48話 いっそのこと、一緒に住んでしまいたいな。
けれど、このままじゃ他のゴブリンに勝てないなあ。
「カトリーさん、これじゃ他のゴブリンに勝てないよ」
カトリーさんは、腕組みをして考えている。
「いいこと考えた。強化魔法を足だけにかけて、木刀で後ろから殴れば?」
「え?」
確かに、手の分も全部の魔力を足にかければそういうこともできるかも。
息も切れ切れの身体に鞭打って、ゆっくりと立ち上がる。
「ちょっとやってみる……」
足に魔力を集中させる。
鉛のように重い体の中で足だけが軽くなる。
それでも、戦闘力は1に満ちるらしく、銅の剣も持ち上がった。
戦闘力1って、本当に微妙な加減なんだね。
それにさえ、到達できていなかった自分が情けない。
ちょっと、満足には剣を振れなそうだけど……。
全力の踏み込み。
手と足に魔力をまとわせた時に比べて、全く違う感覚。
私は、その一瞬だけ自分の力で風になれた……気がした。
「うん、足だけ速ければ授業なら勝てるんじゃない? 実践では負けるかもしれないけど」
体力を魔力に接続すれば、3分だけは無敵なんだろうけど、3分で倒せるかどうか分からない。
「木刀を当てれば勝ちだからね。真剣はちょっと、自信ない」
うん、太刀筋が悪いから十中八九負けるだろうね。
少しでも当たれば、吹っ飛ばされるのは私。
……でも、これで勝つための可能性は生まれた。
転生するまでの間に、なんとかやってみよう。
「じゃあ、送っていくよ。家に帰るんでしょ?」
「うん」
帰り道はナイトバッドがたくさんいたけれど、カトリーさんと手を繋いで楽しく帰った。
カトリーさんの強化魔法を使って、二人でナイトバッドが襲って来るのを躱しながら。
やっぱりカトリーさんの強化魔法は、すごいなあ。
二人の身体が満遍なく強化魔法に包まれる。
ムラがなく、一定の魔力で膜のように覆う水のような魔法。
私とカトリーさんは、街へ向かう。
「ジャンプしながら行きましょ」
カトリーさんは遊びながら、帰りたいみたい。
「いいけど」
カトリーさんは、私と手をつないで跳び上がった。
私とカトリーさんはピョンピョンと進む。
まさに、草原を跳ねるピンポン玉?
隠蔽の魔法ももちろん使って。
ピョンって跳んで、ポンッと着地。
視界は上下に動くけど、冷たい風もリズムも気持ちいい。
うん……空も大地も上下に揺れる。
地面はまるでトランポリン。
ひと蹴りすれば、木の高さ。
ふた蹴りすれば、丘を越え。
み蹴りすれば、空の上。
ナイトバットは足元に。
縦横無尽に風が吹く。
夜の空気も何のその。
星の光で十分さ。
ひと蹴りすれば、そよ風に。
ふた蹴りすれば、つむじ風。
み蹴りすれば、旋風に。
ピョンピョン、ピョンピョン。
夜の空。
あっという間に到着~。
「楽しかった~。カトリーさん? 今日は神界のアパートで寝るの?」
「うん、何もない部屋だからただの寝る部屋だけど……」
寝に帰るだけなんだね。
私はカトリーさんと、ずっと一緒にいたいな。
私にとって、カトリーさんの存在は前にも増してどんどん大きなものになっていく。
別れるのが、とても寂しい気がした。
「隠蔽の魔法とか、透明の魔法とかあるんだし……家に来ちゃいなよ」
「私が行って、何するの?」
「一緒にいたいの」
いっそのこと、一緒に住んでしまいたいな。
「貴女にはゴブリンの家族がいて、愛されていると思うの。私……そのやりとりを見ているの辛いな」
「え?」
「私は貴女の母親だけど、母親ではないの。貴女の家族の仲がいい様子は……見ていて胸が痛い」
カトリーさんは、とても辛そうな表情をしている。
「ごめんね……私は貴女の両親から、貴女を奪おうとしているのよ」
今にも、カトリーさんの綺麗な瞳から雫がこぼれ落ちてくるかのような、そんな雰囲気を感じる。
「私はもともと、処刑される運命なんでしょ……。だったら、カトリーさんは悪くないよ」
この街の人は知っている人がいないみたいだけど、私は処刑されちゃう予定の稀少種……。
ゴブリーヌなんだもの。





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