37話 成長が早いのね
「ほら~、起きて~。起きる時間だよ~」
私が次に意識を手に入れた時には、カトリーさんはベッドに居なかった。
あれ……カトリーさん?
ちょっと、心が寂しくなった。
声はベッドのすぐ横で聞こえた気がする。
ここは……宿泊施設のベッドの上……。
そして、布団の中だ……。
夢と眠りの世界で色々忘れていた自分に、次々と現実の記憶が蘇ってくる。
そっか……学校行かなくちゃなんだ。
私の頭はまだ、今までの心地いい世界が名残惜しくて仕方がない。
重い瞼を、なんとか開けてみる。
カトリーさんが私の顔を覗き込んでいた。
あ、いつも通りのカトリーさん。
寝起きバージョンではなく、きちんとしたカトリーさんだ。
「おはよ。目さめた?」
「……おはよ」
起き上がらずに、そのまま答える。
「ほら~、顔洗ってきて~。ひどい顔してるよ」
夢の世界から帰還したばかりで、めんどくさくてしょうがない私。
「う~ん、眠いよ~。カトリーさん抱っこ~」
甘えてみた。
「あらあら、急に赤ちゃんになっちゃって」
あ……嬉しそう。
満面の笑顔だ。
カトリーさんの腕が、モゾモゾっと私の背中の後ろと膝の下に入り込んできた。
なんだか、くすぐったいなと思ったのも束の間だった。
浮き上がる私の身体。
私は、どこぞのお姫様を抱っこするかのように抱きかかえられている。
洗面所の前まで運ばれると、足から地面に優しく立たせて貰った。
「ほ~ら、お母さんが洗ってあげまちょーね」
「え?」
口調が変わってる……。
「じゃあ、いきまちゅよ~。ちょっと、顔を前に屈ませて」
ごめん、自分から言っておいてなんだけど……恥ずかしいよ~。
「……」
急激に熱さを感じてきた私の顔面。
「どうしたの? 早く屈んで。服が濡れちゃうわよ」
「……」
私の顔をカトリーさんがまじまじと見つめる。
「あ……顔が赤い。風邪? お着替えもお手伝いちまちょーね」
楽しそうに、満面の笑顔でエスカレートしていくカトリーさん。
「カトリーさん……。私……自分でやるから……」
「え?」
「だから自分でやるから」
「え?」
「自分で……」
「え?」
だんだん、面倒くさいやりとりに思えてきた。
「カトリーさん。聞こえてるんでしょ?」
「え~。やってあげようと思ったのに~」
ほら、やっぱり聞こえてた。
カトリーさんは私に、お母さん的なことを色々やってあげたくて仕方がないらしい。
「ごめん、カトリーさん。自分でできるようになったから大丈夫」
「……そう? 成長が早いのね」
成長の問題じゃないけど。





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