36話 温もりを噛みしめるように、もう少しだけ眠ることにした
私は夢の中で、いつまでもいつまでも美しい世界を飛び回っていた。
あまりに楽しくて、永遠に続いてくれればと思った。
……カトリーさん、ありがとう。
素晴らしい体験をさせてくれたカトリーさんに感謝。
「えへへ……」
次の日の朝、私は楽しい気分いっぱいで笑いながら意識を取り戻した。
私は……横になっている?
ここはどこだろう。
たぶん、感触からしてベッドの上だと思う。
あれ……?
おかしいなあ、お空を飛んでたはずなのになあ。
いつの間にベッドに戻ったんだろう。
身体には何か保温するものが掛けられていて温かい。
布団もきちんとかかっているみたい……。
瞼を開けてみる。
目の前にはカトリーさんの顔が見える。
寝息を感じるくらい近い距離。
あまりの近さに驚いた。
唇と唇が触れてしまいそう……。
私はカトリーさんと向かい合うような体勢で寝ている。
そして、カトリーさんの腕は私の頭の下。
腕枕してくれている。
目の前のカトリーさんの瞼は美しく閉じられている。
長い睫毛に彩られて、しっかりと閉じた様子からは女性的な何かを感じる。
少し顔を遠ざけて、カトリーさんの顔を眺めてみた。
幸せそうに寝ているなあ。
昨日は随分エネルギーを使わせてしまったから、疲れたよね。
エネルギーを貯金するために、身体のエネルギーを使っているらしいし……。
防寒魔法や強化魔法は分かったけれど、他にも色々な魔法を駆使して私を守ってくれていた。
私のわがまま聞いてくれて、ありがとう。
「ありがとう、お母さん」
呟くように言葉にしてみた。
……ちょっと、面と向かっていうのは恥ずかしい。
カトリーさんが少し動いた。
あ……ひょっとして、聞こえたかな……。
「うん……ん~」
起きちゃう?
「ふう~」
カトリーさんは息を吐き出した。
呼吸はまた、寝息に戻っていく。
起きない……良かった~、聞かれなかった。
けれど、カトリーさんの腕が動いて両手で私を抱きしめてきた。
私の顔はカトリーさんの肩越しの首筋辺りに当たっている。
鼻腔にカトリーさんの匂いが伝わってくる。
あんなに色々と魔法が使えて、身体も強いと思うのにカトリーさんの身体はなんて柔らかいんだろう。
抱きしめられていると、カトリーさんの身体の感触が全身に伝わってくる。
カトリーさんの吐息、胸の感触、腕の感触、太ももに触れる体幹の感触……そして、それらから感じる身体の熱っぽさが私を包み込んでいる。
気持ち良くて、もう一度寝てしまいそう……。
こうして一緒にいると、とても安心する。
瞼がもう一度重くなってくる……。
けれど、私ってやることがあった気がする……。
もっとこうしていたいんだけどなあ。
……そうだ、……学校……行かなくちゃ。
いろいろ思い出してきた。
頭から眠気を追い払う。
誘惑を必死に振り払い、身体に力を入れて起き上がらないと。
……起き上がろうと思ったけれど、身動きがとれない。
金縛り?
……違う。
カトリーさんが私を抱きしめている力が強くて、抜け出せない。
やっぱり、カトリーさんって怪力。
私なんかじゃ歯が立たない。
動けないけど、あまりに心地よくて私もカトリーさんを抱きしめる。
う~ん、今何時なんだろう。
カトリーさんの肩越しから、壁に掛かっている時計を見る。
まだ、6時か。
学校は9時からだから、まだ3時間もある。
まだ、もうちょっと寝られそう……。
もうちょっとだけ……。
私はカトリーさんの温もりを噛みしめるように、もう少しだけ眠ることにした。





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