8頁目 祭りの準備
8頁目です!
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工房の外から賑やかな声が聞こえてくる。
遠くからかすかに聞こえる、太鼓の練習の音。
明日は秋祭り。
五穀豊穣、商売繁盛を願う、この街の伝統行事だ。
工房でも、お祭りの準備に追われていた。
「これだけ並ぶと壮観ですね。」
部屋を覆い尽くすほどの提灯の数。
赤をベースに白のラインが引かれ、それぞれお店の名前だったり出資者の名前が書かれている。
「貴重な稼ぎ時だからな。」
提灯作りは毎年、商店会長から依頼されている。
作業としても、ほとんど去年の使い回しで、細かい補修と文字入れで終わる簡単なものだった。
しかし、何より数が多い。
二人は淡々と作業を続けていた。
「相棒は明日、どうするんですか。」
「んー、行く気無かったが、屋台の店番頼まれてな。少しだけ手伝ってくる。」
「そうですか。」
神輿が街中を練り歩くのがメインだが、毎年大きい神社の境内で出店がいくつも出ている。
「なんの出店ですか。」
「たこ焼き。」
ぶふっ、と少女は吹き出した。
「たこ焼き!似合う!」
「……うるせー。」
外の賑わいとは別に、工房の中は時計の音が響いている。
「飽きてきたな。」
「飽きてきましたね。」
「ほら、これどうだ。」
「なんで提灯が回るんですか。」
「楽しいだろ?」
「余計なことしないでください。」
単純作業が続くと、遊びをいれてしまう。
この職人の悪いクセ。
またひとつ、提灯を無駄にした。
「こんちわー。」
入口の風鈴がリーンと鳴る。
小さなお客さんが2人、やってきた。
「いらっしゃいませ、どうしましたか。」
青い髪を揺らしながら、男の子たちを迎え入れる。
「うわーすげー提灯の数!」
「ほ、ほんとだ、すごいね。」
子どもたちは眼を輝かして提灯を見入っていた。
「ふふ、ありがとう。」
「あ、これ明日のお祭りのチラシ!お店出します!」
「よ、よろしくお願いします。」
家の手伝いだろうか。
近所のお店の広告を配り歩いているようだ。
「お、ありがとーな。」
遠くから、工房主が声をかける。
「これ、お祭りのですか?」
「そうだよ。神社に飾る提灯で、いっぱい吊るすの。」
「すげーかっけー!」
見慣れない光景に、子どもたちは大はしゃぎだった。
「これ、ひとつ余ってるな。」
工房主が作業台の端を見ながら呟く。
そこには、試し塗り用に作った小さな提灯が転がっていた。
手のひらに乗るくらいの、小さな提灯。
「ちっちゃい!」
「か、かわいいー」
男の子たちは目を輝かしている。
「やるよ。」
「えっ、いいの!?」
弟子は少し驚いた顔をした。
「相棒、珍しい。」
「どうせ余りもんだ。待ってろ、今持ち手をつけてやる。」
「じゃあ私のも。」
弟子の分の見本用の小さな提灯も、師匠の手つきを見ながら、持ち手を付けた。
「「ありがとうございます!」」
男は相変わらずぶっきらぼうな顔をしているが、嬉しそうに提灯を抱える子どもたちの姿に、ほんの少し口元が緩んだ。
「明日、お祭り来てね!」
「おぉ、いくいく。」
「頑張ってね!」
「はい!」
風鈴がリーンと鳴る。
帰っていく子どもたちの手には、小さな灯りが揺れていた。
次回はいよいよお祭り回です。
挿絵2枚用意してるので、アクセスお待ちしております。




