6頁目 少女の休日
6話目です
よろしくお願いします!
休日の商店街。
青い髪が、秋の風にふわりと揺れる。
ぴょんと跳ねた浮き毛までご機嫌そうだった。
「ルリちゃーん!今日は工房お休み?」
「休みでーす!」
八百屋のおばちゃんに手を振り返す。
「あ、新作の髪飾り可愛かったよ!」
「えへへ、ありがとうございます!」
街を歩くだけで、気づけば誰かに声をかけられている。
工房では弟子役をしているが、街では普通の女の子だ。年相応によく笑うし、友人も多い。
「ルリ、次どこ行く?」
「んー、雑貨屋見たい!」
今日は学生時代の友人と一緒に遊びに来ている。
「あ、これカワイイー買おうかなー。」
「似合うじゃーん。でもルリだったら似たようなの作れるんじゃないの?」
黄色い花をあしらった、シンプルなヘアピン。
たしかに今の少女の腕前くらいなら、これくらいは作れそうだ。
「いやー…なんでも作ればいいや、じゃなくて…なんていうんだろ。これを作った人がいるわけで、ここに並んであって、それを買いたいじゃん?リスペクトっていうかなんというか。」
「出た。謎理論。」
言いたいことが伝わらないもどかしさが、身ぶり手ぶりを動かしている。
「自分の作ったのとは違うっていうか。ほら、自分で作れてもさ、レストランでも食べるでしょ?」
「まーたしかにお店で食べる味ってあるよね。」
友人もここで深く議論したいわけではない。適当な相槌で終わるのも、言葉にできない自分のせいではある。
「食べ物の話したらお腹減っちゃった。」
「じゃあ新しくできたスイーツのお店!あそこ行ってみようよ!」
二人は新規オープンしたというカフェの扉を開けると、店内から甘い匂いに出迎えられた。
窓際の席に着くと、店員さんを呼んで注文する。
「私は、ショートケーキと紅茶で。」
「じゃあ同じ物と、コーヒーお願いします。」
友人は小さく、えっ、と声を零して驚いた。
「あんた、紅茶派じゃなかったっけ。」
「……え?」
二人きょとんとした顔をして、お互いを見合わしている。
「ルリっていつも紅茶じゃん。」
「あー……。」
まったくの無意識だった。
いつも人のコーヒーを入れているせいで、匂いに釣られて、いつの間にか口から出ていた。
向かいの席の友人は、察したようにニヤァと笑った。
「へぇー。」
「違っ。」
「何が?」
「これは、その。」
「うんうん。」
「工房でいつも淹れてるからクセで!」
「ふーん。」
「ホントだって!」
甘いはずのケーキが、何故か少しも味がしなかった。
「じゃ、またねルリー!」
友人と別れ、一人になった帰り道。
気づけば、今日一日ずっと工房の話をしていた気がする。
新作の話。失敗した話。工房主の変なこだわり。コーヒーの好み。机の散らかり方。
「……。」
そこでようやく、少女は足を止めた。
「私、何話してんだろ……。」
頬が暑い。
夕方の商店街は、橙色に染まっていた。
その時。
「あ。」
見慣れた男が、紙袋を片手に立っていた。
「…なんでいるんですか。」
「材料の買い出し。」
いつものぶっきらぼうな返事をする。
少女は急に顔を背けた。
「どうした。」
「何でもないです。」
「顔赤いぞ。」
「夕焼けです!」
言われて男は空を見上げた。
「まだそんな赤くないだろ。」
「今日は赤いんです!!」
秋の少し肌寒い風が、その時は妙に心地よかった。
趣味でハンドメイドもしたりするんですが、ルリさんのモノづくりへの価値観は、自分でも大事にしてることではあります。
キャラに喋らせるってムズい…!




