50話 私の状況は何も変わらないんだよね
「カトリーさん……。今日はありがとう」
「うん、どういたしまして。また、明日」
今日はこれで、お別れなんだね。
だけど、やっぱり別れるのは寂しいな。
「カトリーさん……」
カトリーさんの腰のあたりに抱きつく。
黙って、カトリーさんは私を抱きしめてくれる。
とても心地がいい。
ゴブリンの稀少種に生まれてなかったら、7歳になった後も普通に暮らせるのかな……。
カトリーさんにも出会わなかっただろうけど……。
でもさ。
カトリーさんが生まれる前にも稀少種はいたのよね。
カトリーさんの恋人がゴブリンのことを許せなくなって、一緒にゴブリンをやっつけたから処刑する決まりができちゃったけどさ。
カトリーさんの魔法って意味あったのかな?
カトリーさんに抱きしめられながら、訊いてみる。
「カトリーさん……カトリーさんが生まれる前は、どのくらいの頻度で稀少種は生まれてたの?」
「え……?」
「……だって、カトリーさんが魔法を使う前も稀少種……いたんでしょ?」
カトリーさんも稀少種のゴブリンなんだし。
「この前、王国に行った時に図書館で調べたら……100年に1度くらいだったかな……」
カトリーさんの声は身体を伝わるかのように、響いてくる。
身体を通して話をしているかのよう。
「魔法を使ってからはもっと、増えたんでしょ?」
カトリーさんのエネルギーと恋人さんの身体が入って、増えたんだろうと思った。
「……え……変わってない……」
カトリーさんの鼓動が上がった気がする。
魔法って成功してたら、頻度が上がるものだと思うんだけど。
「……魔法って、成功してないんじゃない?」
カトリーさんって、信じきっていることには確認をしなさそう。
「タナカミノルさんが成功したって、言ってたけど……」
何か証拠があれば、私も信じられると思う。
「そうだ、貴女のもう1つの知識はタナカミノルさんが入れてくれたのよ」
確かに、この知識は魔法が作用した証拠かも知れない。
そうか、カトリーさんじゃなくてタナカミノルさんが入れてくれたのか。
何か嫌だな……全裸にコートを着ている人なんでしょ?
役に立つ時もあるけど、要らない知識をなんとかできなかったのかな。
時々、送られてくる意味不明な映像やこの世界で役に立たなそうな解説……。
この世界で暮らすのに要らない知識ばっかり入れて、ゴブリンの教科の知識入れてよ。
この、変態。
でも……、成功したという証拠にはならないような気がする。
「それと、魔法をかける前から生まれてるならさ、次生まれてくる稀少種って止められないと思うんだけど……」
「確かに……そうか。タナカミノルさんに頼んで、止めてもらったんだけど。何を止めたんだろ?」
タナカミノルさんに騙されてるんじゃないのかな。
カトリーさんは純粋すぎる。
人を簡単に信じそう。
「他の種族と馴染みやすいのは、稀少種の基本特性じゃないの? 別に不遇じゃなくてもいいような気がするけどなあ……」
不幸が他の種族との交渉に役に立つと思っている節があるから、否定しておく。
「そしたら、私が貴女のお母さんかどうかも、分からなくなっちゃう……」
「……例え違っても、カトリーさんは私のお母さんだから、大丈夫だよ」
カトリーさんにはお母さんでいてほしいなあ。
カトリーさんは私の身体を離すと、不安そうな表情で呟くように言葉を発した。
「タナカミノルさんに会ってくる……」
「カトリーさん……」
カトリーさんの身体はその場から、スっと無くなった。
転移……。
カトリーさんが今までいたところを見つめていたら、ため息が出た。
でもね、私の状況は何も変わらないんだよね。
7歳になったら、処刑される決まりを何とかしてくれないかな。





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