第56章:内なる静寂 (Silence Without)
頭部が割れた。
仮面の中の『何か』が、悲鳴を上げた。
「エイモン様に向かって、よくもそんな口を!!」
その影は爆発的な力で拘束を引きちぎり、波のように闇を撒き散らしながら現れた。『平原』の白い床がその足元でひび割れる。エイモンは心臓を早鐘のように打たせながら後ずさった。
(俺は……何てことをしてしまったんだ?)
恐怖が彼の胸を打った――生々しく、物理的で、彼が知る最も古い感情。
黒い影が咆哮を上げた。
そして、ピタリと動きを止めた。
その内側から『何か』が押し出されてきた。二つ目の顔が、影を引き伸ばしながら側面から強引に突き抜けてくる。空色。穏やかで、忍耐強い顔。
「怖がらないで」それは優しく言った。「大丈夫だから」
エイモンは凍りついたように立ち尽くした。
恐怖が消え去ったわけではない。だが、それはもはや絶対的なものではなくなり、細かくひび割れていった。
次の瞬間――明るく、ハッとするような笑い声が響き、青白い人影がこぼれ落ちるように飛び出してきた。両腕を大きく広げ、まるで長い間ドアが開くのを待ちわびていた者のように、その場で一度クルリと回転する。
「歓喜!!」
エイモンは凝視した。
さらに次々と姿を現す。赤。黒。青。白。紫。
彼らは皆、エイモンと同じ顔をしていた。ただ、一つの色が単一の周波数に還元されるように、それぞれが『たった一つの感情』へと極端に純化されていた。彼らは証人のように平原に集った。
『恐怖』は椅子に残った。走らなかった。戦わなかった。ただ両膝を抱え込み、肘掛けを強く握りしめ、体をできるだけ小さく丸めた。彼は『静止』を選んだ。
『激怒』の選択は違った。
彼は壁を震わせるような雄叫びと共にグリレットに飛びかかり、その拳で彼を一歩、また一歩と後退させた。『信頼』が彼と並走し、死角を塞ぎ、退路を断つ。『歓喜』は予測不能な軌道で飛び回り、素早い一撃を見舞っては、カウンターを紙一重で躱しながら高笑いした。
一瞬、グリレットは押されていた。
だが、彼は反撃に出た。
彼の意志のままに、平原が歪む――床がわずかに柔らかくなって『激怒』のバランスを崩させ、壁が内側へ傾き、距離があるべきでない方向へと引き伸ばされる。彼には、この地形を学ぶための何年もの時間があった。この空間のすべての縫い目を把握していた。
『激怒』が重い一撃を食らった。よろめいたが、倒れはしなかった。
『愛』は、戦闘には加わらなかった。
彼はエイモンの前に膝をついた。
「ごめんなさい」『愛』は言った。その声は震えていた。「君がこれらすべてを、一人で抱え込まなきゃならなかったこと……本当に、ごめんなさい」
エイモンは言葉を見つけられなかった。
「アンドザニが僕たちの一族を滅ぼし」と『愛』が続ける。「君がどん底にいた時――僕たちは生まれた。君の感情が形を持ったんだ。君のすべての記憶。すべての痛み。それらが、どうしていいか分からないまま、君の心の中に突然現れた」
彼らの背後で、『激怒』がグリレットを地面に叩きつけた。
「『恐怖』は隠れたがった」『愛』は言った。「『歓喜』は何が何でも君を生かそうとした。『信頼』は、世界がまだ終わっていないと信じたがった」彼は息を呑んだ。「そして僕は……君に、もう一度愛されていると感じてほしかったんだ」
彼の表情が、硬く引き締まる。
「でも、グリレットは僕たちに、自分は『共感』だと言った。もし僕たち全員が一度に表に出たら、その過負荷で君は壊れてしまうと。だから自分に任せろと言ったんだ。……僕たちは安堵したよ。だって、君は無事だったから」
グリレットが『信頼』に容赦ない肘打ちを食らわせ、平原の端まで滑らせた。「そしてお前は『無事』だっただろ」と彼は、ほとんど温かみすら感じる声で言った。「俺がちゃんと対処してやったじゃないか」
「彼は、君が認識しやすい姿をとった」と『愛』。「君の想像上の友達。それが現実になった姿を。彼は君を慰めた。だから僕たちは彼に任せたんだ。……だって、君が笑っていたから」
彼は両拳を握りしめた。
「彼が『本当は何なのか』、僕たちは知らなかったんだ」
戦況が傾き始めた。グリレットがリズムを掴む――『信頼』を弾き飛ばし、『激怒』を空間の彼方へ殴り飛ばす。地形を操作する彼の力が、本来あり得ないはずの優位性を彼に与えていた。
「君が彼に心を開くにつれて」『愛』が続ける。「彼は君の『悪徳』になった。一番のお気に入り。君自身に次ぐ、第二の存在に」『愛』の声は、今やひどく落ち着いていた。「……それが、彼を僕たち全員を合わせたよりも強くしてしまったんだ。この平原全体を支配する力を、彼に与えてしまった」
エイモンの頭がズキズキと痛んだ。
「彼の本当の正体は」と『愛』。「『嫉妬』だ」
グリレットの目が燃え上がった。
「彼は、君が築こうとするすべての人間関係を嫉妬した。彼以外に向けられる、君のほんの一部でも受け取るすべての人間を。彼は君を、完全に自分だけのものにしたかったんだ」『愛』は一拍置いた。「だから、彼はそれを『確実』なものにした」
記憶が、奔流となって押し寄せてきた。
彼の歌が台無しにされたこと――音が外れ、人々が遠ざかっていったこと。誰かが近づいてくる前に、相手を追い払ってしまったこと。自分が起こした記憶のない破壊の跡で目を覚ましたこと。ゼン(Zen)の人々が自分に背を向け、その理由が全く分からなかったこと。
モトの顔。ゼンから脱出するトラックに乗って以来、エイモンが感じたすべての疑念を、グリレットの声が形作っていたこと。
タナカの『恩寵の反転』。あの時湧き上がった激しい憎悪――エイモンはてっきり、拘束された影から来たものだと思っていた。
違ったのだ。
グリレットが、アンドザニを殺せと彼を唆したこと。
そして、極めて鮮明な記憶――トラックの中。窓から吹き込む風。忍耐強く彼に手を差し伸べようとするシェウの声。批判的な色を一切持たずに振り返るモトの顔。
――『お前の友達になれるのは、一人だけだ』。
――『俺は、こいつを誰ともシェアする気はねえよ』。
エイモンは息を呑んだ。
『愛』は泣いていた。「彼が、君が誰とも繋がれないようにしていたんだ」『愛』は柔らかい声で言った。「君にできなかったんじゃない。彼が『させなかった』んだ」
エイモンは平原を見渡した――ひび割れた床、散り散りになった自分自身の感情たち、そして、借り物の権力でその中心に立つグリレットの姿を。
そして彼が『愛』の目を見た時。長い間感じたことのなかった『何か』が、彼の中で起きた。演技でもなく、無理に手を伸ばして得たものでもない――ただその感情自体が、誰の許可も得ずにそこに到達したのだ。
自分自身への『愛』。
他のすべての感情が成立するための、第一の条件。
グリレットが『激怒』と『信頼』を力任せに放り投げた。二人はエイモンの足元に墜落した。
「だから何だってんだ!?」グリレットの声が裏返る。「俺は『いい子』を演じてやっただろ! お前の中の最悪な部分を封じ込め、お前を守ってやった! なのにこの仕打ちは何だ――お前のその惨めな感情どもが束になって俺に歯向かうっていうのか。俺よりも、こいつらを選ぶって言うのか!?」彼の目は今や狂気を帯び、ひどく不安定だった。「だったら……全員ここで死ねばいい!!」
エイモンの中の何かが、静かになった。
空虚ではない。静寂だ。ある空間が、ついに『本来の持ち主』の手に渡った時に訪れる、あの特有の静けさ。
彼は立ち上がった。
『愛』も彼の隣に立ち上がる。「ここは君の心だ」と『愛』は言った。「僕たちを作ったのは君だ。君なら、彼に勝てる」
『激怒』が身を起こす。その拳からはまだ影が滴っていた。「だいたい、なんであんな奴に力なんか渡しちまったんだよ」
『信頼』が立ち上がる。「大丈夫」と彼は言った。それは本心からの言葉だった。「今はただ、彼を信じればいいんだ」
『歓喜』が切れた唇でニヤリと笑う。「嫉妬クン。……あんた、終わったわよ」
エイモンはグリレットを見た。
「もう、お前の声は聞かない」彼が言った。
グリレットが先手を取った。
彼が平原を叩く――床が傾き、壁が迫り、物と物との距離がぼやけ始める。
エイモンはそれを感じ取った。
「ダメだ」と彼は言った。
床が硬化する。壁が真っ直ぐにスナップする。空間が固定される――シンプルで、白く、彼自身の空間として。
グリレットが歯擦音を立てた。「お前がここを制御できるとでも思ってんのか?」
「俺が、ここを繋ぎ止めるんだ」とエイモン。
『激怒』がグリレットに激突した。『信頼』が退路を塞ぐ。『歓喜』がヒット・アンド・アウェイを繰り返す。グリレットは反撃し、空間を再構築しようと何度も試みた――傾け、歪ませ、引き伸ばそうとする――が。
その度に、エイモンがそれを止めた。
手を上げる。足を踏みしめる。拒絶する。その一つ一つが、静かで、そして絶対的な力を持っていた。
グリレットが包囲を抜け出し、エイモンに向かって一直線に突進してきた。
エイモンは動かなかった。
二人は中央で激突した。
グリレットの顔が、エイモンの顔の数センチ先にあった。彼を覆っていたすべての偽装が剥がれ落ちている――皮肉めいた笑みも、余裕も、何も気にしていないという演技も。その下から現れたのは、ただただ最も古く、最も醜い『一つの感情』だけだった。
「これで勝ったつもりか?」グリレットが唸る。
アンドザニの炎がフラッシュバックする。悲鳴。顔、顔、顔。
「いや」エイモンは静かに言った。「殺すことは、俺にとっての勝利じゃない」
彼は一歩、距離を詰めた。
「お前は、後悔と共に生き続けるんだ」
グリレットが口を開きかけた――。
壁が、せり上がった。
叩きつけるような音ではない。崩れ落ちるような音でもない。ただ――『上昇』した。白く、清潔で、明確な意志を持った壁が、暴力性の一切ない動きでグリレットの周囲を取り囲む。一つの部屋。その部屋を囲む、もう一つの部屋。さらにその外側を囲む部屋。鍵を回すような澄んだ、決定的な音と共に、層が重なるごとに一つずつ封印されていく。
層が重なるたびにグリレットの声は小さく、遠ざかっていき、一番外側の壁が閉じた時、平原には完全な静寂が訪れた。
『激怒』が息を吐き出した。『信頼』がポケットに手を入れる。『歓喜』が両腕を頭の上に伸ばし、痣だらけの顔で笑う。『愛』は、何も求めずすべてを与えるような表情でエイモンを見つめていた。
『恐怖』が、肘掛けからゆっくりと手を離した。彼は何も言わなかった。ただ、初めて、顔を上げた。
エイモンは、自分自身の心の中の静寂に立っていた。白の中の、黄色。
初めて、この空間が「彼が到着するのをずっと待っていた」かのように感じられた。
現実世界
川辺の煙が薄れていく。
何かが外側へと弾け飛んだ――白く、明るく、両腕を大きく広げて――。
「ジョオォォ――」
モトの拳が、純粋な反射神経でそれに炸裂した。その影は後方へ吹き飛び、地面に叩きつけられた。
モトは凍りついた。拳を振り上げたまま。
『歓喜』は目を丸くして彼を見上げ、唖然とした後、フラフラと呆然とした笑い声を上げ、そのまま優しくエイモンの内側へとフェードアウトしていった。
エイモンがハッと息を吹き返し、横向きに寝返りを打って川の水を吐き出した。「モト――待て――あいつは違う――」
「分かってる」モトは拳を下ろした。「分かってるよ。ただ――」彼は自分の手を見た。「あいつ(グリレット)かと思ったんだよ」
エイモンはもう一度咳き込み、それから笑った――不意を突かれたような、本物の笑い声。
「……まあ、無理もないな」
一瞬の沈黙。川の水が彼らの横を流れていく。雨はまだ止んでいなかった。
モトは彼を注意深く観察した。エイモンの顔の何かが変わっていた――まだ疲れていて、ずぶ濡れで、震えてはいる。だが、ずっと軽くなっていた。まるで、重い荷物を下ろした後のように。
彼は手を伸ばし、エイモンの黄色いバケツハットを拾って、彼の頭に被せ直してやった。
エイモンが彼を見た。
「……ありがとう、モト」と彼が言った。
モトは少しの間彼をじっと見ていた。何に対してお礼を言われているのか完全には分かっていなかったが、そんなことはどうでもいいとばかりに微笑んだ。
「無事でよかったよ」彼は立ち上がり、手を差し伸べた。「さあ、他の奴らのところへ戻らないとな」
エイモンはその手を取り、立ち上がると、頭上にそびえる絶壁を見上げた。
「行こう」と彼が言った。
そして、二人は崖を登り始めた。




