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第十四話「双子との出会い」

「はい、これで終わり!」

「くっそー! また負けた!!」

「アリア、弱すぎ~」

「くっ! こ、今度は負けないから! もう一回!!」


 アリアは悔しそうに、人差し指を双子に向ける。

 それを見て、双子は嘲笑う。


「別に私はいいよー。じゃあ、次はロロカね?」

「わかった~」

「というか、二人がかりだから負けてるだけだもん! 卑怯だぞ!!」


 次の勝負の準備をしながら、アリアは双子を睨む。そう、さっきからアリア一人に対して、ロロカとルルカは双子で交代しながら挑んでいたのだ。


「卑怯じゃないよ。だって、交代してやっているんだし。それに、アリアが言ったんじゃない」

「そうそう。二人がかりでこいって」

《だから、卑怯じゃないよ。自業自得だよ、アリアの》

「ぐぐぐ……!」


 平和な解決方法でよかった。晃は、心の底からそう思っていた。

 アリアと出くわしてから一時間ぐらい経った現在。相変わらず、晃の隠れ家が集会場のようになっている。今は、アリアとルルカとロロカがボードゲームやカードゲームなどで勝負をしている。

 できるだけ平和な解決方法で頼む、という晃の申し出を聞いてくれたのだ。その結果、この世界にある多種のゲームで勝負をすることに。


 アリアは、ゲームなどの娯楽は好きなのだが、勝つ確立がかなり低いのだ。別に弱いということではない。ただ確立が低いだけ。勝つには勝つが、負けることが多いだけなんだ。

 こういう娯楽には子供のような気分でやっているために、どうもポーカーフェイスがなっていない。そのせいで、相手に悟られ負けてしまう。


 今のところ、全戦全敗。

 ちなみに、この世界では、なぜか晃の居た世界である地球でのゲームが多い。駒の形や何故か攻撃する使用になっていること意外、普通のチェス。

 絵柄が違うだけのトランプなどなど。昔、この世界に来た異世界人が伝えた遊びらしいが……それは晃と同じ地球出身の異世界人なのだろうか?

 何はともあれ、こうして遊んでいると普通の女友達の交流というか……子供らしい遊びに見える。


「今日は、平和で親近感が沸くね」

「素直に聞いてくれてこっちとしては大助かりですよ。あの時のように、いきなりバトルなんかになったらどうなっていたことか……」

「あれは、本当にすごかったと私も思うよ。まさに、男を取り合う女の戦い、というべきかな?」

「あんなのはもうごめんです…」


 ずっと前にも、この三人の戦いはあった。だが、今のように平和なものではなかったのだ。あの時は、まだ晃がアリアに暗殺術を教えてもらっていた時期。森でいつのものように修行をしていると、二人が現れたのだ。

 そう。あれは、今思い出しても壮絶なものだった。




・・・・・★




「ほらほら! もっと、的確に急所を狙うの!」

「はい!」


 晃がまだまだ初心者も初心者の時期のことだ。アリアに、血反吐を吐くほどの暗殺術の修行を受けていたある日。


「ん?」

「どうかしたんですか? 師匠」

「……何か用事? ルルカ、ロロカ」


 晃は、気づけなかったがアリアは何かの気配に気づいたようだ。すると、薄暗い日陰より二人の少女が現れた。

 名前はルルカとロロカというらしい。

 くすくすと笑いながら、近づいてきたのだ。晃は、初対面でありまだ暗殺者としてそこまで足を踏み入れていなかったため、普通に可愛い二人だなぁっと思っていた。

 だが、アリアは敵視するような目で警戒していた。そこから、晃はこの娘達も暗殺者なんだと理解し、警戒を高めたる。


「そんなに警戒しなくてもいいよ」

「そうだよ。ちょっと、新人さんの様子を見に来ただけなんだから」


 柔らかな笑みで、晃に近づいてくる二人。


「私の愛弟子に近づくな!」


 しあkし、アリアにより阻まれてしまう。二人は残念そうな顔をし、ため息を吐く。なんだか、小さな子に守られるっていうのは、男としても情けないものがあったが、これは仕方がないことだ。

 実力は圧倒的にアリアが上。

 今もこうして、教えてもらっている立場なのだから。


「噂通り、すごく溺愛してるね」

「そうだね。まさか、アリアが弟子を取るなんて思わなかったけど」


 ジッと晃を見つめる二人。晃は、そのまま黙っていることしか出来なかった。なんだか、説明し難い異様な力が俺を縛っているような……そんな気がした。


《納得》

「な、何が?」

「なんだか、虐めたくなる顔してるよね~?」

「ね~?」


 晃は、そんな顔しているのか? と首を傾げる、自分では、よくわからない。普通の顔だと思うのだが。


「もう用が済んだんだったら帰ってほしいんだけど」


 明らかに不機嫌。邪魔者は消えろと言っている表情だ。


《ねえねえ、アリア》

「何?」


 声を重ね、お互いに手を繋ぎ合いながら、二人はアリアにこう述べたのだ。


《その子、頂戴!》

「だめ!! 晃は私の弟子なんだから! 絶対渡さない!!」


 晃に抱きついて、双子を更に睨む。大事なものを渡さないという意思がひしひしと伝わってくる。晃は、どうしたらいいんだろうと硬直する。


「えー。いいじゃない。私達のほうが確実にいい暗殺者に育てられるし、可愛がってあげられるよ? ねー? ロロカ」

「ねー? ルルカ」

《だからさ、頂戴よ。アリア》


 くるくると二人の周りを楽しそうに回っている。回って、回って、交互に晃とアリアの顔を見ていく

 その度に、アリアの顔は更に不機嫌になり。


「だめって言っているでしょう! もう、我慢でない! 力ずくでも帰ってもらうから!!!」


 爆発した。


「きゃあ~! アリアが怒った~」

「こわーい! ルルカ、やっちゃおうか?」

「そうだね。そっちが力ずくって言うんだったら、こっちも」

《力ずくでも、その子を奪っていくから!!》


 どうしてこうなってしまったのか……アリアと双子による、晃の取り合いが始まった。

 双子は、どうやら晃のことをアリアから奪い取って虐めたいらしい。それを、アリアは阻止しようと戦っている。

 普通、こういうのって女を取り合うものじゃないのか? そして「やめて! 私のために争わないで!!」みたいなことを言うところじゃ。


「晃は絶対渡さないから!!」


 こうして、三人の戦いは始まったのだ。

 晃はただただ、見ているだけだった。途中から、怖くなり耳を塞ぎながら物影に隠れているだけだった。




・・・・・★




「あの時、ギルヴァードさん居たんですよね? なんで止めてくれなかったんですか?」

「ちょっと、最近面白いことがなくてね。つい、観戦してしまったんだよ」

「ついって」

「私も居ましたが、あの方たちの勝負を止めれるほどの力はありませんので、断念致しました」


 あの三人はかなり強かった。今、思い出しただけでも身震いする。なんというか、自分はあんな猛者達が居る世界に踏み入れてしまったのかと。

 晃は、苦笑する。ギルヴァードならば、もしかしたら止められていたかもしれない。しかし、ギルヴァードは少し観戦する癖があったりするので、簡単ではない。

 特に、面白いものを見る時は。


「やったー!! 今度は、私の勝ちー!!」

「わわっ! ルルカぁ。負けちゃったよ~」

「大丈夫だよ、ロロカ。こんなの偶然なんだから。今度は私が敵を討つから」


 どうやら、アリアがやっと勝ったようだ。何度も負けての一勝だが、大喜びしているアリア。そして、負けたことでルルカに泣き付くロロカ。妹を慰めるように、優しく抱きながら頭を撫でているルルカの姿はまさに姉だった。


「ふん! ここからは、私の独壇場になるんだから!!」

「たまたま一勝したぐらいで、調子に乗らないでくれないかな? 今度は、私が相手だよ」

「たまたまじゃないことを、あんたを倒して証明してみせる!!」

《勝負!!》

「がんばれー。ルルカー。あっ、シーナ。飲み物おかわりー」

「かしこまりました」

《私も!!》

「はい、ただいま」


 本当は、仲がずっといいんじゃないのか? と思ってしまうほど息ぴったりである。喧嘩するほど仲が良いってやつだろうか。

 暗殺者ということを忘れて見ていれば、まるで子供同士の意地の張り合いに見えるのだが。


「何はともあれ、あの時のようなことが起こらなくよかった……」

「こうして見ると、微笑ましいね。可憐な少女達が、一緒に遊んでいる姿は」

「……そうですね」


 彼女達も、こうして見ると普通の女の子なんだなぁっと思ってしまう。……なんで、暗殺の道へ進んだのか。あんな闇に生きるようなと。彼女達の過去を知らない晃には想像も出来ない。


「ほらほら。追い詰めたよ~。どうするのかーアリア」

「こ、ここから逆転するんだよ!」

「アリア様。ファイトです」

「ルルカもファイトだ~」


 考えてもわからない。今は、目の前の平和な光景を見詰めていよう。晃は、カップに淹れられたコーヒーを嗜みつつ、小さく笑った。

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