37頁目 朝の商店街
37頁目です!
パン片手にお読みください
春の風が、商店街を吹き抜けた。
ふわりと揺れる青い髪。軽やかな足取りで歩く少女に、店先から声が飛んでくる。
「ルリちゃん、おはよー!」
「おはようございます!」
八百屋のおばちゃんに手を振り返す。
「今日も元気だねえ!」
「えへへ。いってきます!」
いつもの挨拶を交わして、少女は商店街を進んでいく。
今日も空は青く、風は心地いい。朝の買い物にはちょうどいい日だった。
さて、まずは朝ごはん。
少女はパン屋の扉を開けた。
「いらっしゃい、ルリちゃん!」
「おはようございます!今日の朝ごはんはなんにしましょうかねえ。」
棚に並ぶパンを眺めていると、店のお姉さんが声をかけてきた。
「そうだ、ルリちゃん。今日のおすすめはね、焼き立てのメロンパン!」
「焼き立て!?」
少女の目が輝く。
「うれしい!それにします!」
「はいはい、ちょっと待っててね。」
香ばしい甘い匂いが漂ってくる。
焼き立てのメロンパンを受け取った少女は、ほくほく顔でパン屋を後にした。
その手には、メロンパンとあんパン、それからカレーパン。
……朝ごはんにしては、ちょっと多くないだろうか。
「んー! いい匂い!」
袋を覗き込みながら、少女は歩く。
「でも、あー……お腹空いたなあ。」
焼き立てのメロンパンから、まだほんのりと温かさが伝わってくる。
少女はしばらく考えたあと、こくりとうなずいた。
「……焼き立ては、すぐ食べないとですよねえ?」
誰にともなく言い訳をして、メロンパンをひと口食べる。
さくっ。
「ん~~~っ!おいしい!」
思わず頬が緩んだ。
春の商店街を歩きながら、焼き立てのメロンパンを頬張る。これだけで、なんだか今日は良い日になりそうだった。
そのとき、ふと目に入った店先に、少女の足が止まった。
和菓子屋だ。
店頭には、串に刺さった三色団子が並んでいる。
「わあ……三色団子。」
淡い桃色、白、若草色。
「春ですねえ。」
先日の花見を思い出す。
満開の桜の下で過ごした、穏やかな時間。
そういえば。
「……相棒って、見かけによらず甘い物好きなんだよねえ。」
少女はくすりと笑った。
あんな顔して。
工房で黙々と機械をいじっているときなんて、甘い物が好きだなんてちっとも見えないのに。
でも、お茶と一緒に甘い物を食べているときは、いつもよりちょっと機嫌がいい気がする。
「ふふっ。」
思い出すと、なんだかおかしい。
三色団子を眺めていた少女は、ふと隣に並んだ和菓子にも目を向けた。
「あー……ぼた餅も美味しそう。」
つやつやの餡に包まれた、まあるいぼた餅。
しばらく見つめていた少女は、やがて小さくうなずいた。
「……仕方ない!買っていってあげますか!」
誰に頼まれたわけでもない。
自分が食べたいわけでも、ないことはないけれど。
まあ、せっかく目に入ったのだから。
「おじさーん!お団子とぼた餅くださーい!」
元気な声が、春の商店街に響いた。
少女の買い物袋には、朝ごはんのパンに加えて、相棒へのお土産がひとつ。
工房に帰ったら、きっとまたいつもの顔で迎えられるだろう。
それでも、ぼた餅を見たときの男の顔を想像すると、少女は自然と笑ってしまうのだった。
今回はおまけもあります!
夕方お待ちください




