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第24章:燃える血 (Chapter 24: Burning Blood)

太陽が完全に昇りきる前に、モトはアリーナに到着していた。


敷地内は、彼がこれまでに見たことがないほど静まり返っていた。生徒の姿もなく、ざわめきもない。ただ、空っぽの観客席に『特別な儀式』の重みだけが沈み込んでいる。他の候補者たちはすでに到着しており、待機所のあちこちに散らばって、それぞれが自分自身の思考の中に深く入り込んでいた。


すべてのゲートには兵士が立っている。王命により、このイベントは完全な無観客クローズドとされていた。マナセ王の到着が間近に迫っている今、ダグラス王は一切の不測の事態を許さなかったのだ。


はるか上方、王室専用のテラスでは、ダグラスがアリトリを傍らに控えさせ、静かに、そして鋭い眼差しで眼下を見下ろしていた。


メインゲートに到着したシェウとスカイは、そこで一人の老人が護衛と口論しているのを見つけた。針金のように細い体つきに、艶やかな赤毛。その声は、音量よりもずっと強い感情を帯びていた。


「王から無観客試合と言い渡されている」兵士が繰り返した。「命令は絶対だ」


スカイが前へ進み出る。護衛たちは即座に姿勢を正した。「どうしたんだ?」


老人の濁った瞳がスカイを捉えた。「今日、私の孫が戦うんです」言葉の裏に、微かな震えがあった。「あの子は小さい頃から、王の側近として立つことを夢見ていました。あの子が夢へ一歩近づく姿を、どうしてもこの目で見たかったのです」


スカイの表情が和らいだ。彼は護衛に向き直る。「通してやってくれ」


老人の顔が感謝の笑みにくしゃりと崩れ、その瞳の奥で、ひどく古い『何か』が一瞬だけ動いた。

シェウは老人の腕を取り、観客席へと一緒に歩き出した。その道すがら、彼女の視線が彼の手首にあるブレスレットに落ちた。金の鎖。その一つ一つに『7』という数字が刻まれている。

その意匠の何かが、彼女の思考の端に引っかかった。


「それ、どこで手に入れたの?」


「兄からのもらい物でしてな」彼はそう言うと、素早くもう片方の手でそれを隠した。

彼は、上段の影に隠れるような一番上の席に一人で座ると言い張った。シェウとスカイは、そこから数列下の席に腰を下ろした。


彼女はすぐにモトを見つけた。彼はムカイ、ハワ、アルバートの傍に立っていた。彼も同じタイミングで彼女に気づき、自分が緊張していることなど忘れてしまったかのような満面の笑みで、大きく手を振ってきた。彼女も小さく手を振り返す。

近くにいたアルバートがそのやり取りを面白がり、彼女に向かってウィンクを飛ばした。シェウはすぐに別の場所へ視線を逸らした。


アリーナの反対側では、『王のキングス・ハンド』が、まるで最初からそこに配置されていた彫像のように立ち並んでいた。五つの人影。その全員が、ダグラス王と同じ意匠の指輪をはめている。四角いオレンジ色の宝石が、朝の光を鈍く反射していた。


ジャンボ先生が演壇に立つ。


「ルールは単純だ。各生徒は『王の剣』の一人と対峙する。勝利の条件は二つ――相手に一割(10パーセント)以上の力を出させるか、あるいは二十分間生き残ることだ」彼が片手を高く挙げる。「ふさわしき者に、勝利を」


一瞬の静寂がアリーナに舞い降りた。


それを破ったのはアルバートだった。

「観客がいないと、なんだか調子狂うよな、ムカイ?」


ムカイは瞬き一つしなかった。「これは見世物ではない」


ダグラス王が片手を挙げた。彼の親指の指輪が閃く。

反対側のゲートから、土のマスターであるゼッドがリングへと跳躍した。彼の裸足が地面を叩きつけると、その重みでプラットフォーム全体に地鳴りのような震えが走った。彫刻された石のような筋肉。彼の親指にも、王と同じ指輪が光っている。

彼は観客席を見渡し、歓声を期待するいつもの癖が顔に出かけたが、すぐにそれを引っ込めた。


微かな笑い声が聞こえた。アルバートだ。


ゼッドがゆっくりと振り返る。「貴様に、王の力となる覚悟があると思うか?」


アルバートが爪先で軽く一度、ステップを踏む。「見てろよ」


彼が拳を捻り、足を強く踏み鳴らす。アリーナの床が彼の意志に従って平らに圧縮され、高密度の鋭利な岩盤へと硬化した。彼はそのまま回転し、極限まで圧縮された風の球をゼッドの顔面へ向けて一直線に撃ち出した。

轟音と共に、目も眩むような土埃の雲が爆発する。アルバートはさらに地面から巨大な石板を引き剥がし、その靄の中へ力任せに投げ込んだ。


それは、決して着弾しなかった。


ズドォォォンッ!!


土埃を真っ二つに引き裂き、ゼッドの腕が突き出された。たった一発の、無慈悲なストレート。飛来する巨大な岩盤を空中で木端微塵に粉砕し、破片がフィールド中に散弾のように降り注ぐ。

アルバートが防御姿勢を取るより早く、ゼッドはすでに動いていた。彼が踏み込むたびに、プラットフォームの床がひび割れる。

アルバートがとっさに石の障壁を展開する。ゼッドは深く沈み込み、低い姿勢から拳を打ち込んだ。


衝撃波が地面を波打って突き進む。

石の障壁が根元から砕け散り、爆発した。アルバートの体が宙に跳ね上げられる。彼自身の風が辛うじて最悪の着地を防いだが、それでも激しくプラットフォームに叩きつけられ、土埃を吸い込んで激しく咳き込んだ。


ゼッドは動かなかった。勝負は終わった。彼が自身の力のほんの数パーセント以上を使ったという兆候は、どこにもなかった。


続いて、風のマスターがアリーナに入場した。急ぐ必要など一度もない人間のゆったりとした歩み。風など全く吹いていないにもかかわらず、彼のローブがふわりと揺らめいている。


ハワが所定の位置へ歩み寄り、敬意を込めて一度だけ頷いた。


ジャンボ先生の腕が振り下ろされる。

ハワが即座に動いた――四肢に風を螺旋状に纏わせ、猛スピードで間合いを詰める。跳躍と同時に、水の弧を鋭い刃へと切り裂いて放つ。

マスターは空中で身を捻り、正確な突風でその軌道を逸らした。気圧の交錯が二人を同時に横へ滑らせる。ハワは止まらない。風を纏わせた水の回転ドリルで追撃し、マスターに防御を強要する。

激しい攻防が何度も繰り返される。アルバートが衝動的だったのに対し、ハワの動きは極めて正確だった。完全に制御された、力のメトロノーム。


残り時間六十秒。マスターが目を細めた。


細い螺旋が彼の腕を駆け上がる。

マスターの姿が掻き消えた――そして、ハワの頭上に出現する。凄まじい風の爆撃が叩きつけられ、アリーナの床が蜘蛛の巣状に割れた。

ハワは両掌から放出する水圧でその衝撃を吸収し、踏みとどまり、マスターが背後に音もなく着地した時も、まだ両足で立っていた。


「一割(10パーセント)」マスターが静かに告げた。


直後、見えない打撃がハワを両膝から崩れ落ちさせた。彼は立ち上がれなかった。


「そこまで」ジャンボの声が響く。


ハワは体を支え、マスターに一度頷き、プラットフォームを降りた。彼は勝てなかった。だが、彼が確かに『何か』を証明したことを、アリーナの全員が理解していた。


ムカイが前へ出る。


モトが彼を見た――静かで、揺るぎない視線。短いやり取りが、言葉もなく二人の間を交差する。


ムカイは振り返ることなく、プラットフォームへと足を踏み入れた。


反対側から、水のマスターが液体の柱に乗って上昇し、優雅な身のこなしでプラットフォームに降り立つ。


「第三試合」ジャンボが宣言する。「ムカイ対、水のマスター、ムサカ」


開始の鐘が鳴った。アリーナの気圧が変化した――より重く、まるで生き物のように。


ムサカは、この戦いを心底楽しみにしているような鋭い光を瞳に宿してプラットフォームに立った。

「甥っ子だからといって、手加減は期待するなよ」


「私を苛立たせようとしているのですか?」ムカイが返す。


「効果はあったかな?」


ムカイが手を掲げると、四発の水の弾丸ウォーター・バレットが連続して撃ち出され、ムサカの胸に直撃した。彼の肉体は空中で液状に崩れ、そして無傷のまま再構成された。


「私にはどんな攻撃も通じない」ムサカは楽しげに言った。「知っているだろう」


ムカイが水の槍を投擲する。それもまた、膨張するムサカの体の中に吸い込まれ、消え去った。

観客席からスカイが呟く。「彼は完全に液状化できるんだ。水を吸収すればするほど、より大きく、より強くなる」


ムカイは空中に三つの水の円柱を形成し、そこから間断なく激しい水流を放射し続けた。ムサカは立ち尽くしたままそれらを吸収していく。彼の体は密度を増し、巨大に膨れ上がっていく。何発かの弾丸は逸れて地面に突き刺さったが、大半は彼に丸呑みされた。

ムサカの眉間の皺が深くなる。ムカイの顔は冷静だった。この攻撃の裏に、必ず何か計画がある。ムサカはそう確信していた。


そして、その意味に気づいた。


彼が後ろへ跳ぶ。水の円柱がそれを追尾し、さらに出力を上げる。ムサカは自身の質量を分散させ、吸収率を下げようとした。「私をキャパオーバーさせる気か」と彼は言った。「強制的に一割の限界を突破させて、反則勝ちを――」


言い終わるより早く、ムカイが彼の目の前に出現し、その顔面を正確に殴りつけた。


ムサカの液状の頭蓋が弾け飛び、再び形成される。方向感覚が狂う。


「悪くない」彼は頭を振りながら認めた。「だが、まだ足りない」


ムカイは攻撃の手を緩めなかった。打撃に次ぐ打撃。その一つ一つが、ムサカの体が安定する前にその形状を崩していく。力で圧倒しているわけではない。彼の能力が必要とする『確固たる足場』を奪い続けているのだ。絶え間なく、執拗に、そして極めて正確に。


ムサカが一歩下がった。「残り二分だ。終わらせよう」


彼が膨張する――その体は大きくうねり、明らかに力の『九パーセント』に達していた。

そして、動いた。

滑らかで、摩擦が一切ない。まるで空気そのものが彼の一部であるかのように。ムカイの打撃は着弾する前にすべて受け流される。三発の素早い拳がムカイの肋骨を捉え、彼がよろめく。

残像。ムサカはすでに背後に回り込み、ムカイの脊椎に重い一撃を打ち込んだ。ムカイが『毒水沼ノックス・プール』を放つが、ムサカはその周囲を捻るように躱し、防御の隙間を縫うように流れるような拳を叩き込む。


ムカイがプラットフォームに激しく叩きつけられた。彼が息を吐く。顎に明確な苦痛が走っていた。


「遊びは終わりだ」ムサカが告げる。


「丁度いい」ムカイが身を起こす。その顔に、凄絶な笑みが浮かんでいた。「私も同じことを思っていたところです」


彼は『オーウェン』を形成した――これまでで最も巨大な水の槍。煌めき、極限まで圧縮されている。それを投擲する。


「言ったはずだぞ」ムサカの顔に冷笑が戻る。「それは通じな――」


槍はムサカの体を真っ直ぐにすり抜け、彼の背後で消え去った。ムサカの冷笑が深くなる。彼は間合いを詰め、拳を振りかぶった――。


ムカイが、両手を強く握りしめた。


ピタリ、と。

ムサカの拳が、空中で完全に停止した。


ムサカは自分の拳を見た。そこに流れる水を見た。そして、それが『もはや自分のものではない』という事実を悟った。


「……これは、なんだ」彼は、ひどく静かに尋ねた。


「ある暗殺者から学んだことです」ムカイの声は、先ほどまでとは違う響きを持っていた。より揺るぎなく、自らの力で何かを勝ち取った者の声。「あなたの体は今、私が作り出した水で構成されている。一撃を加えるごとに、少しずつ入れ替えておいたのです。つまり――今のあなたは、私の支配下にある」


ムサカは彼をまじまじと見つめた。「私の生来の水を、お前の水とすり替えたというのか。あの無数の打撃の間に……」彼はゆっくりと息を吐き出した。「さすがは、私の姉の息子だ」その声に、本物の称賛が混じる。「もちろん、私が手加減していなければ通用しない芸当だがな」


「分かっています」ムカイは言った。「私には、まだ長い道のりが待っている」


終了の鐘が鳴った。


「ムカイ――勝者!」


ムサカは元の大きさに縮み、心底嬉しそうな笑顔を浮かべた。「お前を鍛えるのが楽しみになったぞ、甥っ子よ」


「その呼び方はやめろ。私が自力で勝ち取ったのではないように聞こえる」


ムサカは声を出して笑った。「自惚れるな。お前の実力は、見るべき目を持った者全員が確かに見たさ」


二人は並んでプラットフォームを降りた。モトが待っていた。その顔は、誇らしさに近い感情で明るく輝いている。


ムサカが彼を一瞥した。「こいつがグウェンとやる坊主か?」


「ああ」とムカイ。


ムサカは片眉を上げた。「おやおや。同情するよ、坊主」


モトは一度地面に目を落とし、そして再び顔を上げた。その瞳は揺るぎなく、静かに燃えていた。「俺なら、やれる」


フィールドの反対側で、観客席のテラスが軋んだ。

音を立てて壁の一部が外側へ弾け飛び、そこからグウェンが姿を現した。すでに両肩には炎が這い上がり、三歩も歩かないうちから凄まじい熱気が周囲の空気を歪ませている。彼はゆっくりとプラットフォームに歩み寄った――最初から一割(10パーセント)の力を解放し、それを隠そうともしていなかった。


ムカイがモトの肩に手を置いた。


モトが頷く。彼は振り返り、観客席のシェウを見た。彼女の顔には、必死に抑え込んだ心配の仮面が張り付いていた。彼は彼女に向けて一度こくりと頷き、フィールドへと歩み出た。


グウェンの目が、フィールド越しに彼を捉えた。これから排除すべき障害物を見るような目だった。


頭上から、ダグラスの声が響く。「始め(ハジメ)」


モトが突進した。


グウェンの炎が爆発的に膨れ上がり、熱波がうねりとなって彼から放射された。普通の人間なら足を止めるほどの警告の熱。だが、モトは止まらない。ジャブを放ちながら飛び込む――グウェンが大振りで応戦し、モトは間一髪でそれを躱す。回避しただけで、至近距離の熱が前腕の皮膚を焦がした。


グウェンは、極限まで圧縮されたテニスボール大の炎の球体を二つ形成した。その表情には残酷な正確さがある。

第一の球が、モトの顔面めがけて金切り声を上げて飛来する――モトは身をかがめた。第二の球が肩を掠める。二つの球はそのまま壁に直撃し、跳ね返ってきた。グウェンはそれを、炎のラケットでさらに加速させて打ち返す。

モトは煙を吐き出し、煙幕を張ろうとした――だが、軌道を逸れた一つの火球が瞬時にそれに引火し、モトの周囲で爆発を起こして彼の方向感覚を奪った。直後、壁から跳ね返ってきた二発目の球が彼の額に直撃した。彼は激しく地面に叩きつけられる。


「冗談だろう」グウェンが歩み寄りながら吐き捨てる。「準備運動にもならん。貴様、なぜここにいる?」


モトは転がり、飛び起き、距離を取った。グウェンの手の中には、新たに三つの火球が握られている。「取るに足らん力だ」とグウェン。「だが、貴様を消し炭にするには十分すぎる」

彼が三発同時に放つ。モトはその隙間を縫うように動いた――ムカイの回避訓練。水柱から落ちる水滴。足が射線を読み取る。彼は距離を取ることを完全に放棄し、真っ向から突撃した。

グウェンがジャブを放つ。跳ね返った火球が背後から迫る。モトが身を沈めると、火球はグウェンの顔面に直撃した。


――無傷。


モトが顔を上げる。すでにグウェンの拳が迫っていた。触れただけで勝負が終わる、灼熱の残像。

観客席で、スカイが思わず口元を手で覆った。シェウが手すりを強く握りしめる。


モトは自らの片方の靴を空中に蹴り上げ、両腕を交差させた。


靴が接触と同時に気化する。その一瞬の防御が、威力をギリギリで削いだ。モトはその腕を掴んで強引に身を引き寄せ、両足の踵落とし(ダブル・ヒールキック)をグウェンの顎へ真っ直ぐに叩き込んだ。


グウェンが、よろめいた。


「一撃入れたぞ!?」観客席からゼッドの声。心底驚愕した響きだった。


グウェンが足を踏みとどまる。彼の表情が変わった。そこにはもう軽蔑はなく、代わりにひどく冷酷な殺意が宿っていた。彼はモトを掴み上げ、プラットフォームに叩きつけ、そのまま蹴り下ろし始めた。


「この、薄汚いガキが」一撃ごとに、威力が跳ね上がっていく。「これが遊びだとでも思っているのか? 貴様らは皆、私の時間を無駄にするためにここへ来たのか? 貴様らのような底辺に、何の価値もないと分からないのか!?」


その言葉は、肉体的な痛みのさらに奥底に突き刺さった。モトは蹴られるたびに体を痙攣させたが、彼の表情はまだ死んでいなかった――思考が高速で巡り、他の場所、他の声とリンクしていく。

ナウィック。この学校に来たばかりの頃のムカイ。自分がただそこに存在しているだけで、何の価値もないと突きつけられる、あの特有の感覚。


そして。アンバー。


彼は、グウェンの足を掴んだ。


黒い煙が彼から噴出した――いつもの気だるげな灰色の煙ではない。路地裏でのあの濃密な雲ですらない。異質。より重く。特定の沈黙が空気を張り詰めさせるような、間違った、不気味な気圧の変化。それは皮膚から溢れ出し、漂うのではなく重くのしかかり、境界線が薄まることもなかった。


グウェンがその中に炎のビー玉を投げ込む。爆発がモトの腕を焼き焦がす。それでも、彼のグリップは決して緩まなかった。


観客席で、ムカイが身を乗り出した。その顔に、明確な『理解』が走る。


シェウの両手が手すりを掴んだまま白くなる。彼女はこれを見るのは二度目だった。そしてその二回とも、事後にモトはこれについて話すことを頑なに拒んでいた。


「父上、もうやめてください!」スカイの声が裏返る。


グウェンは蹴り続けた。煙はさらに密度を増し、絶対的な漆黒へと変わり、一切の光を通さなくなった。モトの視界がひび割れる。世界が激痛の霞に溶け、そしてその痛みの奥に――一つの『扉』が現れた。

その扉の向こうで悲鳴が上がる。床に広がる血。はるか遠くから、彼の名を呼ぶ兄の声。


グウェンは、自分の踵を掴む手の握力が、本来あり得ないほどの異常な強さまで引き上げられているのを感じ取った。


モトの腕から、暗赤色のマルーン・フレイムが噴き出した

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