表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/12

第十一話「白銀の鉄槌」


 その日の昼下がり。


 シロガネは、孤児院の庭にいた。

 ベルトル商会主人を救った、その日の依頼。子守の塩漬け依頼を、いつものようにこなしていた。

 ティムとレイ、そして他の子供たちが、シロガネを取り囲んでいた。


「シロガネおにいちゃん、今日もヒーローの話して!」

「いいぞ」


 シロガネは、芝生に座った。

 子供たちが、シロガネの周りに集まる。

 シロガネは、ヒーローの話を、始めようとしたその時。


 ティムが、ふと、声を低くした。


「ねえ、シロガネおにいちゃん」

「なんだ」

「最近さ……他の村や街で、子供がいなくなってるって、聞いたんだ」


シロガネの目が、僅かに細くなった。


「子供が?」

「うん。修道女さんたちが、夜にひそひそ話してるの聞いた。隣の街で何人か、その隣の街でも、子供がいなくなってるって」

「うんうん」


 別の子供たちも、頷いた。


「俺も聞いた」

「あたしも」

「夜になると、外に出ちゃダメって、シスターが言うんだ」


 レイが、シロガネの服の裾を、ぎゅっと、握った。


「シロガネ、にいちゃん」

「ああ」

「こわい」


 シロガネは、レイの頭を、軽く撫でた。

 そして、低い声で、答えた。


「お前たちに、手を出す悪が現れたら——」


 シロガネは、ティムとレイを、まっすぐ、見た。


「俺が、その悪を、砕いてみせよう」


 ティムが、目を、輝かせた。


「シロガネおにいちゃん、ヒーローみたい!」

「そうか」


 シロガネは、それだけ、答えた。

 レイが、シロガネの服の裾を、握ったまま、見上げた。


「噂になってる、けど。ほんとうに、シルバー・フィスト様って、いるの?」


 シロガネは、しばらく、黙った。

 そして、低い声で、答えた。


「いる」

「必ず、いる」


 レイの目が、輝いた。


「あいたいなぁ」

「ああ」


 シロガネは、レイの頭を、もう一度、撫でた。

 子供たちは、その後、シルバー・フィストの話で盛り上がった。

 シロガネは、いつものように、ヒーローの話を、始めた。


 だが、内心では——


 ——子供の誘拐。ほかの村や街。

 ——そして、この街でも、いずれ。


 シロガネの目が、細くなった。



――――――――



 ティムから誘拐の話を聞いた、その夜。

 シロガネは、宿の窓辺に立っていた。

 街は、もう静かだった。月明かりが、屋根を青く照らしている。遠くの方で、犬の遠吠えが聞こえた。


 ——子供の誘拐。


 隣の街、その隣の街。

 そして、この街でも、いずれ。


 ——いや。


 シロガネは目を細めた。

 ティムの言い方からすると、既にこの街でも動きがあるのかもしれない。

 修道女が夜にひそひそと話していた、ということは、孤児院でも何か感じ取っているということだ。


 ——なら、待つ理由はない。


 シロガネは静かに身支度を始めた。

 革のジャケット。ありふれた旅装。武器は持たない。


 ——シルバー・フィストの仕事だ。


 宿の扉を、音もなく開けた。

 夜の街道に出る。

 シロガネの足は、街の外へ向かっていた。


――――――――


 数日、街中と街道の調査を続けた末。

 シロガネは街道沿いの森の枝の上に立っていた。

 夜目は利く。十二年間、毎晩深夜にダンジョンに潜り続けた男だ。星明かりだけで、街道のすべてが見えた。


 仮に周囲が真の暗闇に包まれていたとしても、規格外の強さを持つシロガネなら、目を瞑っていても周囲の様子は分かる。

 昼間は塩漬け依頼をこなし、夜は街中で噂を集めて街道を見回る。日中の表情には何も出さない。寝不足の様子も、見せない。徹夜の数日など何ということもなかった。


 そして、その夜。


 街道の遠くから、馬車が一台、近づいてきた。

 シロガネは枝の上で、目を細めた。


 ——来たか。


 馬車は、御者を含めて五人の男が乗っていた。

 御者の他に、剣を持った男が一人。そして馬車の周りを囲むように、武装した男が三人。全員、夜目を避けるように、フードを深く被っていた。


 馬車自体は、普通の幌馬車に見える。


 だが——

 シロガネは、馬車の中からの気配を感じ取った。


 いくつもの、小さな、震える気配。


 ——子供だ。


 それも、複数。

 シロガネは木から音もなく降りた。

 街道の少し先、森の影が深くなる場所まで、足音を立てずに移動する。


 シロガネは静かに足を止めた。


 ——ここでいい。


 街道の真ん中。月明かりが、ぼんやりと地面を照らしている。

 シロガネは、堂々と街道の中央に立った。

 馬車が、近づいてきた。

 御者が、シロガネに気づいた。


「——あ?」


 御者が、馬を止めた。

 護衛の男たちが、武器に手をかけた。


「おい、なんだお前」

「夜中に何してる」

「邪魔だ。退け」


 シロガネは、答えなかった。

 ただ、街道の真ん中に、堂々と立っていた。

 長身。革のジャケット。腰には武器もない。

 護衛の男たちが、互いに顔を見合わせた。


「おい、どうする」

「ただの旅人だろ。どかせろ!」


 リーダー格らしい男が、剣を抜いた。


「おい、退け。退かないなら——」

「お前たち」


 シロガネが、口を開いた。

 低い声だった。


「子供を、運んでいるな」


 男たちの動きが、止まった。


「……あぁ? なんのことだよ?」

「誤魔化すな。気配でわかる」


 シロガネは、馬車をじっと見た。

 布で覆われた荷台の中から、子供たちの怯えた気配が立ち上ってくる。

 シロガネの目が、細くなった。


「そいつらは、お前たちが連れ去ったのか」

「……」

「答えろ」


 シロガネの声に、冷たさが混じった。


「答えろ、と言っている」


 リーダー格の男が、舌打ちをした。


「面倒な野郎だな」


 剣を構えた。


「ガキは商品だ。奴隷商に売れば、いい金になるのは知ってんだろ」


 男はにやりと笑った。


「お前、今なら見逃してやってもいいぜぇ? 逃げねぇってんなら……その首が飛んでるかもなぁ!」


 その瞬間。

 シロガネの中で、何かが、燃え上がった。


 ——子供を、商品だと?

 金になるから、誘拐する。


 ティムが言っていた、街でいなくなる子供たち。

 隣の街、その隣の街、攫われた子供たち。


 ——全部、こいつらと、こいつらの組織のせいだ。

 シロガネの拳が、震えた。


「許さん……」


 低い声だった。


「何?」


「許さん、と言った」


 シロガネは、ゆっくりと、右手を天に向けて掲げた。


「お前たちのような屑を——」


 護衛の男たちが、武器を構えた。


「俺は、絶対に許さない」


 そして——


「変身ッッッ!!!!」


 絶叫が、月明かりの夜を貫いた!

 光が、爆ぜる!


 白い。白い。白い。月明かりの夜を、白銀の光が塗り潰した。


 御者が目を庇った。護衛の四人が後退した。馬が嘶いた。

 光の中から、巨大な何かが立ち上がった。

 軋む音! 白銀の鎧! 広がる翼!

 身長二メートル五十センチを超える、白銀の巨人がそこにいた!

 背後で凄まじい爆発が巻き起こり、砂煙が舞う!


「は——!?」

「な——!!」

「な、なんだ、こいつ……?」


 リーダー格の男が、剣を取り落とした。

 シロガネは、ゆっくりと一歩、踏み出した。

 地面が、揺れた。


「俺は」


 シロガネの声が、低く、夜に響いた。


「悪を砕く、白銀の鉄槌!」


 翼が、月明かりに照らされた。


機動鎧武者ギア・アダマンタイト!!」


 拳を、握った。


「シルバー・フィストッッッ!!!!」


 リーダー格の男が、震える手で剣を拾おうとした。


「く、くそ!! 噂の白騎士か!!」


 遅い。

 シロガネは一歩で間合いを詰めた。


「お前は、まだ使い道がある」


 シロガネは男の襟首を掴んで、街道の脇に放り投げた。


「ぐぁ!!」


 男は気を失って転がった。


 ——こいつは、生かしておく。


 情報源として、必要だ。


 ——だが、他の四人は。

 シロガネは、振り返った。


「に、逃げるぞ!! 勝てるわけねぇ!!」


 護衛の二人が、悲鳴を上げて逃げ出す。

 シロガネの目が、冷たく光った。


 ——子供を商品と呼んだ屑どもだ。爆散させてやる!


 シロガネは、二人に向かって踏み込んだ。

 最初の一人の横っ腹に、拳を打ち込んだ。


 ドゴォォォォン!!!!


 ただの一撃ではなかった。


 ——本気の、一撃。


 男の体が——爆ぜた。

 血しぶきが、月明かりの中で、霧のように散った。男だったものが、原型を留めずに、街道に散らばった。


 二人目の男が、悲鳴を上げて逃げようとした。

 シロガネは振り向きざまに、男の背中に拳を打ち込んだ。


 ドゴォォォン!!!!


 二人目も、爆ぜた。

 御者が、震えながら馬車から飛び降りた。

 逃げようとした。

 シロガネは、翼で滑り込んで御者の前に立ち塞がった。


「ひ、ひぃっ——」


 御者が尻餅をついた。


「お前も、子供を運んでいた共犯だな」

「ち、違っ——お、俺はただ、頼まれて——」

「同じだ」


 シロガネは、御者の頭を掴み、そのまま地面に叩きつけた!


 ズドン。


 御者の頭蓋が砕け、血が街道に広がった。

 最後の一人が、腰を抜かして尻餅をつきながら後ずさる。


「や、やめろ……! 助けて…助けてくれぇ!!」

「助けて、というのは——」


 シロガネが、ゆっくりと近づいた。


「お前たちが、あの子供たちを連れ去る前に、その子供たちが叫んだ言葉だな」


 男の顔が、青ざめた。


「お前たちは、その声を、無視した」


 シロガネの声に、明確な殺意が宿った。


「だから——お前たちのその声は、届かない」

「く、くるな——!!」


 そのまま——

 男の胸に、拳を打ち込んだ。


 ドゴォォォン!!!!


 男が、爆ぜた。

 街道に、転がる、肉片と血。


 そして——

 街道の脇で、気を失っている、リーダー格の男一人。

 四人、爆散させた。

 シロガネは、深く息を吐いた。


 ――よし。これがヒーローの本当の仕事だ。悪を爆散させるタイプのヒーローだからな。おっと、情報を聞き出さねば……。


 シロガネは、リーダー格の男の前にしゃがんだ。

 男の襟首を掴んで、強引に引き上げた。

 頬を、軽く叩いた。


「起きろ」

「うっ——」


 男が、目を覚ました。

 そして、シルバー・フィストの光る兜の目と、目が合った。


「ひっ——!!」


 男が、悲鳴を上げた。

 周囲を見た。

 仲間の、爆散した、肉片を見た。

 男の体が、震え始めた。


「な、なんで……なんで、俺だけ……」

「お前は、まだ使い道がある」


 シロガネは、低い声で言った。


「組織のことを、話してもらおう」

「そ、組織……?」

「お前たちは駒だろう。上にもっと大きな組織がある。違うとは言わせん」


 シロガネは、男の襟首を強く掴んだ。


「全部包み隠さず話せ。一つでも嘘を言えば——」


 シロガネは、爆散した男たちの肉片を、顎で示した。


「ああなると思え」


 男の顔から、完全に血の気が引いた。


「は、話します! 話しますから、殺さないで——!」


 シロガネは、男に色々と尋問した。

 組織の名前。商品の流通経路。雇い主の特徴。

 男は知っていることを、全部話した。


 組織の名は——『黒の影(シャドウフォール)』。

 奴隷売買、誘拐、密輸、暗殺。あらゆる裏稼業を扱う、巨大組織だった。


 この街道での誘拐は、組織のごく一部の動きに過ぎないという。

 シロガネは、全てを聞き終えた。


 そして、男を縛り上げて、街道の脇に転がした。


「明日の朝、騎士団の巡回が来る」

「あ、あの、俺は——」

「お前は、今、話したことを、騎士団にも全部話せ」


 シロガネは、低い声で言った。


「話せば、お前は牢に入る。話さなければ——」


 シロガネは、男の額に、軽く指を当てた。


「俺が、また来る」


 男は、何度も頷いた。

 そして指で男の額を弾き、意識を刈り取る。

 シロガネは、踵を返した。


 そして——馬車に向かって、歩き出した。


 シロガネは、馬車の荷台に手をかけた。

 布が、被されている。

 布越しに、子供たちの気配が伝わってくる。


 複数。多分、六人。


 布をめくる前に、シロガネは深く息を吸った。


 ——子供たちは、怯えている。


 急に巨人が現れたら、もっと怯える。


 ——慎重に、いこう。


 シロガネはゆっくりと布をめくった。

 馬車の荷台には、檻があった。


 檻の中に子供たちがいた。

 六人。全員、年の頃は六歳から十歳くらい。手を縛られ、口に布を噛まされていた。

 子供たちが、震えながら、シロガネを見上げた。


 ——白銀の巨人。


 子供たちの目が、見開かれた。

 シロガネは、できるだけ低い姿勢を取った。

 巨大な白銀の鎧が、月明かりの中で輝いた。


「もう、大丈夫だ」


 シロガネは、低い声で言った。


「俺は、お前たちの味方だ」


 子供たちが、お互いを見合った。

 声は、出せない。口に布を噛まされている。

 シロガネは、檻の鍵に手をかけた。

 軽く、力を込めた。


 ガキッ。


 鍵が、簡単に砕けた。

 シロガネは檻を開けて、子供たちの口の布を、一人ずつ、丁寧に外した。

 そして、手の縄も、一本ずつ、外した。

 最後の子供の縄を外し終えた時——

 一番小さな女の子が、シロガネの兜を、まっすぐ見上げた。


「お、おにいちゃんは、だれ?」


 シロガネは、子供の前に膝をついた。

 巨大な兜を、子供の目線に近づけた。

 そして、低い声で、答えた。


「俺は」

「悪を砕く、白銀の鉄槌」

機動鎧武者ギア・アダマンタイト

「シルバー・フィストだ」


 子供たちの目が、輝いた。


「シ、シルバー・フィスト……!?」

「ヒーローの……ヒーローの、シルバー・フィスト様!?」

「す、すげぇ……!!」

「本物だ……!!」


 子供たちが、口々に叫んだ。

 最初は震えていた声が、徐々に興奮の声に変わっていった。

 シロガネは、内心でガッツポーズをした。


 ——最高だ。


 シロガネは、立ち上がって子供たちに言った。


「夜の街道は危ない。途中まで、俺が送ろう」


 子供たちが、頷いた。


 シロガネは、子供たちを馬車の荷台に乗せて、御者台に座った。

 縛られた誘拐犯のリーダーは、街道の脇にそのまま転がしておいた。


 爆散した四人の死体は——朝になれば、騎士団が見つけるだろう。


 馬車を走らせた。

 街道を、慎重に走らせる。

 子供たちが、馬車の中から、シロガネに話しかけた。


「シルバー・フィスト様! 俺、お父さんに話したいです!」

「あたし、お母さんにもいう! シルバー・フィスト様に助けられたって!」

「俺、シルバー・フィスト様みたいになりたい!」


 シロガネは、馬車を走らせながら、答えた。


「お前たちも強くなれるさ」

「なれる!?」

「ああ。お前たちは、生きている。生きている限り、なんにでもなれる」


 子供たちが、目を輝かせた。

 街の入り口が、見えてきたところで——

 シロガネは、馬車を止めた。


「ここで降りろ」

「はい!」

「あの、シルバー・フィスト様は……?」

「俺は、ここまでだ」


 シロガネは、子供たちを馬車から降ろした。

 街の入り口の門番が、夜中の馬車に気づいて、こちらに走ってくるのが見えた。


「あれが、街の門番だ。お前たちの名前と、家族の名前を言え。あとは、彼らがなんとかしてくれる」

「シルバー・フィスト様、ありがとうございました!!」

「ありがとう!!」

「シルバー・フィスト様!!」


 子供たちが、口々にお礼を言った。

 シロガネは、軽く右手を上げて応えた。


 そして、踵を返した。


 馬車を置いて、森の方へ歩き出した。

 子供たちの声が、遠くで聞こえる。


「シルバー・フィスト様ーー!! ありがとうございましたーー!!」


 シロガネは、振り返らなかった。

 ただ、口元には、満面の笑みが浮かんでいた。


――――――――


 森の中で、シロガネは変身を解いた。

 長身の青年が、夜の森を歩いていた。

 口元には、まだ、笑みが残っていた。


 ——最高だった。


 ヒーローとして、子供たちを救った。

 変身も、名乗りも、完璧に決まった。

 だが、これで終わりではない。


 シロガネの目が、細くなった。


 ——『黒の影(シャドウフォール)』。


 巨大な裏稼業の組織。

 末端を爆散させただけでは、止まらない。

 次々と、誘拐犯が現れる。


 ——大元を、叩く。


 それが、シルバー・フィストの仕事だ。

 シロガネは、静かに歩き続けた。

 宿に戻った時には、まだ夜明け前だった。

 ベッドに倒れ込んだ。


 眠りに落ちる直前——

 シロガネの顔には、満面の笑みが浮かんでいた。


 その夜の出来事は、翌朝、街中に広がった。


「聞いたか! シルバー・フィスト様が、また現れた!」

「子供を誘拐していた連中を、全部叩きのめしたって!」

「子供たちを、無事に救出したらしいぞ!」

「し、しかも今回は——四人、爆散させたって……!」

「爆散!?」

「ああ、街道に肉片と血しかなかったって、騎士団が言ってる!」

「シルバー・フィスト様……本気で動いたら、そんなにすげえのか……」

「悪に対しては容赦ない、ってわけだな」

「シルバー・フィスト様、ばんざーい!!」


 街は、また、英雄の話で持ちきりだった。

 ただ、今回は——畏怖の声も、混じっていた。

 ギルドの食堂で、リナがその話を聞いていた。

 リナは、エールを片手に、目を細めていた。


 ——今回は、殺した。


 リナの胸の中で、何かが、強く、動いていた。

 廃村では、生かして帰した。山賊たちも、街道で発見された二十人も、全員生きていた。

 だが、今回は——四人、爆散させた。


 ——あの方は、悪を区別している。


 殺さない悪と、殺す悪を、区別している。

 そして、今回の誘拐犯は——殺すべき悪だと、判断した。

 リナは、深く、息を吐いた。


「リナ様」


 エルネが、静かに、リナの横顔を見た。


「……どうしますか」


 リナは、しばらく黙った。

 そして、エールを置いた。


「動くわ」

「動く、というのは」

「あたしたちも、誘拐組織の捜査依頼を受ける」


 リナの目が、光った。


「シルバー・フィスト様の動きとは、別に。あたしたちは、あたしたちにできることをする」

「リナ様……」

「メイファ、エルネ」


 リナは、二人を見た。


「協力してくれる?」


 メイファが、おっとりと頷いた。


「もちろんですよ〜」


 エルネも、静かに頷いた。


「……承知しました、リナ」


 リナは、ふっと笑った。

 そして、ギルドの掲示板に向かって、立ち上がった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ