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第23章:試練の幕開け (The Trials Begin)

太陽が完全に昇りきる前に、モトはアリーナに到着していた。


敷地内は、彼がこれまでに見たことがないほど静まり返っていた。生徒の姿もなく、ざわめきもない。ただ、空っぽの観客席に『特別な儀式』の重みだけが沈み込んでいる。他の候補者たちはすでに到着しており、待機所のあちこちに散らばって、それぞれが自分自身の思考の中に深く入り込んでいた。


すべてのゲートには兵士が立っている。王命により、このイベントは完全な無観客クローズドとされていた。マナセ王(King Manasseh)の到着が間近に迫っている今、ダグラス王は一切の不測の事態を許さなかったのだ。


はるか上方、王室専用のテラスでは、ダグラスがアリトリを傍らに控えさせ、静かに、そして鋭い眼差しで眼下を見下ろしていた。


メインゲートに到着したシェウとスカイは、そこで一人の老人が護衛と口論しているのを見つけた。針金のように細い体つきに、艶やかな赤毛。その声は、音量よりもずっと強い『感情』を帯びていた。


「王から無観客試合と言い渡されている」兵士が繰り返した。「命令は絶対だ」


スカイが前へ進み出る。護衛たちは即座に姿勢を正した。「どうしたんだ?」


老人の濁った瞳がスカイを捉えた。「今日、私の孫が戦うんです」言葉の裏に、微かな震えがあった。「あの子は小さい頃から、王の側近として立つことを夢見ていました。あの子が夢へ一歩近づく姿を、どうしてもこの目で見たかったのです」


スカイの表情が和らいだ。彼は護衛に向き直る。「通してやってくれ」


老人の顔が感謝の笑みにくしゃりと崩れ、その瞳の奥で、ひどく古い『何か』が一瞬だけ動いた。

シェウは老人の腕を取り、観客席へと一緒に歩き出した。その道すがら、彼女の視線が彼の手首にあるブレスレットに落ちた。金の鎖。その一つ一つに『7』という数字が刻まれている。

その意匠の何かが、彼女の思考の端に引っかかった。


「それ、どこで手に入れたの?」


「兄からのもらい物でしてな」彼はそう言うと、素早くもう片方の手でそれを隠した。

彼は、上段の影に隠れるような一番上の席に一人で座ると言い張った。シェウとスカイは、そこから数列下の席に腰を下ろした。


彼女はすぐにモトを見つけた。彼はムカイ、ハワ(Hawa)、アルバート(Albert)の傍に立っていた。彼も同じタイミングで彼女に気づき、自分が緊張していることなど忘れてしまったかのような満面の笑みで、大きく手を振ってきた。彼女も小さく手を振り返す。

近くにいたアルバートがそのやり取りを面白がり、彼女に向かってウィンクを飛ばした。シェウはすぐに別の場所へ視線を逸らした。


アリーナの反対側では、『王のキングス・ハンド』が、まるで最初からそこに配置されていた彫像のように立ち並んでいた。五つの人影。その全員が、ダグラス王と同じ意匠の指輪をはめている。四角いオレンジ色の宝石が、朝の光を鈍く反射していた。


ジャンボ先生が演壇に立つ。


「ルールは単純だ。各生徒は『王の剣』の一人と対峙する。勝利の条件は二つ――相手に一割(10パーセント)以上の力を出させるか、あるいは二十分間生き残ることだ」彼が片手を高く挙げる。「ふさわしき者に、勝利を」


一瞬の静寂がアリーナに舞い降りた。


それを破ったのはアルバートだった。

「観客がいないと、なんだか調子狂うよな、ムカイ?」


ムカイは瞬き一つしなかった。「これは見世物ではない」


ダグラス王が片手を挙げた。彼の親指の指輪が閃く。

反対側のゲートから、土のマスターであるゼッド(Zed)がリングへと跳躍した。彼の裸足が地面を叩きつけると、その重みでプラットフォーム全体に地鳴りのような震えが走った。彫刻された石のような筋肉。彼の親指にも、王と同じ指輪が光っている。

彼は観客席を見渡し、歓声を期待するいつもの癖が顔に出かけたが、すぐにそれを引っ込めた。


微かな笑い声が聞こえた。アルバートだ。


ゼッドがゆっくりと振り返る。「貴様に、王の力となる覚悟があると思うか?」


アルバートが爪先で軽く一度、ステップを踏む。「見てろよ」


彼が拳を捻り、足を強く踏み鳴らす。アリーナの床が彼の意志に従って平らに圧縮され、高密度の鋭利な岩盤へと硬化した。彼はそのまま回転し、極限まで圧縮された風のウインド・ボールをゼッドの顔面へ向けて一直線に撃ち出した。

轟音と共に、目も眩むような土埃の雲が爆発する。アルバートはさらに地面から巨大な石板を引き剥がし、その靄の中へ力任せに投げ込んだ。


それは、決して着弾しなかった。


ズドォォォンッ!!


土埃を真っ二つに引き裂き、ゼッドの腕が突き出された。たった一発の、無慈悲なストレート。飛来する巨大な岩盤を空中で木端微塵に粉砕し、破片がフィールド中に散弾のように降り注ぐ。

アルバートが防御姿勢を取るより早く、ゼッドはすでに動いていた。彼が踏み込むたびに、プラットフォームの床がひび割れる。

アルバートがとっさに石の障壁を展開する。ゼッドは深く沈み込み、低い姿勢から拳を打ち込んだ。


衝撃波が地面を波打って突き進む。

石の障壁が根元から砕け散り、爆発した。アルバートの体が宙に跳ね上げられる。彼自身の風が辛うじて最悪の着地を防いだが、それでも激しくプラットフォームに叩きつけられ、土埃を吸い込んで激しく咳き込んだ。


ゼッドは動かなかった。勝負は終わった。彼が自身の力のほんの数パーセント以上を使ったという兆候は、どこにもなかった。


続いて、風のマスターがアリーナに入場した。急ぐ必要など一度もない人間のゆったりとした歩み。風など全く吹いていないにもかかわらず、彼のローブがふわりと揺らめいている。


ハワが所定の位置へ歩み寄り、敬意を込めて一度だけ頷いた。


ジャンボ先生の腕が振り下ろされる。

ハワが即座に動いた――四肢に風を螺旋状に纏わせ、猛スピードで間合いを詰める。跳躍と同時に、水の弧を鋭い刃へと切り裂いて放つ。

マスターは空中で身を捻り、正確な突風でその軌道を逸らした。気圧の交錯が二人を同時に横へ滑らせる。ハワは止まらない。風を纏わせた水の回転ドリルで追撃し、マスターに防御を強要する。

激しい攻防が何度も繰り返される。アルバートが衝動的だったのに対し、ハワの動きは極めて正確だった。完全に制御された、力のメトロノーム。


残り時間六十秒。マスターが目を細めた。


細い螺旋が彼の腕を駆け上がる。

マスターの姿が掻き消えた――そして、ハワの頭上に出現する。凄まじい風の爆撃が叩きつけられ、アリーナの床が蜘蛛の巣状に割れた。

ハワは両掌から放出する水圧でその衝撃を吸収し、踏みとどまり、マスターが背後に音もなく着地した時も、まだ両足で立っていた。


「一割(10パーセント)」マスターが静かに告げた。


直後、見えない打撃がハワを両膝から崩れ落ちさせた。彼は立ち上がれなかった。


「そこまで」ジャンボの声が響く。


ハワは体を支え、マスターに一度頷き、プラットフォームを降りた。彼は勝てなかった。だが、彼が確かに『何か』を証明したことを、アリーナの全員が理解していた。


ムカイが前へ出る。


モトが彼を見た――静かで、揺るぎない視線。短いやり取りが、言葉もなく二人の間を交差する。


ムカイは振り返ることなく、プラットフォームへと足を踏み入れた。


反対側から、水のマスターが液体の柱に乗って上昇し、優雅な身のこなしでプラットフォームに降り立つ。


「第三試合」ジャンボが宣言する。「ムカイ対、水のマスター、ムサカ(Musaka)」


開始の鐘が鳴った。アリーナの気圧が変化した――より重く、まるで生き物のように。



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