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3/5

やっぱ、そうきたか。

いよいよ開店!

俺とコス野郎は、アニメ専門店になだれ込んだ!!

はたしてウルカちゃんの¥2,500のフィギュアは手に入るのか!?

急展開注意です★

 どたどたどたどたどたどたどた

 たたたたたたたたたしゅたたたたたたたたったったったた

 だだだだだだだだだだだ――っしゅ!



『いよいよだな』「ああ、いよいよだ」




 俺は今、例のコスプレ野郎とともに、店の奥のほうに移動された『狩るマルチ』の特設コーナーにダッシュしている。俺は中学で陸上をやっていたため、足は結構早いほうだが、奴もなかなか劣らない。



「ハアハア……お前は財布にいくら持ってきたんだ?」

『二千五百円だゼエゼエ……』

「俺もだ……気が合うなハアハア……」

『うっせェ……黙っとけッゼエゼエ……』


 コーナーを右へ、左へ……そして、GO STRAIGHT★☆★



「よし、ハアッハア……もうすぐだな」

『いよいよさっゼイゼイ……』


 

 マジ狩る!戦士『マルチーズ』の看板が見えてきた。

 と、ここでコス野郎が、まさかのラストスパートをかけてきやがった。




ギュイイイイイイインッ!



『へっへへ――――お先に♪』

「な……なにをォっ!!?」



 俺の一足先を行くコス野郎は、笑顔を振りまきながらひた走る。

 メイド服姿は滑稽こっけい以外の何物でもない(笑)


 ただ、奴は気づいてないかもしれないが、白タイツが、さっきいきなり走ったせいで、カーブしたところにあった、マネキンのほつれた針金の指に引っかかり、見事に伝線してしまっていた。


 奴にとってはどうでもいいことかもしれないが……。

 というか、マニアであっても一応は男だから心底どうでもいいと思う。


 ウルカちゃんの一番の見せ場である、

『ウル★ウル★ウルカ♪』

 という魔法少女めいた呪文を唱えるときに、思いっきり宙を舞いステッキを天にかざすポーズがあるのだが、そのときに重要になってくるのがこの、白のタイツなのだ。

 セー〇ームーンのように月がよく見える晩に呪文をを唱えることが多々あるため、白脚が月明かりによく映える。ワンポイントでついた、『玉緑ぎょくりょく』の輝きと言ったらまさに神だね。

 そんな神秘的なウルカちゃんの白脚が、なんともまあ無残なコトに。

 俺は奴の後方で、笑いを必死にかみ殺していた。



 やっと特設コーナーに着いた。しかし、そこで異変に気づく。

 もちろん、目標物を確保しておいてからだが。


「な……なあ。なんでこんなに人がいないんだ?」

『あー? しるかそんなん。ま、さっさと買って、さっさと帰ろうぜェ』


「いや……絶対になんかがおかしいぞ。だってフツーこれを見逃すか?」

『まあ、めっちゃレアだしなァ』

「しかも、ココ、よく考えたら……どこだ?」

『なに言って……』



 頭がぐわんぐわんする。

 睡眠薬飲まされてるみたいで……。

 いや、飲んだことはない。正確には。ちょっとそういうこと言ってみたかった願望があっただけだ。



『……ここ、まるでゲームの中の世界みたいだな』


 俺らが立っていたのは、なんだかやけに目を刺激するビビットなカラーのタイルの上。店員はおらず、所狭しと置かれていたはずの商品も、きれいさっぱり……ない。

 存在するものと言えば


「俺とお前と……ウルカちゃんの、フィギュア2体分」


《そうだよ。アタシとアナタとアナタだけなんだよっ》




 ……うぉ?




「……お前何か言った??」

『なんも言ってねーけど。幻聴じゃね』




《幻聴じゃないわ✤アタシよ、アタシ》




「な、なあ……お前にはこの声、きこえるか?」

『きこえるにきまってるさ。この声を忘れるはずがない』

「いや、それは分かるが、なんかその声お前のハコの中からしねェ?」

『いやいや馬鹿いうなって……もちろんお前んハコの中からだろ』


 俺らがまたもめていると、再び同じ声がした。



《どっちでもいいから、はやくココからだしなさいよっ》



 信じたくなかったが、その声は確実に俺のフィギュアケースの中からのものだった……!!




《はやくしてよォWWマジであっついんですけどォWW》



「は……はいっ!!ただいま開けます!」


 根っこがチキンのままの俺は、得体の知れぬ声に翻弄ほんろうされて、恐る恐るパッケージを開けた。


 そして、声を失った。言葉ではない、声だ。声を失った。いや、正確に言うと、ソレに圧倒されて声の出し方を忘れてしまったというほうが正確なのは確かだろう。コスプレ野郎も唖然としてソレを見ていた。


 桃色の包み紙から現れたのは、美しいネイビーの、腰まで垂れた長髪ロングヘア。雪のように白く、きめ細かい肌に薄くかかった柔らかな前髪。セーラー服のリボンが奇跡と呼べるほど鮮やかな朱色で、スカートはギリギリまで男をあおる紺色のマイクロミニ。そして、細い美脚を美しくサポートする、ニーハイソックス。極めつけは、眉と薄い唇が黄金のトライアングルを形成する小顔。俺が今まで出逢ってきた女とは比べ物にならないくらい、美しい……。



《あら、みとれちゃったかしら? ごめんなさい》


 箱の中からこんにちは。

 彼女……封藍寺麗果ふうあいじうるかはニコリと笑った。



「ウルカ……ちゃんですか……?」

《そうだけどぉ、何か?》




 やべェ……マジやべェ……!!

 なあ、ホンモノだよ!!




 言いかけて、コス野郎のほうを向いたら、もう握手&サインを求めていた。



《キミたちさァ、アタシのふぁんなのっ?》

『そうで―――すっ!! な、だよな!?』


 おいおい……テンションの落差が激しいぞ。

 高らかに上昇していた俺の



《んじゃ、まずは挨拶からだよね♪ 改めましてこんにちは☆アタシ、マジ狩るシリーズ・第4号のウルカです!今回は、ちょっといろいろあって…こっちの世界に遊びに来ちゃいました~いぇーい★》



え、ェ・・おい。待て待て待て。



「ウルカちゃんさ…二次元の人だよね」

《そーだよォ。それがどうかしたの?》


「そんな勝手に次元移動しちゃっていいの?」

《いんじゃない?別に》

「だめでしょ。いろいろあったかもしれないけど…メーカーの人に迷惑かかるでしょ」


《だってェ、アタシもういっぱい稼いだからァ…ちょっと位あそぼっかな♪って思って★キミたちだってさぁ~アタシなんかに惚れてたって一生彼女できないよぉ?それでもイイんですかっ》


『いいよ別に。てか、オレはキミだけを愛してるから』




……………………。ちーん。



《ありがと。でも、アタシ彼氏いるから》



『まじでえええええええええええええ!!?』

ポンっ

「ドンマイ…」


でも俺も多少はビビった。いきなりの大激白に。

ファンが聞いたら、報道局やらプロデューサーやらに殺到しかねん。


そりゃあ、俺だってウルカちゃんのことが大好きだけど…

なにもあんなクサい台詞…。

がっくりと肩を落とすコス野郎が不憫ふびんに感じた。





《あ、アタシ…イイこと思いついた~!》


「『何?』」


《あのねェ…アタシが三次元ココに来ちゃいけないんだったらぁ…》




とてつもなくイヤな予感。




『ウルカちゃん……それは…』




《キミたちがアタシのトコに来ればいいじゃない》


がごーん


「やっぱそうなっちゃいますか」



そんな【パンがなければケーキを食べればいいじゃない】的なノリで…(汗)



《そうと決まればさっさと動く!ホレホレ!!》




俺らが思い描いていた二次元の美少女のイメージは音を立てて崩れ…



《え―――いっ★観念しやがるのじゃあっ》

「うわっ」『ぎゃっ』



恋焦がれていた乙女の姿は

あくまでも幻想にすぎず…



実は

“いつも口うるさいオカンのようなものと似たところがある”


という常識をくつがえす事実を



たった今




身をもって





思い知らされたような


気がした……




知らなきゃよかったことってたくさんありますよねー


…つづきます。

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