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【超短編連載作品】風鈴工房 〜不器用な職人と居ついた弟子の物作り手帖〜  作者: さくらもち


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12/43

10頁目 掃除

10話目です!

よろしくお願いします

「…暇ですね。」

「暇だな。」


窓の外は曇り空。

街路樹の葉は落ちて、風は冬の空気を連れてきた。


客は来ない。急ぎの依頼も無い。


ただ、静かに時計の音が響いていた。


「冬支度するか。」

「そうしましょう。」


今年も冬の季節がやってくる。


ボイラーの蒸気と白煙に包まれたこの街でも、山間のせいか雪は積もる。


すきま風の吹く工房では、暖房器具は生命線だった。


男は工房の奥からストーブを引っ張り出してきた。


「うわ。」

「ゲホッゲホッ。」


埃まみれ。


「見事に汚い。」

「去年、ちゃんと掃除してからしまえって言ったろ。」

「言われましたっけ。」

「言った。」


二人は雑巾を片手にパーツを分解しながら、丁寧に汚れを取っていった。


赤い宝石のような蒸気石もくすんでしまっている。


「とりあえず充填しておくか。」

「時間、かかりますかね。」

「もうオンボロだからな。」

「頑張ってくれてますね。」


男はストーブから蒸気石を取り外すと、表面の汚れを拭き取り、壁から伸びたパイプの下から蒸気を当てる。


石は少しずつ、命が宿るように光りはじめた。


「ついでに他も掃除しましょう。」

「いろいろ溜まってるもんな。」

「ゴミやガラクタがですね。」

「資材や試作品がな。」


二人は棚の掃除を始めた。


普段から少女が掃除をしているが、上の段はどうしても埃が溜まる。


男はひょいと顔を覗くと、灰色の棚板に顔をしかめた。


「凄まじいな。」

「誰かさんが掃除しないから。」

「忙しいんだよ。」

「閑古鳥なのに?」


次に二人は、棚を少し動かす。


壁との隙間に箒を入れる。


ゴミや埃と一緒に、コロコロと何かが転がった。


「…何の部品だ、これ。」

「ネジですね。」

「ネジだな。」

「見なかったことにしましょう。」


棚の下の隙間から入っていったのだろう。


今困っていないということは、きっと何とかなったはず。


「これ、何です?」

「うお、懐かしいな。」

「歯車が付いた、モップ?」

「お掃除便利グッズ。」

「使えそうで使えなさそう。」

「ほら、こうすると回る。」

「自分でやったほうが早そう。」


掃除はいつの間にか、過去の作品探索会になっていた。


「はー、おかしい!ほんと変なのばっか作ってますね。」

「アイデアが出た時は真剣に売れると思ったんだよ…。」


どれもこれもガラクタだが、役にたつと信じて作られたものばかりだった。


「そろそろ充填できたかな。」

 

さっきまでのくすみが嘘のように、蒸気石は赤く輝いていた。

 

「石、戻しますね。」

「まだ壊れてくれるなよー……。」


点火スイッチが押されると、年期の入ったストーブはゆっくりと火を灯しだす。


「良かった。これで冬を越せる。」

「そんな大げさな。」

「新しいの買う金ないだろ。」

「直せば良いじゃないですか。」


徐々に暖かい空気が部屋中に広がる。

ストーブの前で二人は同時に、ふあぁ、と大きな欠伸をした。


「……なんか眠くなってきました。」

「俺も。」


静かな午後。


窓の外に風が吹く。


「冬、来るなぁ。」



猛暑続きますが、工房は一足先に冬支度です。

脳内だけでも寒風を感じていただければと思いますw

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