第55章:解き放たれた怪物 (Monster unchained)
エイモンが落下していく様を、モトは血の気が引く思いで見つめていた。
思考が形を成すより先に、彼の体は動いていた。「デカい方は頼んだぞ!」崖に向かって全力疾走しながら、彼は背後のスネークとタナカに叫んだ。「行け――あいつは俺が助ける!」
スネークは問うまでもなく理解した。彼は頷いた。タトゥーに宿る緑の光は弱まっていたが、まだ消えてはいない。
モトは崖の淵に到達すると、迷わず跳躍した。
落下の最中、彼は黒曜石の剣を引き抜き、砂岩の絶壁へと突き立てた。火花が飛び散る。摩擦が下降速度を殺していく――完全ではないが、十分だ。彼は身をよじり、下の水面を狙って激突した。
冷気が彼を飲み込んだ。激しい急流が彼を押し流そうとする。彼はそれに抗い、暗い水中を必死に走査してエイモンを探した――闇の中でゆっくりと漂う薄い影。彼はそこへ向かって突き進み、その胸に腕を回して引き上げた。
岩だらけの岸辺に二人で這い上がると、モトはエイモンの体を激しく揺さぶった。
エイモンが咳き込んだ。身をよじり、生きていることをまだ処理できていない、あの困惑した恐怖の表情で目を開けた。「グリレット……」彼はモトが掴んでいる手から伝わるほど激しく震えながら、掠れた声で言った。「あいつ、いなくなったと思ったら……急に出てきて、それで……」
「分かってる」モトは言った。広場の向こう側から見たグリレットのあの表情。何が起きたのか、彼には正確に分かっていた。そして、それによって自分の中に沸き起こった激しい怒りは、今は一旦脇へと追いやった。「だったら……今度は俺たちがあいつを引き摺り出しに行く番だ」
彼はエイモンの濡れたポケットからハーブの袋を取り出した。ずぶ濡れだ。それでも彼はそれを握りしめ、エイモンを真っ直ぐに見つめた。
「これを燃やせ。中に入るんだ。あいつが姿を現した瞬間――俺がすぐそばにいてやる。……前回と同じだ」
エイモンはその袋を見つめた。同じ言葉。同じ状況。前回、モトがその言葉を口にした時、エイモンはグリレットを信じてスネークの追跡を任せ、何も理解しないままあいつを「無害」だと信じ切っていた。彼はモトの顔を見た――泥、切り傷だらけの掌、そして一切の迷いがない絶対的な確信。彼はゆっくりと頷いた。
エイモンの手はあまりにも激しく震えていたため、モトがライターを支えてやった。火が点いた。煙が立ち上り、世界の境界が和らいでいく。エイモンは目を閉じ、意識の深淵へと潜っていった。
地上・広場
広場では、戦闘が絶望的なリズムを刻んでいた。
スネークは、奪ったエネルギーの最後の残滓を振り絞り、狼の怪物の頭を泥の中に叩きつけた。その衝撃で周囲の地面に亀裂が走る。カズチ(Kazuchi)は動かなくなった。
ナジョが肩から血を流し、フラフラになりながら広場に戻ってきた。「……死んだか?」
スネークの緑の輝きは、今や消え入りそうなほど小さくなっていた。「……ああ、多分な」
雲が流れた。待ち構えていたかのように、月光が広場に降り注いだ。
その光が、倒れたカズチの体を照らす。
痙攣が、ゆっくりと始まった――脚、前足、そして背骨。骨格が内側から再構築されるたびに、嫌な音を立てて体が反り返る。硬い皮膚が裂け、濃密な黒と真紅の毛がそこを突き破って溢れ出した。目がカッと見開かれる――それは眩いほどに野性的で、飢えを超越した何かが宿っていた。
カズチが立ち上がった。さらに巨大に。その足元の地面が粉砕される。
スネークはそれを見て絶句した。「……冗談だろ」
怪物が、突進してきた。
三人は散り散りになった。タナカは戦闘の端で動き回り、パターンの解析を続けた――速度、足取り、重量配分、頭部の動き。ナジョの岩の拳が怪物の脇腹を打つが、強化された皮膚の前では投げられたガラス細工のように粉々に砕け散った。スネークの蛇たちがエネルギーを吸おうと手を伸ばすが、噛み付く前に叩き落とされた。
「スネーク!」耳の近くで、シクストゥスがパニック状態で囁いた。「やめろ。お前の心臓がもう――」
スネークは血を吐き捨てた。「ここで俺が止まってブレイクが死んだら」彼は言った。「今までのすべては何だったんだよ!」
彼のドレッドヘアが緑色に燃え上がった。全身のタトゥーが白熱する。
タナカの目が、崖の淵に釘付けになった。角度。重量。距離。
「ナジョ!」咆哮をかき消すような彼女の叫び。「柱よ――水平に――今すぐに!!」
ナジョは問い返さなかった。彼は両拳を大地に叩き込み、そこから密度の高い石の円柱を、大砲のように水平に引き摺り出した。
カズチが跳躍する。
「押せ!!」
ナジョが岩に体重を乗せ、スネークとタナカが背後からそれを押し込む。その即席の衝角がカズチの胸に激突した。怪物は一歩、また一歩と後退させられながら、その爪で大地に深い溝を刻み、森を震わせる咆哮を上げた。崖の淵に達する。絶壁が崩落した。音という概念よりも深いところから響く轟音と共に、カズチは崖下へと消えていった。石の柱も共に落下し、峡谷がその両者を受け入れた。
長い時間をかけて何かが沈殿していくような、深い静寂が広場を覆った。
スネークの緑の光が、ふっと消えた。
彼は地面に崩れ落ち、体が一度だけ激しく痙攣すると、その後は恐ろしいほどに動かなくなった。
「スネーク!」タナカはすでに彼の傍らに膝をついていた。彼女は指を彼の首筋に当てる。……脈がない。胸も動いていない。アドレナリンが、ついにその代償を徴収したのだ。
彼女は唇を噛み締め、小屋の方を見た。ガソリンの、濃厚で不吉な匂い。「こいつをそこから引き離して」彼女はすでに動き出しながら言った。「中にあるものを全部使うわ」
彼女は暗闇の中で、手探りだけで迅速に作業を進めた。古い発電機のチューブ、銅線、わずかに残量の残ったバッテリー、錆びついた壊れた工具。数分で戻ってくると、彼女の手は止まることなく、無骨だが確実な機能を持つ『何か』を組み立てた。彼女はその電線を彼の胸に取り付けた。
――バチッ!!
彼の体が跳ね上がり、再び地面に落ちた。
彼女はモニター代わりに、拾い集めた小さな電球を回路に繋いで見守った。……反応なし。だが――微かに。もう一度。弱く、不規則ではあるが、確かに反応があった。
彼女は、長く息を吐き出した。
「……死なないで」彼女は静かに言った。「お願い、そばにいて」
エイモンの内面世界
エイモンの精神の中、その暗闇は彼にとって馴染み深いものだった。
白く静まり返った『平原』が広がり、その中央には拘束された人物が――光り輝き、鎖に繋がれ、椅子の上で激しくもがいていた。グリレットは慣れた手つきでその椅子に寄りかかり、具現化したエイモンを見つめていた。
「よお、相棒」彼は微笑んで言った。「留守にしてて悪かったな。こいつがちょっと手に負えなくてさ」彼は椅子に座る影を指差した。鎖がジャラリと鳴る。「蓋をしておくのも楽じゃないんだぜ」
エイモンは彼を見た。裏切りの感触はすでに自分の中で沈殿し、その下からは自分でも予想していなかったほど熱く、鋭い怒りが込み上げていた。
「……お前が、俺を突き飛ばしたのか?」
「何だって?」グリレットは小首を傾げた。「よせよ。それはモトの受け売りだろ? あいつは初日から、お前を俺から引き離そうとしてたじゃないか。本当にお前、あんな奴の言葉を俺よりも信じるのか?」
聞き慣れた声。聞き慣れた確信。エイモンは、それが自分に作用するのを感じていた。いつものように――より楽な説明へと引き寄せようとする、あの微かな重力。
「でも、俺は見た気が――」
「そうか。お前も俺を憎むんだな」笑みが歪み、ギザギザとした形へと変わる。「傑作だよ、エイモン。俺は『お前から生まれた』んだぜ。お前に何もなかった時――親も一族もいなくて、ゼン(Zen)の冷たい部屋に一人きりだった時、お前が俺を作ったんだ。俺はただお前の隣に座るためだけに、思考と現実の境界を越えてやった。それなのに、今更あんな連中のために俺を切り捨てるってのか?」
「切り捨てるなんて――」
「『俺たちの仲間』、か」グリレットの声から、軽蔑が滴り落ちる。「自分で言ってて恥ずかしくないのかよ」
現実世界。岩だらけの岸辺で、エイモンの静止した顔を涙が伝った。モトは彼の肩をさらにきつく掴んだ。何も聞こえない。中に入ることもできない。ただ、友人の顔に刻まれる悲しみを見守り、自分の胸の中の怒りを「力」に変えることしかできなかった。
(来い、エイモン)彼は激しく念じた。(あいつの思い通りにさせるな!)
内面世界。グリレットが一歩踏み出した。「モトが本当は俺のことをどう思ってるか、お前だって分かってるだろ。あの目を見たはずだ。あいつは口では綺麗なことを並べるが、その心の底じゃ、俺を絶対に受け入れやしない。……それはつまり、あいつはお前のことを、本当の意味では決して受け入れないってことなんだよ」
「あいつらは……お前のことを、俺ほどよく知らないだけなんだ」エイモンの言葉が、自分でも驚くほど空虚に響いた。
「ああ、もういいよ」グリレットの顔が、醜い本性を露わにした。「お前だって、あいつらのことなんて本当はどうでもいいんだろ? ただ誰かに見てほしいだけだ。……警告したはずだぞ。お前の『怒り』はすべてを破壊する。それなのに、あいつらの『偽物の愛』を追いかけた。……お前が『弱い』からだ」
「……偽物なんかじゃない!!」
その叫びは、二人を同時に驚かせた。
『平原』が、激しく振動した。
グリレットは動きを止めた。やがて彼はゆっくりと笑い、指の関節を鳴らした。「……へえ。ようやくか。いいぜ、見せてみろよ」
彼は、飛びかかった。
エイモンは戦った――教わった技術、モトが数週間かけてその体に叩き込んだ足さばき。しかし、ここはグリレットがエイモンよりも何年も長く学び、支配してきた領域だった。そんなものは通用しない。グリレットは、待機していたかのような勢いで彼を打ち据えた。一撃一撃に、これまで抑圧され、転換され、兵器化されてきたあらゆる感情の重みが乗っていた。エイモンは激しく叩きつけられ、這いずり、冷たい椅子の金属の脚にぶつかった。
グリレットは彼を見下ろした。今やその体は巨大化し、その影が平原を埋め尽くしていた。
「ゼンでも友達を作れなかったよな」と彼は言った。「自分の親ですら、予言だ何だに忙しくてお前のことなんてまともに見ちゃいなかった。だからお前は俺を作ったんだ。……『ギルバート(Gilbert)』の姿を模して。誰からも愛される、お前が絶対になれないはずの『黄金の子供』の姿をな」
彼はエイモンを仰向けに蹴り飛ばした。
「自分自身の心の中でさえ――俺はお前より優れているんだよ」
――パキィィィィィィン!!
拘束されていた影を繋ぎ止めていた鎖が、一本、鮮やかに弾け飛んだ。その影は残された鎖に抗ってもがき、仮面の奥から獣のような呻き声が漏れ出した。仮面自体の継ぎ目が、激しく震え始める。
エイモンは床に倒れたまま、グリレットを見上げた。――友人であり、保護者であり、唯一の不変の存在だと思っていた『それ』を。そして、その背後にいる仮面の影を見た。
グリレットが「すべてを破壊する」と言い続けてきた、あの影を。
エイモンは、手を伸ばした。その手は、ファスナー(ジッパー)を捉えた。
グリレットの余裕が崩れ去った。「……やめろ。すべてを壊す気か? お前は仲間を全員失うことになるぞ。そんなことをすれば――」
「……ここにいる唯一の『怪物』は」エイモンは静かに言った。「お前だよ、グリレット」
彼は、その手を引いた。
――ビリリリリリリリリィィッ!!




