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【超短編連載作品】風鈴工房 〜不器用な職人と居ついた弟子の物作り手帖〜  作者: さくらもち


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9/43

8頁目 祭りの準備

8頁目です!

よろしくお願いします

工房の外から賑やかな声が聞こえてくる。

 

遠くからかすかに聞こえる、太鼓の練習の音。


明日は秋祭り。


五穀豊穣、商売繁盛を願う、この街の伝統行事だ。


工房でも、お祭りの準備に追われていた。


「これだけ並ぶと壮観ですね。」


部屋を覆い尽くすほどの提灯の数。


赤をベースに白のラインが引かれ、それぞれお店の名前だったり出資者の名前が書かれている。


「貴重な稼ぎ時だからな。」


提灯作りは毎年、商店会長から依頼されている。


作業としても、ほとんど去年の使い回しで、細かい補修と文字入れで終わる簡単なものだった。


しかし、何より数が多い。


二人は淡々と作業を続けていた。


「相棒は明日、どうするんですか。」

「んー、行く気無かったが、屋台の店番頼まれてな。少しだけ手伝ってくる。」

「そうですか。」


神輿が街中を練り歩くのがメインだが、毎年大きい神社の境内で出店がいくつも出ている。


「なんの出店ですか。」

「たこ焼き。」


ぶふっ、と少女は吹き出した。

「たこ焼き!似合う!」

「……うるせー。」


外の賑わいとは別に、工房の中は時計の音が響いている。


「飽きてきたな。」

「飽きてきましたね。」

「ほら、これどうだ。」

「なんで提灯が回るんですか。」

「楽しいだろ?」

「余計なことしないでください。」


単純作業が続くと、遊びをいれてしまう。

この職人の悪いクセ。


またひとつ、提灯を無駄にした。


 

 

「こんちわー。」


入口の風鈴がリーンと鳴る。


小さなお客さんが2人、やってきた。


「いらっしゃいませ、どうしましたか。」


青い髪を揺らしながら、男の子たちを迎え入れる。


「うわーすげー提灯の数!」

「ほ、ほんとだ、すごいね。」


子どもたちは眼を輝かして提灯を見入っていた。


「ふふ、ありがとう。」

「あ、これ明日のお祭りのチラシ!お店出します!」

「よ、よろしくお願いします。」


家の手伝いだろうか。

近所のお店の広告を配り歩いているようだ。


「お、ありがとーな。」


遠くから、工房主が声をかける。


「これ、お祭りのですか?」

「そうだよ。神社に飾る提灯で、いっぱい吊るすの。」

「すげーかっけー!」


見慣れない光景に、子どもたちは大はしゃぎだった。


「これ、ひとつ余ってるな。」


工房主が作業台の端を見ながら呟く。


そこには、試し塗り用に作った小さな提灯が転がっていた。

手のひらに乗るくらいの、小さな提灯。


「ちっちゃい!」

「か、かわいいー」


男の子たちは目を輝かしている。


「やるよ。」

「えっ、いいの!?」


弟子は少し驚いた顔をした。


「相棒、珍しい。」

「どうせ余りもんだ。待ってろ、今持ち手をつけてやる。」

「じゃあ私のも。」


弟子の分の見本用の小さな提灯も、師匠の手つきを見ながら、持ち手を付けた。


「「ありがとうございます!」」


男は相変わらずぶっきらぼうな顔をしているが、嬉しそうに提灯を抱える子どもたちの姿に、ほんの少し口元が緩んだ。


「明日、お祭り来てね!」

「おぉ、いくいく。」

「頑張ってね!」

「はい!」


風鈴がリーンと鳴る。


 

 

帰っていく子どもたちの手には、小さな灯りが揺れていた。

次回はいよいよお祭り回です。

挿絵2枚用意してるので、アクセスお待ちしております。

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