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【超短編連載作品】風鈴工房 〜不器用な職人と居ついた弟子の物作り手帖〜  作者: さくらもち


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40/43

36頁目 観葉植物

36頁目です

よろしくお願いします!

工房の窓を開けると、心地よい風が入ってくる。


すっかり外は春の陽気になっていた。


少女は、うーん、と背伸びをして風とお日様を浴びる。


「うーん。気持ちいいお天気ですね。」


ぴょこんと跳ねた髪の毛が春風に揺れる。


「こんな日は、何か新しいことを始めたくなりますなぁ。」


窓の外に視線をうつす。


暖かな日差し。


舞い散る桜。


風に揺れる木々。


ふと、お隣さんの窓辺に置かれるプランターが目に入る。


「そうだ!観葉植物もいいですね。」


緑と花があふれる窓際を想像すると、思わず笑みが溢れた。


「よーし。相棒!ちょっと買い物行ってきていいですか!」


奥で作業をしている男に声をかける。


「あー…行ってらっしゃい。どうせ暇だ。」


試作品を作る手を止めずに男は空返事をした。


「はーい、行ってきます!ついでにお昼も買ってきます!」


少女は元気よく返すと、春服のコートを羽織って外へと出ていった。




リーン


「ただいまー。」


少女が荷物を抱えて帰ってきた。


「おう、おかえり。って、なんだそれは。」


少女は買い物袋と、小ぶりな観葉植物を持っていた。


「フッフッフ。工房にも緑が必要です!」


「おう。どうした急に。」


男は少し引き気味に答える。


「観葉植物で癒しを得ましょう!」


男は頭をポリポリとかいた。


「邪魔になる。」

「なりません!」


「どうせ枯らすだろ。」

「お世話します!」


半ば強引な弟子に、深くため息をつきながら言う。


「しょうがない、面倒みろよ。」

「やったー!じゃあ作業台の脇に失礼します。」


少女はそっと作業台の空いている箇所に観葉植物の鉢を置いた。


「ちょっと待て。なんでそこなんだ。」

「癒しですよ、癒し。」


「…もういい。飯にしよう。」

「はい!今用意しますね!」




数日後、作業台に置かれた観葉植物は、元気よく育っていた。


その植物のツルは際限なく成長して、すでに鉢を飛び出している。


「…ちょっと元気良すぎじゃないか。」

「せ、成長期なんですよ!かわいいじゃないですかっ。」


眉間にシワを寄せながら、男は観葉植物に睨みを効かせていた。




あくる日の朝。


男は工房に向かう。


今日は少女と鉢合わせ、一緒に工房に入った。

作業台に目をやると、ついにツルは机の上の工具にまで伸びて絡まっていた。


「あ…。」


少女は思わず口からこぼす。


「ルリ。」


男の声に、少女は恐る恐る男のほうを見る。


「えーと……ちょっと元気良すぎですねー。」


「捨てる。」

「ちょ…!ちょっと待ってください!御慈悲を!」


少女は慌てて止めに入る。


「さすがに邪魔だ。」

「じゃ、じゃあせめて窓際に移動させてください!」


「ダメだ。」

「そんな殺生な!」


慌てた少女は普段使わないような言葉がどんどん溢れてきている。


おろおろする少女を前に、男は観念したように深くため息をついた。


「はぁ…。じゃあ向こうに置いとけ。せっかくだからな。」

「あ、ありがとうございます!」


少女は工具に絡まっていたツルを丁寧かつ迅速に外すと、そそくさと窓元に移動させた。




次の日。


今日は朝から弟子はいない。


ジュエル工房に、先日のお礼ということで出掛けていた。


工房には男が一人。


ふと、窓のほうに視線を向けると、観葉植物が目についた。


「…水でもやるか。」


台所でコップに水を汲むと、少しずつ根本にかけてやる。


男は伸び切って垂れ下がったツルに、ため息混じりに思わず口元を緩めた。


「…支柱でも作るかな。」


開けた窓から入ってきた風が、少しだけ葉っぱを揺らした。


段々とストックが減ってきて焦ってきてます

春よこーい!ネタ降りてこーい!

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