22頁目 病み上がり
22頁目です
よろしくお願いします
工房が開いてから少し時間がたってから、工房主は出勤した。
「おはようございます。」
「あぁ、おはよう。」
「もう体調は良いんですか?」
「だいぶ楽になった。」
男はしばらく風邪で休んでいた。
留守番をしていた弟子は、その間の作業報告等々をすませた。
そして
「修理伝票、見せろ。」
「あ…勝手に修理受けちゃってスミマセン…。」
改めて謝罪する。
「でも!ちゃんと一人で直せました!」
「…そうか。」
短い返事。
「もっとちゃんと褒めてくださいよ!」
「コーヒー淹れてくれ。」
少女は口を尖らせたまま、お湯を沸かしに立ち上がる。
工房主は修理伝票を受け取ると、作業台で確認し始めた。
依頼内容、修理内容、料金。
事細かにまとめられた書類はとてもわかりやすく、修理の対応自体も悪くない。
「…上出来だ。」
男は小さく呟いた。
———
カチャ…
カチャ……
男は溜まっていた作業に手をつける。
「この金具、組んどいてくれ。」
「……はい。」
少女はまだ少しむくれたまま返事をする。
男は無言のまま、工具を手に取った。
カチャ
カチャカチャ
弟子は少し離れた場所から、改めて師匠の手つきえを見ていた。
無駄がない。
必要な工具を探すこともない。
迷いもない。
まるで手が、次に何をするか覚えているようだった。
少女は思わず手を止める。
昨日、自分も同じような修理をした。
ちゃんと直せた。
でも。
ここまで滑らかには動けない。
ここまで速くもない。
ここまで美しくもない。
「……。」
男は顔も上げずに言う。
「なんだ、その顔。」
「…別に。」
少女は頬を膨らませたまま工具を手に取る。
「悔しいだけです。」
男は小さく笑う。
「そのうちできる。」
少女は思わず顔を上げた。
「……。」
男はもう何事もなかったように作業をつづけている。
その横顔を見ながら、少女は工具を握り直した。
「……負けませんから。」
男は工具を置くことなく答えた。
「負けるな。」
工房にはまた、金属を削る心地よい音が響き始めた。




