↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【超短編連載作品】風鈴工房 〜不器用な職人と居ついた弟子の物作り手帖〜  作者: さくらもち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/43

2頁目 羽のブローチ

2話目閲覧ありがとうございます!

朝から雨だった。


軒先を打つ雨音が、工房の静けさを余計に際立たせている。


男は作業台に膝をつき、ぼんやりと窓の外を眺めていた。


客は来ない。急ぎの依頼も無い。


工房の奥では、お湯の沸く音だけが小さく響いている。


「おーい。」


返事は無い。


「……ルリさーん?」


やっぱり返事はない。


イヤな予感がする。


男はゆっくり立ち上がる。


工房の奥を覗くと、少女が床に座り込んでいた。


「……何してる。」

「見れば分かるじゃないですか。」


分からなかった。


少女の目の前には、大きな紙が広げられている。


その周りには、絵の具と工具。


「ホントに分からん。」

「設計図です。」


設計図と言うにはあまりに粗い。

まるで子どもの落書きだった。


「カワイイでしょ。」

「かわいいのかそれ。」


デザインは良い。ただ、実用的か、実現的かは判断しかねる。


「ちょっと作ってみていいですか。」

「紅茶でいいか?」


少女は作業台に座り、自分の描いた設計図を元に何かを作り始めた。


拙い手つきで金具を切る。樹脂を入れる。接着剤を流し込む。


「雑。」


たまらず男が口を出す。


「それに左右もズレてる。削りもしっかり処理をしなきゃ。」


少女はぶんむくれている。


「…はい。」


それでも指示通り、丁寧な手つきで修正をする。


「ただ…発想は悪くない。」

「ホントですか!?」


ぱぁっと一瞬で顔が明るくなる。


「あとは、そう。ここをもう少し削って…」


いつの間にか一緒に作業を始めている。

少女はけして不器用ではない。

ただ、技術と言うにはまだまだ未熟である。


雨の音に混じって金属の擦れる音が響く。

「…できた。できました!かわいくないですか!?」

「まあ、合格点だな。」

「…偉そう」

「師匠だからな。」


そう、合格点。


接着剤ははみ出している。


左右のバランスはズレている。


でも。


色の組み合わせだけは異常に良い。


羽のついた、琥珀色のブローチ。


「良い色だな。」

「でしょ。」


完成したアクセサリーを窓辺に置く。


雨が止みかけている。


ガラス越しの薄明かり。


「……ちょっとだけ、売れそうじゃないですか?」

「調子に乗るな。」


二人はすっかり冷めてしまった紅茶を、ぐいっと飲み干した。


挿絵(By みてみん)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。