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第11話 帰らざる坑道3

 「ユアナもレベルが3になったみたいだね」


 「うん」


 いつもの口調でユアナが答える。


 特に嬉しそうとかそういう素振りはない。


 二層のモンスターはレベル5から8。


 さっきの感触だと5か6か。ゴーストのスキルもラーニングできたし、今日はもう少し二層を探索してユアナのレベルを上げた方がいいかな。それにスキル融合も試してみたい。


 「ユアナのレベル上げもあるし、もう少しこのまま探索していこうか」


 二人が『識別の片眼鏡』を回収し再度ダンジョンの探索に向かおうとした時、奥の通路の暗がりから何かが近づいてくるのに気が付いた。


 強烈な腐敗臭が鼻をつく……。


 片足を引きずるような音を立てながら、一歩一歩ゆっくりと近づいてくる。


 「グールだ! ユアナ下がって!」


 剣を抜きユアナを後ろに下げる。


 「いきなりで驚いたがちょうどいい。試させてもらうぞ!」


 両目に力を込め、小さく呟く。


 「鑑定」


 ノアルの左目に片眼鏡が現れ光を放つ。


 そして、彼の視界に映るグールの前に文字が浮かび上がる。


   種 族 グール

   レベル 5

   スキル 飛び掛かり


 レベル5……。今の俺なら負けることはないな。


 ノアルが情報を確認し終わると、スキルの効果が終了した左眼の片眼鏡は虚空に消えていった。


 「ユアナ、少し離れていてくれ。やってみたいことがある!」


 「うん」


 ユアナはノアルから距離をとるように更に後ろに下がっていく。


 ここで火炎断を放つのはリスクが高いか。あの威力だ。下手したら坑道が崩れかねない。それにあの技は一撃で全ての体力を消費する。今は倒れる訳にはいかない。

 それならば……!


 思考を終えたノアルは剣を横に構えた。


 左右の手で別々に発動させたスキルを体内で融合させるイメージ……。


 思い出すんだ。あの時の感覚を……。


 ノアルは剣を持ち右手に力を込める。


 全身の血が昂っていく。


 「ダッシュ!」


 右手から全身に向かって流れる力を感じる。


 今にも全身を駆け巡りスキルを発動させてしまいそうだ。


 「ブルスイング!」


 さらに左手から全身に力が流れていく。


 二つの力の流れはノアルの真ん中を境にぶつかり合おうとしている。


 それを体の中心で融合させるイメージ。


 ここだ!


 ーーザシュッ!


 「はああ!……ああれ?」


 気づけばノアルはグールの正面に『ダッシュ』で移動していた。


 「え、ええ?」


 好機と見たか目の前のグールは両手を高く上げ、飛び掛かる。


 ーーバリンッ!


 「ぐっ……!」

 

 グールの『飛び掛かり』を受けたシールドはガラスの様な音を立てて砕け散り、ノアルはグールの突進を受けた。


 なんとかその場に踏みとどまることができたが、すぐさま右足で地面を蹴り後方に下がり距離をとる。


 くそっ! 息が苦しい……。 これじゃ素早い動きは無理だな……。


 グールの爪が直撃したノアルの胸は大きく黒紫に変色し、皮膚の一部がえぐり取られている。


 スキルの融合は思った以上に難しかった。恐らくは2つの力の流れが体の中心に集まる完璧なタイミングで融合するイメージができないと発動しないのだろう。


 まだまだ練習が必要か……。だが、今の俺はお前ごときには負けない!


 「フレイム!」


 ノアルの右手から発射された炎の球がグールを直撃しその体を炎上させた。


 「忍び寄るハインドシャドウ……」


 薄闇に溶けていくノアル。その間もグールは炎に焙られ動けないでいる。


 グールの炎が消えかかった瞬間、背後の薄闇が揺らめく。


 「はあ!」


 背後に現れたノアルの斬撃がグールの息の根を止めた。


 「ノアル、だいじょうぶ?」


 グールが光の粒となって消え去った頃、ユアナが駆け寄ってきた。


 「あ……う゛ん……」


 胸の傷のせいでうまく声が出せず、呼吸が乱れている。


 「見せて」


 ノアルの胸を確認するとユアナは傷に向かって両手をかざし唱えた。


 「ヒール」


 ユアナの両手から生じた淡い光が傷を包むと、たちまち黒紫の皮膚は元の色に戻り傷も消えていく。


 「ありがとう! ユアナ凄いよ!」

 

 「なにがすごいの? モンスターを倒したのはノアルでしょ?」


 両手を下ろしたユアナが不思議そうに言う。


 「そんなことないよ! 今も俺が一人だったら無事だったかわからない。俺は回復魔法なんて使えないからユアナがいてくれて本当に嬉しいんだ!」


 これまでずっと一人でダンジョンを探索していたノアルが、初めて仲間がいるということの安心感を理解していた。


 「そうなんだ」


 ノアルは特に感想がなさそうなユアナに『シールド』を張り直してもらい、二人は再度探索に歩き出した。

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