23頁目 露店
23頁目です
よろしくお願いします
商店街の一角。
少しひらけたスペースに、男と少女は机を並べていた。
風鈴工房はたまに、ここの場所を間借りさせてもらって露店販売も行なっている。
売上はもちろんだが、こうやって名前と品を知ってもらう目的もあった。
「さぁて。テキトーに売るか。」
「どうせなら完売目指しましょうよ!」
男は机の上に布を広げ、アクセサリーと福袋を並べた。
値札を置き、遠くからでも手をとりやすいように並べる。
「福袋、売れますかね。」
「売れ残りだからな。」
「だから福袋ですって。」
休日の商店街は、人通りも多い。
行き交う人たちは買い物袋片手の主婦、親子連れ、散歩の老夫婦など様々だ。
「見てもいいですか?」
「どうぞ!ぜひ着けてみてください。」
少女が笑顔で対応する。
見るだけの人がほとんどだが、たまに話が盛り上がるとお買い上げに繋がる。
よほどの第一印象がないと、こういうものは売れにくい。
福袋に至っては全くだった。
「福袋、売れませんね。」
「怪しいからだろ。」
「値段、下げるか?」
「これ以上は赤字です。」
「アンタたち…なにやってんの。」
聞き慣れた声が聞こえた。
「おーヒスイ、ちょうどいいな。買ってけ。」
「…いらない。」
少女は女性に近づき、ピョンピョンと飛び跳ねている。
「ヒスイさん!お久しぶりです!」
「ルリちゃんこんにちは、あれから進展はあった?」
「し、ししし進展って!」
少女はあからさまに慌てている。
「進展?作業の進捗か?」
「何でもないです!」
少女の焦る姿を見て、女性はクスクスと笑った。
「しょうがないわね。」
女性は一旦二人から離れると、また露店のそばまで来た。
「あら?」
福袋を一つ持ち上げる。
「風鈴工房の福袋?」
「え?えぇ。」
少女は答える。
「じゃあ、一ついただこうかしら。」
男は思わず吹き出した。
「さっきいらないって言っただろ。」
「気が変わったの。」
そう言って代金を置く。
その様子を見ていた近くのおばちゃんが声をかけた。
「ヒスイさん、それいいの?」
女性は福袋を抱えたまま微笑む。
「風鈴工房だもの、外れはないわ。」
その一言だった。
「じゃあ私も一つ。」
「私も!」
「まだあります?」
「あと三つです!」
ルリが慌てて声を上げる。
「えっ、あっ、ありがとうございます!」
気が付けば人だかり。
最後の一つを買ったお客が去る頃には、机の上に並んでいた福袋はすべて姿を消していた。
「……売れた。」
ルリがぽかんと呟く。
「売れたな。」
男も少し驚いたように空になった机を見る。
女性は肩をすくめる。
「腕は本物なんだから。少し背中を押してあげただけよ。」
帰り際、男の横を通り過ぎながら小さく笑う。
「貸し一つね。」
「高くつきそうだ。」
「ふふ。」
翡翠色の髪を揺らしながら、人混みの中へ消えていった。
少女はその後ろ姿を見送りながら、小さく呟く。
「……ヒスイさん、すごいですね。」
男も珍しく素直に頷く。
「あぁすごいな。あれだけは真似できん。」
二人は大人の女性の強かさを垣間見たのであった。
ヒスイ姉さんの圧倒的デキる女力!




