20頁目 相棒の家
20頁目です!
よろしくお願いします
昼過ぎ。 珍しく工房には弟子が一人だった。
「今日、遅いですね…。」
納品の予定も寄り道する予定も聞いていない。
「寝坊…じゃないですよね。」
相棒は時間にはいい加減だけど、仕事をすっぽかすような人でもない。
「まさか…何かあったんじゃ…。」
急に不安が襲う。
事故。
事件。
病気。
考えれば考えるほど嫌な予感が溢れてくる。
たまらず立ち上がり、工房の扉に手をかけたところで、ふと止まった。
「そういえば…私、相棒の家、知らない。」
なにか、住所を知る手段がないか。
工房の中を見渡す。
少女は作業台の端に積まれた、郵便物を見つけた。
「これ……。」
そこに書かれているであろう住所。
「ごめんなさい、相棒…。」
普段なら絶対に見ない。 しかし、今日だけは違う。
ーーー何かあった気がする。
住所だけを頭に刻み込むと、少女は工房に鍵をかけ、駆け出した。
商店街を抜ける。
住宅街に入る。
工房では見たことのない、相棒の日常が少しずつ姿を見せる。
「こんなところに住んでたんだ…。」
少女は息を整えると、玄関の扉をノックする。
コンコン
返事はない。
コンコン
「相棒ー!」
……
ガチャ
ドアが少しだけ開く。
「…なんだ。ルリか。」
ドアの隙間からのぞかせた顔は真っ赤で、髪はボサボサ。壁にもたれていないと立っていられないほどぐったりとしていた。
「…え。」
「なんで来た。」
一瞬の混乱ののち、少女にどっと感情が押し寄せる。
「なんでじゃないです!」
「心配したんですよ!」
「もう!だから来なかったんですか!?」
次々と言葉が出てくる。
そんな少女を見て、男はやっと一言絞り出した。
「…悪いな。」
「悪いじゃありません!風邪ひいたんならそう言ってください!」
「…連絡する手段が、なかった。」
「もういいです!」
少女は男を支えながら、ベッドまで連れて行った。 ひどい熱だった。
「台所借りますよ。」
「散らかってるぞ。」
「今それどころじゃないです。」
少女は男に布団をかけると、台所に向かって、お湯を沸かし始めた。
小さな鍋にご飯と水を入れ、ゆっくりと火にかける。
男はぼんやりと、台所に立つ少女の後ろ姿を眺めていた。
「食べられます?」
「あぁ…。」
「あーん。」
「それはいらん。」
「熱ある人に拒否権はありません。」
「子ども扱いするな…。」
男は顔を真っ赤にしたまま、一口、二口と口に運ぶ。
「薬とか常備してますか?」
「あるとしたらその戸棚の中。」
薬を探し、水を用意する。
無我夢中だった少女も、少しずつ冷静さを取り戻す。
自分の勢い任せの行動に、だんだん恥ずかしくなってきたが、今は考えないようにした。
男に薬を飲ませ、しばらく台所の片づけをする。
やかんから蒸気の吐き出す音だけが部屋に響いていた。
ーーー
「じゃあ帰りますね。」
「あぁ。だいぶ楽になった。」
男は少女を玄関まで送る。
「明日も来ますから。」
男は壁に寄りかかったまま返事をする。
「…来なくていい。」
「来ます。」
「……。」
「返事。」
男は小さくため息をついた。
「……はいはい。」
「よろしい。」
ガチャ
バタン
扉が閉まる。
静かになった部屋で、男は小さく息をつく。
「…世話焼きめ。」
そう呟く口元は、少しだけ緩んでいた。
いかがでしたでしょうか
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