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真奈美がんばる

 部活動が終わってマンションに帰ってくると、カバンを自室に置いて、すぐに隣の真奈美の部屋を尋ねた。

 しかし、どうも反応がない。

「おかしいな? どっか出てんのかな」

 何度ノックしても反応がない。

「しゃあない、また後にするか」

 大河が自分の部屋に戻ろうとした時、修平の部屋から真奈美が出てきた。

「あら、大河くん。どうしたの?」

「実はさ、宿題が……」

 照れ臭そうに、目をそらして話し始める大河。

 今日あの数学教師の田山に、一人だけ宿題を渡されている。全部で五十問ほどある数学の問題で、結構やりごたえのある宿題だった。

 しかし大河にしてみれは、やりごたえなんてない方がいい。

 こんなものを渡されて、目眩がしそうになった。

「宿題?」

「ここがわかんねえから……困ってさ」

 大河は三枚のプリントを見せた。全部数学の問題だ。真奈美はそれを見て、少し考えて大河に返した。

「ふぅん、でもこれくらい別に難しくないよ。問題の数が多いだけだわ」

「まあ、そりゃそうなんだけどさ……」

 と言いつつ、実はかなり難しいと感じていた。

「大河くん! このくらい人に頼っちゃダメだよ。大丈夫、大河くんならできる。ガンバレ!」

 真奈美はガッツポーズでそれだけ言って、すぐに自室に入っていった。

 真奈美だったら宿題を手伝ってくれるとばかり思っていた大河は、宿題を持ったまま呆然と立ち尽くすのだった。



 大河はいつも弁当だ。誰が作ってるのかというと、もちろん大河自身ではない。作っているのは真奈美だった。

 毎日自分のを作っていたが、大河がやって来たことで大河のぶんも一緒に作っている。教室ではクラスメートにそれがバレて、からかわれたこともあった。

 しかし真奈美は料理がとても得意な上に料理好きでもある。しかも、かなり美味い。

 最初は少し照れくさかった面もあったが、この美味さの前にはそんな照れ臭さなど、遠い空の向こうに消えていった。

 が、今日は弁当がない。もちろん真奈美が弁当を作れなかったからだが、それもここ数日、毎晩徹夜して何かプログラミングしている様子だった。

 朝など、この家に居候するようになって初めて真奈美より先に起きてしまった。

 挙句に少し心配になって「なあ、最近大丈夫か?」と聞いたところ、「全然! 私は今とっても燃えているっ! ……なぁんちゃって」なんて、意外なお茶目な面を見せて、大河は意外さと驚きで笑うどころか固まってしまった。


「大河くん! 急いで!」

「お、おい、待てって!」

 慌てて走っていくイツキに、大河はついていくのが精一杯だった。どこに向かっているのかというと購買だ。

 今日は弁当がないので、購買に昼食を買いに行くことになった。が、東高の購買は需要と供給が釣り合っておらず、しかもよくないことに供給不足だった。

 原因は、購買自体が狭く大量に用意できないのに付け加えて、今年に入って購買でパンやおにぎりを買う生徒が激増していることだった。

 購買の規模が小さいのは校舎自体が古いのもあって、しかも変なところで保守的な気風の学校であるため、大きくしようとすらしない。情報技術部の部室も数十年前の古臭い部屋に、強引に配線などをひっぱりまくって機器を設置している有様だ。

「早くしないと、売り切れるよ! 昼の購買は戦場だよ!」

「そんなマンガみたいな設定ありなのか? ちょっと信じられん……」

 そんなバカなと思いつつも、駆け足でイツキについていった。

 結果は散々だった。まさかアンパン一個だけ……。


 放課後の部室では、大河が真奈美のことをミユキたちに話していた。

「へえ、真奈美ちゃんがねぇ。随分熱心ね。何を作ってるのかしら?」

「それは教えてくれないんだ。最近、ホント鬼気迫るものがあって――ちょっと怖いんだけど」

「高村さんのお父さんって、結構有名な開発者だし、やっぱり血は争えないっていうところかなあ」

 イツキは苦笑いしながらつぶやいた。

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