第三章:英霊の残滓と復讐の胎動
第三話です!
ここから展開がガラッと変わりますのでお楽しみに!!!
新しい両足は、かつてのものとは比較にならないほど強靭だった。どうやら再生した部分は再強化されていくみたいだ。
シンは、奈落のさらに深奥へと歩みを進める。地面を踏みしめる確かな感覚。ウルフの敏捷性とスライムの耐久力を得た肉体は、奈落の濃密な毒気すら、心地よいエネルギーに変えているかのように錯覚させた。
しかし、奈落は甘くない。
突如として、前方の空間が歪んだ。
濃紫の魔気が爆発的に膨れ上がり、そこから一人の「女」が姿を現す。
漆黒の山羊角を頭部から生やし、背中には蝙蝠を模した巨大な翼。その肢体は妖艶でありながら、全身を包む鎧は禍々しい戦意を放っている。
――S級推定魔獣、女型デーモン『黒耀の魔将・エリゴス』。
「……人間、か。否、妙な気配だな」
エリゴスが放つプレッシャーだけで、周囲の岩盤が自重に耐えかねて爆砕していく。言葉を発した。知的生命体、それも最上位の魔族。
「はは……さすがに、一筋縄ではいかないか」
シンは不敵に笑み、地を蹴った。
激突、そして覚醒
戦闘は苛烈を極めた。
【神速】で間合いを詰め、【影潜伏】で死角からの一撃を叩き込もうとするシンだったが、エリゴスの大鎌が一閃するたび、影ごと空間が切り裂かれる。
スライムから奪った【物理耐性】があっても、彼女の攻撃に宿る濃密な魔力までは相殺しきれない。肉体が引き裂かれ、血が噴き出す。だが、即座に【再生】が働き、傷口が強引に塞がる。
エリゴス:「しぶとい虫ケラめ!」
シン:「誰が虫ケラだって……!?」
終わりの見えない超高速の攻防。徐々にシンの魔力が底を突きかけ、防戦一方に追い詰められたその時。シンの魂の奥底で、何かが弾けた。
極限状態の中で、シンの根源たる能力が強制的に深化を始める。
『――ピコン。固有スキル【捕食】のレベルが上昇しました』
『条件を達成。捕食対象の再現構築――【魔獣召喚】が解放されます』
『※召喚可能な数、時間は、術者の最大魔力量および対象のランクに依存します』
視界に浮かび上がる、無機質なシステムログ。
そして、目の前に決定的な選択肢が現れた。
【シャドウ・ウルフを召喚しますか?】
[ YES ] / [ NO ]
「――YESだッ!」
シンが叫ぶと同時に、彼の影が大きく膨れ上がり、そこから鋭い咆哮が轟いた。かつてシンがその喉笛を喰らい尽くした、あの奈落の狼――シャドウ・ウルフが、漆黒の毛並みを揺らして顕現したのだ。
影と狼の共闘
「グルゥゥッ!」
ウルフは主であるシンの意図を完璧に理解していた。
ウルフが【影潜伏】でエリゴスの影へと潜り込み、真下から【神速】の奇襲を仕掛ける。
「なっ……魔獣を従えているというのか!?」
驚愕するエリゴスがウルフへ大鎌を振り下ろす。本来なら一撃で消滅するはずの威力。しかし、ウルフの肉体には、シンが獲得したはずの【再生】と【物理耐性】の恩恵が共有されていた。
「ガァッ!」
大鎌に肉を裂かれながらも、ウルフは即座に傷を再生させ、エリゴスの腕に噛みつく。
(スライムの【増殖】はウルフには適用できない……魔力量が足りないのか…一発勝負だ!)
ウルフが作った一瞬の隙。シンは残る魔力をすべて脚に込め、【神速】を発動した。
影から飛び出し、エリゴスの懐へと潜り込む。
「これで、終わりだぁぁッ!」
シンは鋭利に尖らせた右腕を、エリゴスの胸へと突き刺した。
だが、手応えが無い。スライムの時のような、破壊すべき『核』がどこにも存在しないのだ。シャドウ・ウルフの時と同じ違和感。
「(やはり核が無い……! ならば、丸ごと喰らうだけだ!)」
シンは核を探すのをやめ、そのまま彼女の胸口から溢れる魔力を、自らの身体へと引きずり込んだ。
「アァァァッ……! 我が、このような場所で……」
エリゴスの身体が霧のように崩れ、シンの【捕食】スキルによってそのすべてが吸収されていく。
『個体名:黒耀の魔将・エリゴスの捕食を確認。膨大な魔力を獲得しました』
『【捕食】のレベルがさらに上昇。召喚枠が拡張されます』
奈落の真実
激戦が終わり、静寂が戻った奈落の底で、シンは荒い息を吐きながらシステムログを凝視した。
【対象の再現構築が可能です。以下の個体を召喚しますか?】
・漆黒の騎士シャドウ・ウルフ 推定A級
・黒耀の魔将・エリゴス 推定S級
シンが召喚を選択すると、彼の影からウルフと、そして先ほど倒したはずのエリゴスが静かに姿を現した。しかし、そこに先ほどまでの敵意は無い。彼女の瞳には、確かな知性と、どこか哀愁を帯びた光が宿っていた。
エリゴス:「……私は、敗れたのだな」
エリゴスは静かに己の手を見つめ、それからシンに向き直って深く頭を垂れた。
ウルフ:「我が新たな主よ。貴殿に敗北したこと、悔いは高慢な私を、暗闇から救い出してくれたことに感謝を」
シン:「お前……話せるのか。それに、どうしてお前たちには『核』が無い?」
シンの問いに、ウルフとエリゴスは悲しげに目を細めた。そして、ウルフが衝撃の真実を語り始めた。
ウルフ:「核が無いのは、私たちが元から魔獣だったわけではないからだ。……私たちは、かつて人間に『英霊』とまで呼ばれた者たちの残滓なのだよ」
シン:「英霊……? 人間だと?」
ウルフ:「そうだ。私は数百年前、ある国の騎士団長だった。だが、国王とその配下たちの陰謀、不都合な真実を隠蔽するために謀殺され、この奈落へと突き落とされた。……このウルフも、かつて国のために戦い、裏切られた高潔な戦士の成れの果てだ」
エリゴスによれば、この国――シンのいた国は、王族の権力を維持するために邪魔者を暗殺し、すべてを隠蔽するためにこの「奈落」へと遺体を、あるいは生きたまま落としていたのだという。
エリゴス:「奈落に満ちる『魔阻(魔力に酷似した有害物質)』は、人間の肉体と精神を異形へと変貌させる。とりわけ、国への強い怨嗟や無念、英霊としての強大な魂を持った者ほど、奈落の魔阻を吸収し、強力な魔獣へと姿を変えてしまうのだ。国は……それを知っていて、私たちをここに捨て続けているのよ」
シンの脳裏に、自分をハイエナと呼び、奈落へと突き落とした黄金ギルドのリーダー、そしてそれを黙認した国の歪んだ構造が浮かび上がった。
シン:「そうか……すべて繋がっていたわけだ」
シンは低く笑った。その笑みには、奈落の底よりも深い怒りと、冷徹な決意が宿っていた。
あの光り輝く地上の王国は、数多の英霊たちの犠牲と怨嗟の上に成り立っている偽りの楽園。そして、自分をハメた最強のギルド黄金の獅子もまた、その悪き国の中枢と深く繋がっているに違いない。
シン:「ウルフ、エリー(エリゴス)お前たちの無念、俺が引き受ける」
シンは力強く立ち上がり、二人(二体)の英霊モンスターを見つめた。
「俺をゴミと呼び、お前たちを道具のように使い捨てたあの国を、俺たちの手で内側からブチ壊す。……力を貸してくれ」
ウルフが賛同するように遠吠えを上げ、エリゴスは不敵な笑みを浮かべて跪いた。
ウルフ「御心のままに、我が主。この命、今度は貴殿の復讐の剣として捧げよう」
最底辺へと落とされた少年は、奈落の英霊たちを従える「王」へと覚醒した。
偽りの黄金に彩られた王国を滅ぼすための、孤独で圧倒的な逆襲劇が、今ここから始まる。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
第三話で様々な真実をを書くために第一話、第二話はグッと我慢していました!笑
次回の更新予定もお楽しみにしてて下さい♪
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第四話も楽しみを詰め込んでます!
『エリー』呼びは我ながら好きです(´∀`;)




