12頁目 ガラクタ披露会
定期更新遅くなってごめんなさい!
12頁目です!
よろしくお願いします
蒸気石のストーブの上に置いたやかんが、シュッシュッと煙を吐いている。
本格的な寒さに、工房は静まり返っていた。
「朝から何やってるんだろ。」
工房主は真剣な顔で、作業机に向かっていた。
何かを書き出して、組み立てて、また書き出して。
集中している時は少し声をかけづらい。
……少女は、コーヒーのおかわりを淹れることにした。
「できたー!」
突然、男が叫んだ。
「何ができたんですか。」
少女は机に近づいて、飲みかけのカップにコーヒーを注ぎ込む。
「よし、ルリ!いや、ルリさん!見ていただけますか!?」
「え、改めてなに、キモ。」
突然の敬語に、思わずこぼした。
「ふふふ、新発明ですよ新発明。」
「真面目な顔で何を作ってるかと思えば。」
散らかった机の上には、歯車の重なった義手のようなものが鎮座している。
「……なんですか。これ。」
「よくぞ聞いてくださいました!」
テンションがウザいなぁ。と思ったが口には出さなかった。
「その名も『自動ページめくり機』!本を読む時に、このアームが勝手にページをめくってくれる代物だ!」
「自分でめくったほうが早くないですか。」
「両手が埋まってる時もあるだろ?」
「そういう時は本を読まないのでは?」
試しにどうぞ、と言わんばかりに座らされる弟子。
なんの内容かもわからない本の1ページをじっと見る。
しばらくすると、歯車がギギギッっと動き出した。
その時。
バタン!
「ひぇ!」
本は勢いよく閉じると、机から転がり落ちた。
弟子が睨む。
師匠は目線をそらした。
「あー…パワーが強すぎたな。つ、次のはもっとすごいぞ!」
「え、まだあるんですか。」
半分呆れていたが、ここまで来たら付き合うしかない。
「寒い冬、お風呂に入るのが億劫な時もありますよね?」
「なにそのキャラ、キモい。」
自然と口から溢れていた。
「そんな時にこれ!ぽよんぽよタートルくん!」
机の上に出されたのは、目がギョロっとしていてピンクと紫に塗りたくられたボール状の亀のおもちゃ。
軟質素材だという亀は、投げても痛くないのだと言う。
「なにこのどぎつい色。」
「かわいいと思って。」
「不気味っていうんですよ。」
「この目な、ここを押すと動く。」
「うわ!怖い!」
お風呂のおもちゃだというその亀は、子どもが見たら大泣きしそうだった。
「えーと、続いては…。」
「まだあるの…。」
「いやー、朝からアイデアが止まらなくてな。」
「変な物でも食べたんですか?」
その後も変な発明品のお披露目会は続いたが、どれもガラクタばかりだった。
「え、朝からこれだけ作って、これ?」
机に広げられた物は、お世辞にも約に立ちそうにない。
「えーと…どれか売れそう…?」
「全部却下です。」
どうやら自信だけはあったようだ。
閃いた時は、革命だ!くらいには思っていそうである。
男はあからさまに落ち込むと、コーヒーを一口飲んで、片付け始めた。
「変なのばっか作って、もう。」
「スンマセン…。」
「試作品だってお金かかるんですよ。」
「おっしゃる通りです…。」
「処分するのも大変なんです。」
「ごめんなさいぽよ…。」
大の大人が小さくなって凹んでいる。
「あーもう…。あれ、でもこれ。」
弟子は発明品の一つの小型の扇風機を取った。
風量が弱すぎて、そよ風しか出なかったものだ。
「紅茶冷ますのに良さそうですね。」
「お?」
「それだけです。」
「売れそう?」
「調子に乗るな。」
カップのコーヒーが、静かに湯気を揺らめかした。
役に立たないガラクタと、小さな愛おしい発明品。
不器用な工房のノートには、今日も新しいページが書き込まれていく。
冬の日の風鈴工房は、今日も少しだけ、騒がしくて温かい。
今週も週3更新予定です!
次は火曜日、お待ちしております




