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【超短編連載作品】風鈴工房 〜不器用な職人と居ついた弟子の物作り手帖〜  作者: さくらもち


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33/43

29頁目 昔馴染

29頁目です

よろしくお願い致します

「ううむ。ちょっとやっかいだな。」


依頼品を前に、珍しく男が悩み唸っている。


今日の工房の持ち込み修理は、やっかいな物だった。


「直らないんですか?」


弟子が作業台の上を覗き込む。


「いや、直るのかどうかもわからん。いかんせん、古すぎて見たことがない。」


依頼主が言うには、五十年ほど前のカラクリ人形らしい。

その古びた人形は、蒸気機関はおろか、バネも歯車も見当たらなかった。


「急ぎじゃないとは仰ってましたけど、断ります?」


男は諦めて工具を置いた。


「悔しいがな。」

「悔しいですねぇ。」


リーン


その時、工房の扉が開いた。


少女がいらっしゃいませ、と反応するやいなや、元気な声が飛び込んできた。


「いやー!探したよ!真面目くん!」


「うわ、シドウさん。」


青年は扉の前に立ち止まると、相変わらず変なポーズを取っている。


「……よくこの工房が分かったな。」


青年は一歩踏み込むたびに違うポーズを取る。


「なぁに。僕のガールズ情報網を使えば、わけないさ。」


「なんですかそれ。」


少女はすかさず突っ込みを入れる。


「そうか。帰れ。」


「ひどい!まだ来たばっかりなのに!」


相変わらずポーズを決めたまま仰け反る。


一連のコントのような流れに、少女はケラケラ笑っていた。


「あーおかしい。それで、シドウさんは何のご用ですか?」


青年は少女に向きを変えると、キザな礼のポーズになる。


「この前の続きさ。お嬢さん、僕とお茶しませんか。」


「あ、じゃあシドウさん、これ直せます?」


「スルー!?」


いちいちリアクションが大きい。


「俺に分からんのだから、こいつに分かるわけないだろ。」


「おや、真面目くんに直せないって!?任せてくれたまえ!」


そう言うと青年は、修理依頼のカラクリ人形を手に取る。


その表情はさっきまでのふざけた顔から一転、真剣な面持ちで細部を見つめた。


「これは…動力部が欠損しているね。簡単な蒸気機関だ。」


その言葉に工房主は反応する。


「蒸気機関?そんなわけあるか。五十年も前の人形らしいぞ。」


青年は手にした人形の内部を、工房主に向けた。


「イメージしてごらん。ここに軸を置けそうな溝があるだろう。バネをつけてタイヤをつければ立派な動く人形になる。」


弟子も興味深そうに覗き込む。


「それに、ここの窪み。装飾こそ無いが、なんとも蒸気石のハマりそうな形をしているじゃあないか。」


「あ……。」


言われて男はハッとする。


「依頼主に言われたのかい?そうとう古いものだって。人は記憶違いするものさ。先入観に囚われたね。」


「あーー……ちくしょう。そういうことか。」


男は一瞬悔しそうな顔をして、人形を受け取るとすぐに作業台に戻った。


その様子を、邪魔をしないように青年と少女は離れて見守る。


少し間を置いて、少女は口を開いた。


「シドウさん、実はすごい人なんですね。一発で見抜いちゃうなんて。」


「フフッ、見直したかい?」


青年は軽くウインクした。


「普段はどこでお仕事してるんですか?」


「僕かい?僕は根無し草のフリーの蒸気技師さ。修理専門のね。」


少女は少し驚いて話した。


「フリーとかあるんですね。でも、それだけの腕があったら工房を持てば繁盛するんじゃ。」


青年はその言葉に、少し間を置いて口を開いた。


「…機械はね、嘘はつかない。僕ってば何をやっても上手くできちゃうから、職人学校も首席で合格できたんだ。でもね。」


青年は真面目な顔をして話す。


「人は嘘と見栄の塊さ。女性でも男性でも、一筋縄じゃいかない。」


青年は楽しそうに笑う。


「だから僕は、人間そのものを攻略してるのさ。」


「攻略?」


「女性にはナンパ。男性には営業。相手がどうすれば心を開くのか、何を言えば喜ぶのか、何を嫌がるのか……実に興味深い。」


少女は少し呆れたような顔をする。


「……それ、研究なんですか?」

「もちろん!」


青年は胸を張る。


「まあ、それだけじゃ食べていけないから、蒸気技師として修理をしながら旅をしてるんだけどね。」


思っていた以上の軽薄さ…ではなく、その裏にある真剣な考えに彼の考えに、少女は改めて青年の顔を見る。


「意外と、負けず嫌いなんですね。」


「ははっ、そうかもね。」


青年は少し笑みを浮かべると、男のほうに視線を移した。


「でも、彼は機械みたいに真っ直ぐだ。愚直で、素直で、不器用で。職人学校のころからそれは変わらない。これでも彼のこと、買ってるんだよ?」


「それが長所でも短所でもありますけどね。」


少女はため息混じりに言った。


「えーと、キミ。お名前は?」


「ルリです。無理やり彼の弟子をしております。」


少女は自慢げに胸を叩く。


「そっか、ルリちゃん。今度いっしょにディナーでもどうだい?」


「お断りしますね。」


「手厳しい!」


青年はオーバーに仰け反った。


「お前は隙さえあればナンパだな。」


男が人形を持って、二人のそばに来る。


「おや、終わったかい。」


「あぁ。こんな感じでどうだ?」


蒸気石のはめられたカラクリ人形は、カタカタと動いていた。


「完璧だよ!さすが真面目くん!」


青年はすかさず謎のポーズを取る。


「終わったから帰れ。」


「辛辣!」


またしても仰け反る青年の姿と男のやり取りに、少女はケラケラと笑った。

個人的にすごい好きなキャラができあがりました。

シドウくんの印象はどうでしょうか?

反応次第で再登場させたいです

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