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【超短編連載作品】風鈴工房 〜不器用な職人と居ついた弟子の物作り手帖〜  作者: さくらもち


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28/43

24頁目 落とし物

24頁目です

よろしくお願いします

「疲れたな…。」

「疲れましたね…。」


夕暮れの住宅街を、師匠と弟子が歩いていく。


荷車には古びた機械の部品と工具類が積まれていた。


「なんで冬に限って暖房壊れるんですかね…。」


疲れのあまり、弟子の口から愚痴が溢れる。


「使う時しか壊れてるのわからんからだろ。」

「な、なるほど。」


出張修理の帰り。

そう難しくはない修理とはいえ、件数が多ければやはり疲れる。


工場用の暖房器具は大きめなので、一つの作業にも時間はかかってしまうものだ。


「仕事があるのは良いことなんだがな。」

「まあまあ。」


弟子がたしなめるように背中を押す。


荷車を押す速度は相変わらず遅いままだった。


「うえええええん。」


公園に差し掛かると、小さな女の子が泣いていた。


二人は顔を付き合わせると、男は深くため息をつき、少女は苦笑いを浮かべて女の子に駆け寄った。


「どうしたの?」


女の子は泣き続けている。


「ひっく…えーとね。ぬいぐるみ、落としちゃったの。」


「どこで落としたんだ。」


男も近寄り女の子に話しかける。


女の子は一瞬、ビクッとした反応をすると、また泣き出してしまった。


「おいおい…。」

「相棒、顔怖いんですから笑顔作ってください。」


男は困ったように頭をかくと、一歩距離を置いた。


「無茶言うな。」


少女はしゃがみ込み、女の子に優しく語りかける。


「どこで無くしたの?」

「わかんない。」


「大丈夫、お姉さんが一緒に探してあげる!」

「ほんとう…?」


女の子は涙を拭きながら、顔をあげた。


「疲れてるんだが。」

「そんなこと言わない!」


少女は女の子の手を引き、少しずつ話しかける。


「来た道戻ってみようか。」

「うん。」


「どっちから来たの?」

「あっち。」


女の子は住宅街の先を指さす。


「戻るのか…。」


男は荷車に手をかけてボソリと言った。


「ブツブツ言わない!」


少女は男の背中を強く叩くと、女の子と一緒に歩き始めた。


三人は住宅街の一角まで戻ってくる。

夕陽の差す住宅街は、人通りもなくひっそりとしていた。


「お友だちの家でたときはあったの。」


女の子は白い家を指さす。


「じゃあこっからスタートだね。」

「ここまでは無かったな。」


「見逃したのかもしれません。」

「誰かに拾われたか?」


男は荷台を引きずりながら、キョロキョロと見回しながら歩いていく。


少女も周囲を探しながら、女の子が不安にならないように絶えず話しかけていた。


「お名前は?」

「ミクちゃん。」


「いいお名前だね。ぬいぐるみは何色?」

「ピンクのウサギさん。」


「目立ちそうなもんなのにな。」

「ないですねえ。」


女の子はトボトボと、下を向いたまま歩く。


「あのね。お母さんにもらったウサギさんなの。」

「そっかぁ。じゃあ絶対見つけないとね。」


ぬいぐるみは見つからないまま、けっきょく三人は公園まで戻ってきた。


「無かったな。」

「どこ行っちゃったんでしょうねぇ…。」


二人の声に、女の子はまた両目に涙を溜め始めた。


そんな女の子の手を握りながら、少女はうろたえながら頭を撫でる。


男も困った顔をして、たまらず空を見上げてしまった。


「……こういう探し物の時って、上も見るといいんだったか?」

「え?」


「下ばかりじゃなくてな。」

「たしかに。」


その言葉にふと目線を上げると、公園の入口の植え込みの上に、ちょこんとピンクのウサギが座り込んでいた。


「あった!」

「誰かが拾って置いてくれたんだな。」


女の子は大事そうにぬいぐるみを抱きしめると、二人に向かってお礼を言う。


「ありがとー!」

「うんうん、気をつけて帰ってねー。」


「バイバーイ!」


女の子は笑顔を浮かべたまま手を振り、走って帰っていった。


「あって良かったですね。」

「やっと帰れるな。」


「一生懸命探してたくせに。」

「早く帰りたかっただけだ。」


男は荷台を引き返し、工房に向かって歩き始める。


「あ、そうだ。視点を変えるのは大事だぞ。仕事もな。」

「うわ、急に説教モード。」


「師匠だからな。」

「はいはい。」


疲れは残ったままだが、二人の足取りは少し軽く歩いていった。


挿絵(By みてみん)

いかがでしたでしょうか

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