救済措置を確保していたのだ。貴き禍神の御子が、悪神としての誇りを抑えてまで。何度も何度もしつこいが、特別扱いも良いところだ。


《神器と言えば……》


 言い()したウォーロックが先達たちに目を向けた。視線に気付いた彼らがこちらを見る。


『ん? 何じゃ何じゃ?』

『どしたー?』


 すっかり親しげな態度になった先達たちが声をかけて来る。これこそが、使役時代にかぶっていた腐れ爺の仮面を脱いだ素の顔なのだろう。本当は後進が可愛くて可愛くて仕方なかったのだ。


『すみません、ちょっと気になることを思い付いたもので。でも今の作業とは全然関係のない話ですし、重要なことでもないので、後で良いです』


 申し訳なさそうに言うウォーロックに、大先輩たちはヒラヒラ手を振る。


『構わん構わん。何じゃい?』

『儂らは老……ラーグ様の補佐じゃから大したことはしとらんし、話せるぞ』

『そうですか? 気になると言っても大したことではないのです。先達様方は使役時代、最高神様方から神器を賜っていたとお伺いしています。それも復活したのかなと思って』

『あー、したした。元々は儂らの内にしまっておって、残留思念になってからは意思と同化させて持っていた。その思念も昇華して完全消滅する際に神器も共連れにしたのじゃが、さっき復活した時にちゃんと一緒に蘇ったぞ』


 先達たちがポンポンと自身の胸を叩いている。当初の予定では神逐される腹づもりだったので、神器も剥奪か破壊されると踏んでいたのだろう。だが、蓋を開けてみればこの通りだ。


『最高神様の神器と言えば、先ほど新しい物もいただいたのう。ようやく神成した祝いだと、儂ら一柱ずつに追加で遠隔下賜して下さった。神格を与えると同時にじゃ』

『それはおめでとうございます』


 シルファールが素直に寿いだ。アルシオたちも、最高神たちの従神となった際に神器を賜っているが、それと同等な待遇だ。


『ラーグ様はもっとすごい物をお持ちじゃよ。……老爺、あの神器も蘇ったのでしょう?』

『ああ。我が内にある』


 先達の一柱が聞けば、修復に勤しんでいたラーグが短く返した。アーディエンスが眉を寄せる。


『もっとすごいって……最高神様の神器よりも、ですか?』

『そうじゃのう。遥か昔、ラーグ様の名付け親たる御方、()()()()()()()が下さった()()()()じゃ』

ありがとうございました。

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