49話 今は自分のことで精一杯だけど
「……本当は、7歳のその日まで現れないつもりでいたの」
「え……」
「だけど、貴女を見た瞬間に居ても立っても居られなくなっちゃった」
「カトリーさん……」
私へ愛おしそうな優しい表情を向けてきた。
「私はあの人の仇を討つために……、貴女みたいなゴブリン反乱分子を生み出して、利用しようとしている悪い女」
愛おしそうな表情は寂しそうな表情に変わると、遠くの方を見つめながら呟くようにそう言った。
「……」
なんて答えていいか、分からない。
そうなんだろうけど、私にはカトリーさんが私を利用しているようには思えないよ。
沈黙が流れる。
草のカサカサした音が風の吹く度に聞こえる。
「カトリーさん……、大丈夫だよ。……私はカトリーさんに利用されるんじゃないから」
「……でも」
「私はカトリーさんに助けて貰うのよ。新しい人族の人生に7年分のおまけを足してもらって、もっと強く賢く、……可愛くなるんだから」
私は処刑されるために生きていたのを、カトリーさんが次の人生に繋げてくれているのだと思う。
「……ありがとう。本当にいい子ね」
カトリーさんは私を抱きしめる。
カトリーさんの柔らかな感触が私の身体に伝わってくる。
私はその感覚の全てを、余すことなく感じ取るために目を閉じた。
カトリーさんの匂い。
私の頭の中を安らぎと嬉しさが駆け巡る。
カトリーさんを利用しているのは、自分なのかな……私はそう思ってしまう。
ふと、疑問が沸いてくる。
私が人間に生まれ変わって、どれだけゴブリン殲滅に役に立つんだろう?
「……ああ、ごめんね。帰るの遅くなっちゃうね」
カトリーさんが私の身体を解放する。
「カトリーさん。私が生まれ変わってもゴブリン殲滅は難しいと思うんだけど……」
「……うん、私も今のままだと、難しいとは思ってる。ゴブリンという種族が強くなりすぎてて」
「……」
まあ、多分はじめから無理なんだろうけど。
転生して、長くなかったなんて嫌だな。
「ゴブリンの初代の王様は、私のあの人と同じ世界に生きてた人が転生してたみたい」
「王様って……中身は人族だったの?」
人族が転生……、ゴブリンだけど中身は人間。
「そうよ。人族が大嫌いな人間。生前に嫌な思いをたくさんしたんでしょうね……その分、ゴブリンを愛せた」
人が嫌いだから、ゴブリンのことは幸せにしようと思ったのかな。
「転生したゴブリンだから、ゴブリンを進化させることができたんだと思う」
何でそうなるの?
「何で? 転生者だと、何でゴブリンを進化できるの?」
「えっと……異世界からの転移者とか転生者は、何か女神様からサポートを受けられるのよ。その力が強いの」
「何か、ズルい……」
「その力をゴブリンの進化に使ったんじゃないかと思う」
私達ゴブリンがここまで強くなったのは、女神様が王様に与えた力のせいなのね。
「ふ~ん」
「だから、もし……異世界からの転生者とか転移者に出会ったら仲良くなっておいたほうがいいよ」
「嫌な奴だったらムリ……」
カトリーさんの恋人とか、後はキモイ人とか……女の子に優しくない人は無理。
「転移者とか転生者とか、滅多にいないんだけど……ゴブリンの殲滅に使えるかもしれないし」
カトリーさんの思考はどこまでも、ゴブリンの殲滅に向かっている。
私は……。
私は、ゴブリンの殲滅なんてしたくない。
この、どこまでも純粋に殲滅ばかりを追い求める彼女をいつか止めることができるだろうか。
「生まれ変わったら、スキルや能力と私の加護をあげようと思うんだけど、どこまで強くなれるかな……」
ゴブリン殲滅は無理だと思うけど、転生はキチンとさせて貰いたい。
「う~ん、でも7歳で終わりは嫌だもん。転生は痛くしないでね」
「大丈夫よ、優しくするから」
今は自分のことで精一杯だけど……。
カトリーさんの病気はスキあらば、治したい。





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